アリババ、タイのデジタル決済 Ascendと提携 2兆円市場を視野に

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アリババの金融部門アント・フィナンシャルは11月1日、タイのデジタル決済企業Ascend Moneyと戦略的パートナーシップを結び、東南アジアの数十億ドル規模のオンライン、モバイル決済マーケットに進出すると発表した。

Ascendへの出資額は非公開だが、アント・フィナンシャルは同社の決済事業と金融サービス事業の成長を支援すると語った。中国商務部は6月、アント・フィナンシャルがAscendの株式の20%を取得しようと計画していると発表していた。

Ascendはタイの通信大手トゥルー・コーポレーションから分離した企業で、現在はTrueの親会社で農業、リテール、通信分野などを手掛けるCPグループの子会社となっている。

Ascendは電子ウォレットサービスTrue Moneyとオンライン融資プラットフォームAscend Nanoを運営。タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの6か国で事業を行うライセンスを保有している。True Moneyのユーザー数は今年2月の時点で80万人だった。

東南アジアのデジタル決済市場は2兆円突破

シンガポールの決済会社MatchMove Payのデータによると、東南アジアのオンライン及びモバイル経由の購入金額は昨年、220億ドル(約2兆2,700億円)を超えたと推定される。アント・フィナンシャルは昨年、アリババと共にインド最大のモバイル決済サービスPaytmの株式を取得した。Ascendとの提携は、この地域のモバイル決済分野での2番目の投資となる。

アント・フィナンシャルCEOに就任したばかりのエリック・ジン(井賢棟)はプレスリリースで「グローバルパートナーとのネットワークを構築し、今後10年内に20億以上のユーザーにフィナンシャルサービスを提供する」と目標を述べた。

北京のコンサルティング企業iResearchによると、アント・フィナンシャルの決済アプリ「アリペイ」は昨年、10兆2,000億元(約155兆4,000億円)に達する中国モバイル決済マーケットで68.4%のシェアを確保した。2位はテンセント(騰訊)の20.6%だった。

爆発的に伸びている中国人海外旅行者のニーズを反映し、アリペイは70か国の8万店舗で導入されている。独調査会社Gfkによると昨年、中国人旅行者1億900万人は世界各地で計2,290億元(約3兆4,900億円)を支出した。特に人気が高かった旅行先は韓国、タイ、香港、日本だった。

タイのモバイル決済利用率の低さが課題に

しかし、アント・フィナンシャルは、中国ほどモバイル決済が普及していない東南アジアで壁にぶつかっている。タイのインターネット普及率は比較的低い。米調査会社Forresterと政府系調査機関中国インターネット情報センター(CNNIC)のデータによると、東南アジアで使われているスマホ台数は1億7,500万台で、中国のネットユーザー数6億8800万に比べるとかなり見劣りする。

Forresterのアナリスト、ジー・イン・ウンは「タイの消費者はモバイル決済に不安を感じており、LINEのスタンプなど少額の商品しか買わない」と語った。

東南アジアのモバイル決済マーケットを巡っては、複数の企業が参戦している。タイのOmise CoやLnwShopのLnwpayだけでなく、LINEのLine payも積極的に浸透を図っている。

中国でデジタルインフラを構築し、銀行とは一線を画したフィナンシャルサービスを提供した実績を持つアント・フィナンシャルが、東南アジアで優位に立つ可能性もある。

タイ内閣は昨年、クレジットカードやデビットカードを持っていなくてもお金の移動を可能にする財務省の政府e決済計画を承認した。