<マレーシアよお前もか。中国を訪問したナジブ首相の対中姿勢は、中国から巨額の経済援助を得る一方、南シナ海問題の「棚上げ」で合意したフィリピンのドゥテルテ外交を見るようだ。ナジブの真意は>

 マレーシアのナジブ・ラザク首相が自らの不正資金疑惑や「マレーシアのイメルダ夫人」と呼ばれるロスマ・マンソール首相夫人の無駄使いで野党勢力から厳しい批判を浴びている中、10月31日から中国を訪問、大型経済協力で合意し、習近平国家主席と南シナ海問題で意見の一致をみるなど中国への急接近を図っている。11月29日に開催されるナジブ首相の与党党大会、さらに2018年に予定される総選挙に向け、外交実績を足場に自らの地歩をより確実にする狙いがあるものとみられている。

【参考記事】ナジブ首相の足をひっぱるマレーシアのイメルダ夫人

 一方の中国は足並みの揃わない東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国内に親中の楔(くさび)を打ち込むという外交戦略で、フィリピンに続く成果を上げた形となった。

 ナジブ首相は中国訪問でまず李克強首相とともに北京の人民大会堂でマレーシア・中国両国の官民企業による合意調印式に立ち会った。この調印式ではマレー半島横断鉄道建設計画への中国企業の参加、カリマンタン島サラワク州での鉄鋼プラント開発での協力、クアンタン工業団地でのシリコン太陽電池生産、サバ州石油ガスパイプライン建設計画など14項目で合意した。その総額は約1440億リンギット(約3兆6000億円)に上る。ナジブ首相は契約合意について「これまでの海外訪問時の契約額としては最高額であり、歴史的だ。これによって中国との関係はより密接な段階に入った」と高く評価した。

 さらに中国からマレーシア沿岸海域で哨戒任務に当たる高速哨戒艇4隻を購入することでも合意。マレーシアが軍事分野で大型装備品を中国から導入するのは初めてのケースで、軍事面でのさらなる関係密接化にも成功した。ヘリコプターの離発着甲板を備え、ミサイル搭載も可能という哨戒艇4隻のうち2隻は中国が建造して引き渡し、残り2隻はマレーシアが建造するが資金はすべて中国側の銀行が提供する。

南シナ海問題では中国の術中にはまる

 ナジブ首相は続いて11月3日には習主席との首脳会談に臨み、インフラ整備など経済協力で一層関係を強化することで一致するとともに、習主席の招きに応じて来年5月に開催予定の「シルクロード経済圏(一帯一路)会議」に出席する意向を示した。

 そしてマレーシアも一部の領有権を、中国は全域の領有権を主張している懸案の南シナ海問題についても会談で意見を交換した。

大塚智彦(PanAsiaNews)