東京国際映画祭を読み解く7つのキーワード[映画界のテスラが語る 第2回]

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今年も10月25日から11月3日まで、第29回東京国際映画祭(TIFF)が開催された。映画祭という響きと六本木ヒルズという場所柄、華やかなレッドカーペットや着飾ったセレブが注目されがちで、この映画祭の実績と目的がメディアで取り上げれることは稀だ。そこで今回は、上映作品に携わったクリエーターして、本映画祭の実態とビジネス面を紹介したい。

1. アジア最大規模

世界には様々な映画祭が存在するが、最も権威があるのが世界三大映画祭とされるカンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭の三つだ。これらとヨーロッパ以外で開催されるトップランク(A-festival)の映画祭が世界十二大映画祭と呼ばれており、TIFFはこのトップランクに含まれているアジア最大規模の映画祭だ。

2. コンテンツ・マーケット

そして一般的に知られていないのが映画祭にはマーケットが併設されており、映画コンテンツを国際的に売買する場があることだ。TIFFも例外ではなく、TIFFCOMと呼ばれるコンテンツ・マーケットが毎年お台場で開催されている。

このマーケットは日本では最大規模の映画コンテンツのマーケットであり、毎年2万人以上の国内外の関係者が商談に訪れ、約5千万ドル規模の総成約がされる。映画コンテンツはある程度の時間をかけて契約するのが通常なので、実際のビジネス規模はこの数字を上回る事が予想される。個人的な実体験として、浅野忠信主演のフィリピン映画『壊れた心』の日本配給権を購入したのも本作品がTIFFで上映されてから半年後である。

日本の映画産業は国内の興行が成長していない状況であるが、TIFFCOMの商談数と総成約金額は年々上昇しており、日本コンテンツの国外での成長に重要な役割を持っている。

3. 『君の名は。』

映画関係者にとって最も重要な特色として、TIFFは日本の映画コンテンツを世界に発信する最も大きな場所であるということだ。例えば国内で大ヒットした『君の名は。』の米国での配給が業界紙大手メディア「VARIETY」から発表されたのも本マーケット期間中であり、同作プロデューサーの川村元気氏も業界大手紙で「日本の最も熱いプロデューサー」として特集されるなど、日本の映画が海外の映画関係者に注目される機会となった。

4. 一般公開

TIFFは一般にも公開されており、誰でも上映作を鑑賞することができるが、これはあまり知られていない。例としてカンヌ国際映画祭では、基本的に上映作品は関係者以外に公開されないが、TIFFは一般人でもほぼ全ての作品を鑑賞することが可能であり、開かれた映画祭になっている。しかも学生料金は500円〜。役者や監督を交えた舞台挨拶など関係者以外も楽しめる仕掛けも多く、映画鑑賞の敷居を低くしている。

5. 次世代の発掘

また、TIFFに若手の映画制作者を発掘する機能があるのも一般には知られていない。『君の名は。』や『シン・ゴジラ』などの日本の優れたヒット映画を海外に紹介する一方で、優れた実力を持つ監督作品を国内外に紹介する機能も持っているのだ。

国内で最も権威があるTIFFで自らの作品が上映されることは、クリエーターにとって名誉とされている。エントリーされる作品が1,500作を超える中、日本映画は10作程度しか入選しない狭き門ではあるが、大手企業でなくとも応募ができる貴重な機会となっている。

実際にTIFFで紹介された監督は国際的に羽ばたくことが多い。アカデミー賞監督賞を2年連続で受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、今年のカンヌ国際映画祭で受賞した深田晃司監督を紹介するなどの功績を残している。

6. 『雪女』

そんな中、今年のTIFFで最も注目された日本映画は杉野希妃監督・主演の『雪女』だ。杉野は若干32歳にしてコンペティション部門に選ばれた監督兼主演を務める才人で、『雪女』は業界誌大手の「SCREEN INTERNATIONAL」及び「VARIETY」にも紹介され関係者の注目が集まった。この作品はクラウドファンディングを行なっており、そのプラットフォーム「モーションギャラリー」から予告編を視聴することが可能だ。

7. 今後の展望

TIFFは日本のコンテンツビジネスは欠かせない存在であり、日本の映像産業の未来を担っていると言っても過言ではない。現在、日本の映画産業は国内でほとんど成長していないが、国際的に映像産業は成長しており、日本映画は海外での展開にこそ活路がある(第1回記事参照)。

この映画祭が次世代の才能を見出し、国内外に良質なコンテンツを紹介し続けることが、日本の映像産業を長期的に成長させるだろう。