「べっぴんさん」30話。難しい相手を説得する5つの方法を生瀬勝久に学ぶ

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第5週「お父さまの背中」第30回 11月5日(土)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出: 新田真三


30回はこんな話


「負けっぱなしはわしの性分に合わんのや」
五十八(生瀬勝久)が闇市元締根本(団時朗)に戦いを挑む。「お父さまの背中」のサブタイトルにふわしい活躍を見せた。

負けない話し方


根本に言い負かされてしまった娘ゆり(蓮佛美沙子)に代わり、父・五十八が話をつけに行く。
お父さまの背中を見ながら、人を説得する方法を学習してみよう。

その1:まず、強気で行く。足を踏ん張って立つ。声は大きく言葉ははっきり。大切な単語はとくにしっかり発声すること。

「そちらさんがやってらっしゃることはニッポンの未来のためにはならんちゅうことはわかってはりますよね」

その2:「未来ってなんや?」「何かてなんや」と聞き返されても怯んではいけない。
「それでも何かを信じて生きなあかん」「それは自分で作るんです」とちゃんと意見を言う。
 それにはそもそも信念をもっていないといけない。それを元に大演説をぶちかます。
「自分ひとりやったら無理です。そやから言うて人から奪うのは違う」
「まず手と手を取り合うことが一番大事なことや」←たまに身振りも加えること。

その3:声のトーンに緩急を。一本調子だと飽きられてしまう。
もちろん内容に沿うことが大事。この場合、「女が堂々と(買い物に)来れるような健全な発展」と言うときの声が少し柔らかめだった。

その4:たくさんの人が見ている場なので、個人的利益の話ではなく、みんなのためになる話にする。 

「(前略)1年後、5年後もわしらは生きとる。10年後20年後はいまの子供らが。30年後40年後は孫の世代が生きとる。そんな子らが、そんな子らが生きる未来をつくるのは、今を生きるわしらなんや」

その5: 敵に花を持たす。
「ここにいる自分を仮の自分と思って生きていてもなんも変わらへん。
あなたが、ここのリーダーです」

たくさんの人の前で相手を負かしたら恨まれる。相手にやる気をもたせ、味方につけてしまう逆転技だ。
さすが、信用第一(29回で信用の話をしている)の五十八である。
負けず嫌いなのも、長男に仕事を譲らざるを得なくて実家を飛び出しひとりで会社を大きくした人だけはある。
坂東五十八、キャラがブレてない。

【端切れのパッチワーク


一時期、戦争で何もかも失って娘たちを放ったらかしにして実家に逃げていたけれど時が立ち復活したらしいお父さんのことを喜ぶすみれ(芳根京子)は、端切れを使ってパッチワークにいそしむ。
いろんな柄の端切れが、戦後の闇市で生きてるたくさんの人たちが手と手を合わせて・・・という五十八の願いと重なるようだ。

30回で素敵と思ったのは、闇市のたくさんのエキストラ。カメラがグーッと上がって後方の人々を映すとき、
ほぼ全員の顔がちゃんと見えるように並ばせていた。記念写真のようでリアルじゃないと言えばそうだけど、そこには、闇市に生きるひとりひとりが大事なのだ、という意思が見える。

闇市は「梅ちゃん先生」「ごちそうさん」「とと姉ちゃん」などでもけっこう力を入れてセットを作っているが、とりわけ「べっぴんさん」は頑張っていると思う。
ドラム缶の火は燃えてるし、布の屋根の上には水たまりがあるし、西部劇みたいに砂煙舞っているし、美術、見ごたえある。炎や風が揺らぐのが効いている。
ふんわり柔らかい少女の夢のような世界観と、骨太な世界観が共存していて、「べっぴんさん」には何かがあると思わせる。

すみれの気持ち


「他人の幸せを羨んではいけないと言います。それが友ならなおさらです」(語り/菅野美穂)
良子と君枝の夫が次々帰って来る中、すみれの心はチクリと痛くなる。
「結婚してから離れてた時間のほうが長かった」と夫・昭一(平岡祐太)に言われ、すでに離脱した良子に続き、君枝も夫との生活を選ぶ。
残されたすみれだったが、お父さんの行動を見た後なので、ひとりでも(明美がいるが)頑張ろうという
気になっているのがわかる。
お父さんの背中のおかげで、すみれは生きる力を得たのだった。ええ話や!!
(木俣冬)