アジアU−19選手権2016。日本は準々決勝でタジキスタンを4−0と大差で下し、来年、韓国で開催されるU−20W杯の出場権を勝ち取っている。10年ぶりの世界大会出場だ。日本の若武者たちはその勢いを駆って、決勝ではPK戦の末にサウジアラビアを下し、同大会の初優勝を成し遂げている。

 J1で試合経験を積み重ねる中山雄太(柏レイソル)、富安健洋(アビスパ福岡)、堂安律(ガンバ大阪)、三好康児(川崎フロンターレ)らは、たくましかった。京都橘高校の岩崎悠人の利発さも印象深い。攻撃が膠着する中、サイドや裏への抜け出しで深みを作っていた。正念場のカタール戦では抜け目なくシュートポジションに入り、したたかに先制点を蹴り込んでいる。

 日本の健闘は大いに称えるべきだろう。

 しかし、日本の戦いそのものは特筆すべきものが乏しかった。ラインが間延びし、選手の距離感が悪く、攻撃は中央に偏って跳ね返された。例えば三好は川崎でのプレーレベルには程遠く、チームが組織的に整備されていたとは言い難い。決勝のサウジアラビア戦は1対1でも敗れる場面が多発した。大会を振り返ると、組み合わせに恵まれた感が強かった。

 U−20W杯出場を、手放しで喜ぶことはできない。

 そもそも日本が大勝を収めたイエメン、カタール、タジキスタン、ベトナムとの試合は、ほぼサッカーにならなかった。相手はエリア内でも自由にシュートを打たせる有様。戦術的に訓練されておらず、体力的に劣り、技術も未熟だった。アジアサッカーのレベルの低さが危惧されるほど。事実、前回のU−20W杯ではアジア勢4チームがグループリーグを戦い、1勝11敗と無残な結果に終わった。アジアと世界の距離はかなりあるのが現状だ。

 来年のU−20W杯への出場国が決定しているのはアジア、オセアニア、欧州のみ。アフリカ、南米、北中米カリブはこれから予選が行なわれる。はたして、日本は「世界標準」に迫れるのか?

 世界では同年代の若者たちが、すでに大人に入り混ざって切磋琢磨している。

 19歳のブラジル代表FWガブリエル・ジェススは、この年代のタレント筆頭格と言えるだろう。名門パルメイラスの主戦力としてゴールを量産。自国開催のリオ五輪では金メダルを手にし、フル代表も経験している。2017年1月からはジョゼップ・グアルディオラ監督の誘いでマンチェスター・シティ入団が内定。バルサ、レアル・マドリードなどメガクラブとの争奪戦の末だった。

 ブラジルでは他に19歳のFW、マルコムがボルドーで主力として出場。19歳の右SB、ジョアン・ペドロもパルメイラスでレギュラーを勝ち取っている。王国の衰退が囁かれるが、タレントは少なくない。

 南米でガブリエル・ジェススと双璧を成すのは、レアル・マドリード(現在はBチームに在籍)のパラグアイ代表、FWのセルヒオ・ディアス(18歳)だろう。若き日のセルヒオ・アグエロと比較されるストライカー。たやすくシュートポジションにボールを持ち込み、確実にボールを叩く。今年5月のトゥーロン国際大会では、U−23日本代表(5歳上!)を相手に決勝点となる直接FKを蹴り込んでいる。

 一方、欧州もアジアと同じ出場国数(今大会のアジアは韓国が開催国のため5カ国出場)ながら、レベルは数段上だろう。

 なにしろ、強国スペインのU−19が出場権を逃しているのだ。左利きのアタッカーとしてレアル・ソシエダを牽引するミケル・オヤルサバル、スポルティング・ヒホンのセンターバックとしてクレバーな守備が光るホルヘ・メレ。そして、ヘスス・バジェホは「欧州最高のセンターバックになる大器」と絶賛され、今シーズンからフランクフルトでプレー(所有権はレアル・マドリードが保持)している。

 激戦となったU−19欧州選手権を制したのは、決勝でイタリアに4−0と大勝したフランスだった。得点王&MVPのFWジャン=ケビン・オギュスタンは強豪パリSGで試合経験を重ね、将来を嘱望されている。オギュスタンはスピード、パワーに優れるだけでなく、ワンタッチゴーラーとしての才覚を備える。

 U−20W杯の出場権を得たフランス、イタリア、イングランド、ポルトガル、ドイツの選手たちは、必ずしもトップリーグでポジションを獲得しているわけではないが、Bチームや期限付き移籍先で大人を相手にプレー。欧州では2部、3部であれ、ユース年代から大人を相手に実戦を積む。これによって、とりわけ戦術的に鍛え上げられる。

 日本もJ3に3チームのU−23が加わっているが、まだ限定的だ。しかも欧州の3部と比べると単純にレベルが著しく落ちる。

 欧州はユースレベルの引き上げにも積極的で、2013年には「UEFAユースリーグ」が創設された。チャンピオンズリーグのユース版で、各国ビッグクラブの「予備軍」たちがしのぎを削る。

 昨季のユースリーグはチェルシーが優勝。得点王を争ったイングランドU−19代表FWのタミー・アブラハムは今シーズン、期限付き移籍したブリストル・シティ(イングランド2部)で得点王を争う。そのアブラハムとチェルシーでツートップを組んでいたこともある19歳のドミニク・ソランケは、オランダのフィテッセで7得点した後、今シーズンは古巣に戻ってトップ登録されている。

 来年5月のU−20W杯まで、世界の若者たちは競争の中で揉まれる。少しでも気を抜けばふるい落とされる。そして彼らにとって、U−20W杯は登竜門だが、目標ではないのだ。

 日本の若手も、浮かれてはいられない。「アジアの盟主」のままでは歯が立たないだろう。今大会のメンバーはフル代表や海外進出を狙えるか。彼らのレベルアップとともに、それを凌駕する新鋭の台頭も望まれる。

小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki