写真提供:マイナビニュース

写真拡大

世界遺産の中でも登録数が少ない珍しいジャンルとして、「道の遺産」があります。古くから巡礼者が聖地に向かうときにたどった信仰の道であったり、貿易のために商人が行き交った文化や経済の交流の道などです。

○約40kmが追加で世界遺産に

日本でも「道の遺産」が登録されているのですが、それが「紀伊山地の霊場と参詣道」です。自然豊かな紀伊山地に点在する「吉野・大峯」「熊野三山」「高野山」という3つの霊場と、それらを結ぶ参詣道が登録されています。

10月下旬、世界遺産委員会の臨時委員会が開催され、約40kmの参詣道が追加登録となるという喜ばしいニュースがありました。それぞれの世界遺産は登録される際に、登録する範囲や対象となる建造物などが細かく定められます。登録されていないエリアでも、同様の価値を持つことが後に認められたり、保全体勢が整ったりすることで、拡張される場合があります。

○7月からの持ち越しで登録に

世界遺産の新規物件の登録は、年に一度開催される世界遺産委員会という会議で決定されるのですが、こうした拡張や範囲の変更なども、世界遺産委員会で審議されています。なお、2016年の世界遺産委員会は7月にトルコのイスタンブールで開催されました。実はその会議で突発的な事件が起こり、全ての議題を処理することができなかったので、「紀伊山地」の追加登録を含むいくつかの議題は持ち越されてしまったのです。

……読者のみなさんは、7月中旬にトルコでクーデター未遂事件が起こったことを覚えているでしょうか。実は世界遺産委員会の真っ最中の出来事でした。事件により委員会は1日休会となり、再開はしたものの日程が短縮されました。

「紀伊山地」については、特に問題なく7月に追加登録される見込みでしたが、持ち越しとなってしまいました。長い時間をかけて準備をしてこられた関係者や自治体の方々は、ずいぶんと残念な思いをされたと思います。ともかく今回、無事に登録が決まって良かったです。

○森林を調査した結果、参詣道が判明

追加登録となったのは、京都などから熊野三山に至る熊野参詣道(熊野古道)で、途中で山中を進む「中辺路(なかへち)」9カ所と、海岸沿いに進む「大辺路(おおへち)」9カ所、そして高野山に至る「高野参詣道」4カ所の計22カ所(40.1km)です。既に登録されていた307.6kmの参詣道とあわせると、347.6kmの道筋が世界遺産の対象となりました。長い歴史の中で道がすっかり森林に埋もれてしまったものの、調査を行う中で参詣道だったことを特定できた箇所などが含まれています。

紀伊山地の霊場に詣でることは魂の再生を意味し、古くから多くの人々が参詣道を行き交いました。現代に至っても癒やしを与えてくれる場所だと思います。この追加登録を機に、紀伊山地の魅力が国内外でますます発信されていくことを期待しています。

○世界遺産データ

紀伊山地の霊場と参詣道。文化遺産。2004年登録・2016年範囲変更。日本・和歌山県/奈良県/三重県

○地図

○筆者プロフィール:本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。
○世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて

(本田陽子)