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ダッソー・システムズ(ダッソー)は11月3日から4日まで中国・上海にて製造分野向けのプライベートイベント「Manufacturing In The Age of Experience」を開催した。同イベントでは、ドイツのインダストリー4.0や中国の「中国製造2025」など、世界各地進められている製造業の高度化をどのように実現していくのか、コンセプトからソリューションまでさまざまな提案が行われた。

○3Dエクスペリエンス・プラットフォームが本気出す

イベント初日の基調講演では、DELMIAブランドのCEOであるGuillaume Vendroux氏、QuintiqブランドのCEOであるRob Van Egmond氏、EXALEADブランドのCEOであるMorgan Zimmerman氏が架空の会社のエグゼクティブになりきり、3Dエクスペリエンス・プラットフォームを用いたデモンストレーションを披露した。

Vendroux氏らが示したのは「各地の生産拠点とそのデータを3Dエクスペリエンス・プラットフォーム上で統合したらこんなことができる」という世界。この世界では工場や市場データが同一プラットフォーム上に集約されているため、各地域の需要予測や供給体制の確認、工場のレイアウト検討などを同一環境でシームレスに行うことができる。また、工場の稼働状況をリアルタイムで把握しており、例えば、生産計画から遅れてしまっている工場で、どのような問題が発生しているか、その原因を生産設備の部品レベルまで分析する。それが特定の部品に起因するものであれば、代替部品を3Dエクスペリエンス・プラットフォーム上のマーケットプレイスで探し出し、3Dプリンティングサービスに発注することで、設備のダウンタイムを最小化する。さらに、同様の問題が他の拠点でも発生する可能性を検証し、それがいつ起きるのかまでシミュレーションすることができる。さまざまなデータを集約することで現実に則した「バーチャルの世界」を作り出し、それを分析することで意思決定の迅速化につなげているわけだ。

市場状況の把握、工場(および生産設備)のリアルタイム監視、問題の分析、対策の立案・検証、サプライヤーとの連携まで1つのプラットフォームでカバーするシステムの実現が容易いものではないことは想像に難くないが、同デモンストレーションを構成したダッソーの生産工程ソリューション「DELMIA」は鉄道車両を生産するアスルトム・トランスポールが工場のレイアウト検討に使用しているほか、サプライチェーン最適化ソリューション「Quintiq」はDHLやダノンをはじめとする大企業に採用されるなど、テクノロジーはすでに揃っている。製造の品質・スピードに対する市場の要求が高まり続ける中、グローバルな意思決定を加速するソリューションのかたちとしてかなり具体的なデモンストレーションだったといえるだろう。

○フロントローディングの重要性

初日の全体講演ではダッソーの顧客による事例紹介も行われた。

韓国の大手建設機械メーカー・斗山インフラコアのTaehwan Kim氏によれば、同社は製造を開始した後に設計変更が発生していたため、デリバリーが遅れ、生産・調達コストが高くなるという慢性的な問題を抱えていた。その原因の1つとして考えられていたのがエンジニアリングシステムだった。「当時は2種類のCADと5種類のPDMがあった。データの連携、部門間のコラボレーションは発生せず、データの紛失や破損が起きてデジタルコンテニュイティが失われてしまっていた」(Kim氏)。

Kim氏らは、この状況を改善するために新チームを発足させ、製品開発の初期に検証を行い、遅い段階での設計変更を減らすためのプロジェクトを進め、バラバラだったエンジニアリングシステムを3Dエクスペリエンス・プラットフォームに統合/統一。検証プロセスのフロントローディングを実現したことにより、製造開始後の変更を47%削減することに成功した。

検証プロセスを開発の早期に行うことの重要性について同氏は「70〜80%のコストは設計プロセスに費やされている。しかし、製品に対する知見は製品ライフサイクルが進むに連れて蓄積されていく。このギャップを埋めるためにデジタルエンジニアリングシステムとプロセスの変革が必要となる」と説明した。

Kim氏は今後について、将来的な製造の自律化を見据え、デジタルエンジニアリングシステムの範囲をさらに広げていくとする。「工場で何が起きているのかを把握できるようにしたい。(工場で)何が発生するのかを検証する必要がある。現実の世界で起きている問題を"バーチャルの世界"ですぐに検証できるようにする」(Kim氏)

(神山翔)