ジャン=ジャック・ベネックス監督

写真拡大

 ドイツ・オーストリア合作「ブルーム・オヴ・イエスタデイ」が東京グランプリに選ばれ閉幕した第29回東京国際映画祭。コンペティション部門の審査委員長を務めたフランスのジャン=ジャック・ベネックス監督は、「さまざまな映画をたくさん見ることができ、とてもいい時間を過ごすことができた」と10日間を振り返った。

 「ブルーム・オヴ・イエスタデイ」は、ホロコーストのイベントを企画する男がアシスタントの女性と調査を続けるうちに意外な事実を突き止めていく、歴史に根差した人間ドラマ。選考会では候補が複数本挙がったとした上で、「非常に才能のある監督(クリス・クラウス)で、重厚なテーマを近代的な視点から語り、そこにユーモアを入れることも忘れなかった。素晴らしいキャストを選び、作品として一貫性を持った作品だった。話し合いの結果、これだということに決まりとても満足している」と評した。

 開幕時の会見では、「フィルムメイカーは、表現の自由と闘う戦士」と持論を展開。その観点では、監督賞(ハナ・ユシッチ)に輝いたクロアチア・デンマーク合作「私に構わないで」、芸術貢献賞を射止めた中国の「ミスター・ノープロブレム」、ルーマニア・フランス合作「フィクサー」が印象に残ったという。

 「『私に構わないで』は、ありきたりのハッピーエンドではなく、非常に勇気をもってつくられた映画だと思う。『ミスター・ノープロブレム』は表現の自由がないシステムの国で、巧みに表現し政治的なこともちゃんと伝えられている。『フィクサー』も未成年の売春というテーマをドキュメンタリータッチで描写し、とてもいい映画だった」

 1993年に日本のオタク文化をルポタージュしたドキュメンタリー「Otaku」を制作するなど、親日家としても知られる。今回も多忙な合間を縫って箱根にも足をのばし、「ほんのちょっとだけだけれど、富士山が見られてうれしかったよ」と相好を崩す。

 「日本には何度も来ているけれど、今回は街をよく歩き出会う皆さんがよりフレンドリーな気がした。東京、日本が大好きという気持ちがまた大きくなった。僕はパリよりも東京の空気の方が新鮮に感じるらしい。できれば自然にあふれた場所に1〜2カ月滞在して、日本で会った人や映画祭で見た作品について日記に書き留めたいくらいだ」

 審査員として、世界各国の映画を評価する立場に身を置くことがいかなる影響を及ぼすかを聞くと、「とても興味深い質問だね」とニヤリ。2000年「青い夢の女」以降、監督作を発表していないが、創作意欲がふつふつと沸き立ってきたようだ。

 「随分長い間映画を作っていないが、多くの素晴らしい才能と出合ったことで、映画に対する関心がよみがえってきた。今は、ぜひ作りたいという気持ちになっている。映画の将来について楽観的にもなってきた。年をとってきている(70歳)から、万が一作れなくなったとしても、素晴らしい作品をまだまだ見ることができるからポジティブになったよ」

 これは期待せずにはいられない。その新作のお披露目の舞台が東京国際映画祭になれば、世界的な注目を浴びることは間違いない。