中国経済経営学会2016年全国大会・一般財団法人霞山会協賛セッション「日系企業の中国展開〜激変する市場環境への対応と現場からの展望」が東京都港区三田の慶応大学で開催された。逆境下でも、成功している日系企業の「秘訣」が明らかになった。写真は会場風景。

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201611月5日、中国経済経営学会2016年全国大会・一般財団法人霞山会協賛セッション「日系企業の中国展開〜激変する市場環境への対応と現場からの展望」が東京都港区三田の慶応大学で開催された。逆境下でも、成功している日系企業の「秘訣」が明らかになった。

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中国経済は「世界の工場」として世界経済の拡大を牽引し、リーマンショック直後には世界経済の落ち込みを巨額の景気対策で下支えした。その後中国経済は「新常態」の掛け声の下、景気対策の後遺症への対応と内需主導型成長方式への転換に苦心している。

この間、中国市場に対する期待は依然強く欧米や韓国企業は対中投資を拡大しているが、日本からの対中新規直接投資が落ち込み、一部では事業から撤退する企業も出ている。一方で、中国における激しい経営環境の変化に対応して長く事業を継続してきた日系企業が多く存在することも事実だ。

このセッションは、中国経済の変化をくぐり抜け、日系企業の中国拠点の経営現場を率いて来た現地経営者から、経営環境の変化への対応ノウハウを聴取し、中国経済の今後と日系企業の中国ビジネスの可能性を展望するものとなった。

◆相手の特性つかみ、隙間狙う

<講演(1)越智博通・北京陸通印刷有限公司董事長>
30年前に1人、北京でラベル印刷を始め、数々の挫折を繰り返した後発展し、天津、上海にも工場を持つようになった。中国は1978年の改革開放以来、「優遇政策」を旗印に、世界各国から技術導入した。今中国が求めているのはハイテク技術で、これ以外の優遇政策はなくなった。中国人の気質は(1)遵法意識が希薄で、騙される方が悪いとの考え方を持つ(2)拝金主義で利にさとい(3)自己中心的で非を認めない―といった、日本人とは違う傾向がある。相手の特性を踏まえて商売すれば、道は開ける。

中国はほとんどなんでも作れるようになった。日本企業が生きる道は、「産業の隙間(スキマ)狙い」と「顧客を満足させる高品質商品の供給」ではないか。

◆徹底的な現地化を!

<講演(2)中山国慶・大宇宙信息創造(中国)有限公司董事長>
経営不振にあえぐ中国拠点のオフショア・アウトソーシング事業を十数年前に立て直し、近年では人件費上昇、為替変動に対応した拠点配置、新規事業展開を中国国内で成功させ、従業員約1200人の業界有数の企業に発展させた。

簡単にできるビジネスは簡単に真似される。他の追随を許さず顧客が評価してくれることが最大の営業となる。人に頼って、支援を待っているだけならいつまでも変わらない。

中国での20年間の事業経験を生かし、巨大な中国国内市場を積極的に取り込んでいる。ソフトウェア製造工場から顧客事業拡大に貢献するソリューションサービスへのシフトを推進。特に拡大する富裕層をターゲットにしたEC(電子商取引)事業を展開する。

常に変化する中国には様々なチャンスがある。競争も激しく、リスクがあることを前提に物事を考える。中国事業成功のポイントは(1)徹底的な現地化をはかり、重要なポジションには現地人を充てる(2)実行力があるマネジメント(3)柔軟性のある事業計画―の3点だ。13億人の市場は大きな可能性があり、夢があるが、足元が一番大事である。

◆「いいものつくれば売れる」時代から「今売れるものがいいもの」に転換

<座長総括=服部健治・中央大学教授>中国の市場経済は未熟で、たかり体質が残り、法律を守らない。チャンスとリスクが混在するが、媚びない、あきらめない姿勢を貫き、大企業にない経営力があれば勝ち抜ける。

中国人の能力をいかに生かすか。市場を絞り、日系企業に絞り差別化方針のもと、専門性を追求したことが2社の成功の秘訣だ。中国が「世界の工場」のときはコストダウンが必須だったが、「世界の消費市場」や「東南アジアへのサプライチェーン展開」を狙うようになった今、売り上げ拡大やコストダウンをめざすよりも利益をいかに上げるかが重要だ。

2012年の尖閣国有化後の反日暴動後、「君子危うきに近寄らず」という風潮が強かったが、今後は「虎穴に入らんば虎児を得ず」「人間万事塞翁が馬」の考え方で中国市場に対応すべきだ。さらに日本企業が強かった1990年代の「いいものを作れば売れる」時代から「今売れるものがいいもの」の時代に変わった。これに合わせて日本企業は経営戦略を見直すべきだ。(八牧浩行)