Doctors Me(ドクターズミー)- 乳搾り体験で牛が病死...ストレスが牛に与える影響と牧場の管理方法

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2016年10月19日(水)観光牧場で乳搾り体験に使われていた乳牛4頭のうち、数カ月内に2頭が相次いで乳房炎などで病死したことを受け、原因として牛へのストレスが大きいと判断し、乳搾り体験を終了すると発表されました。

良くTVなどでも見かける牛の乳搾りですが、実は大きなストレスが牛へとかかっていたのですね。今回は「牛のストレス」について、獣医に解説をしていただきました。

牛が乳絞りによってストレスに感じる理由


乳搾りに限らず不特定多数の人間と接したり注視される状況は牛にとって緊張するものであり、長時間続くとストレスに感じるものと推測されます。

牛の乳房炎とは

乳房内になんらかの原因により細菌などが侵入し、異常に増殖することによって起こる乳腺組織や乳管の炎症のことを指します。

環境中に普通に存在する表皮ブドウ球菌や大腸菌などが原因になったり、乳牛を多く飼育する牛舎では搾乳する機械(ミルカ―)によって感染牛から伝染したりすることで感染します。

乳房炎は急性と慢性、潜在性に分類されます。

急性乳房炎


炎症を起こした乳房組織が熱をもって腫れ硬結したり、ひどいとき(甚急性)には組織が完全に破壊される状態(壊疽)になったり、激しい痛みを伴うだけでなく全身も敗血症になったりと時に生命の危機を伴うこともあります。

慢性乳房炎


慢性乳房炎では症状が乳房に留まります。

潜在性乳房炎


乳房にも全身にも症状が全く現れず、乳汁に炎症による変質が検査上認められるのみになります。

乳房炎による症状


・腫れ
・熱感
・硬結
・痛み
・全身の発熱、細菌感染による敗血症

ストレスによって乳房炎になるメカニズム

牛は出産することで乳を分泌するようになります。泌乳は出産後およそ300日に渡って続きますが、当初の2カ月強では牛の体は乳を産生するために自らの体脂肪を減らしてエネルギーにしていくなど、基本的に消耗状態になっていきます。

その後徐々に摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが正常に戻って行きます。このように母牛のからだの状況は泌乳期の時期により変化し続けており、免疫状態が不安定な状況です。

正常であれば免疫により排除できる環境細菌も、肉体的や精神的ストレスなどにより免疫が低下しうまく機能できなくなり乳房炎につながる可能性は十分考えられます。

乳搾り以外で牛がストレスとなる要因や行動


■過度な緊張状態に置かれる状況

■暑さ

■不潔

■自由に体位を変えられない環境

■自由に飲食できない環境

牛のストレスに対する管理


さまざまな疾患が起こるのを未然に防ぐという考え方が大切です。

疾患につながるストレスを軽減するために、牛の居住する環境を整えるように管理されています。細菌の温床となる糞尿などを速やかに処理するのはもちろん、高温多湿な環境に弱い牛には換気を良くします。

また牛が横に寝られるスペースを確保し、自由に立ったり寝転んで休めるようにする必要があります。これには横臥率という指標があり、非常に重要視されているものです。

牧場の牛が引き起こしやすい疾患

下痢


多くはウイルスや細菌、寄生虫などによる感染性の下痢ですが、給餌のアンバランス等による消化不良やストレスが原因などの非感染性の下痢もあります。

流産


牛の流産の大半は細菌やウイルスが原因によるものです。これらは伝染性が非常に強いため集団発生してしまうことも多く、警戒されています。

乳房炎


病原性の高い細菌や環境中にいる細菌などが乳房組織で異常増殖することにより生じます。

蹄(ひづめ)疾患


牛の蹄(ひづめ)は人間の中指と薬指の爪に相当するもので、牛の歩行運動に重要な運動器官です。蹄の手入れ不足や細菌感染、乳牛での産後ストレスなどの原因により炎症や潰瘍が起こったりして、運動障害へとなります。

第四胃変位


牛には胃が4つあり繋がっていますが、4つめの胃が何らかの原因で拡張して変位し、胃捻転の状態になってしまう疾患です。

獣医からのアドバイス

牛も人間と同様に、疲れや緊張状態、温度や湿度、衛生状態など環境の快適度の低下により体にストレスがかかり病気になりやすくなります。また不特定多数の人(動物)と接触することで、なんらかの病原体への感染の機会が増えることも同様です。

ストレスのない生活を送ることが心身ともに健康でいる秘訣の1つといえるでしょう。

観光牧場や小動物を扱うペットショップなどでは動物に大きなストレスを与える可能性があり、動物愛護の観点からストレスを軽減しようとする考え方の大切さを改めて認識させられるニュースでした。

(監修:Doctors Me 獣医)