NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)
10月30日放送 第43回「軍議」 演出:小林大児


「敵陣に身内がいれば源次郎の目が曇る。
源次郎の好きにさせてやりたいのです。
あれは14年間 この時を待っていたのです」

信之(大泉洋)だって好きに生きてきたわけじゃないのに幸村(堺雅人)を心配するところが泣ける。
その思いも背負ってか、幸村が軍議で大活躍。
お父さん昌幸(草刈正雄)仕込みの、碁石を使って戦略を練る。

この碁盤で頭を整理する方法、日曜劇場「IQ 246〜華麗なる事件簿〜」(「真田丸」終了後の夜9時からTBSにて放送)で織田裕二演じる主人公・法門寺沙羅駆も事件を推理するときやっている。ついでに、法門寺家には淀に寧々という名のお手伝いさんもいて、捜査一課の課長は豊臣英吉だ。

それはさておき、
頭脳戦となると俄然生き生きする、幸村。
軍議では、籠城か討ってでるかの2択。籠城は、相手の兵が多いときの戦の定石で、老いた家康が死ぬのを待つ作戦だ。それを五人衆の4人までが承知するが、幸村だけ不承知。拗ねて九度山に帰るとまで言い出す。
それが作戦。
「はったりは真田の家風でござる」(内記/中原丈雄)。

幸村は辛抱強く4人を説得にかかる。
そこで明らかになっていく、各々がこの戦に参加した理由。
明石全登(小林顕作)は「キリシタンの布教」。
長宗我部盛親(阿南健治)は「お家復興」。
毛利勝永(岡本健一)は「己の力を試す」。


毛利勝永の「今の俺の腕が戦場でどれだけ通じるかそれを見極めたい」という台詞は、俳優がいろいろなプロデュース公演に出ていろいろな演出家と仕事をするのと似た感覚のような気がする。
それにしても、岡本健一は、ジャニーズ事務所なのでウェブ記事では写真が使えない。五人衆が一緒の場面が多いのに・・・。

話を戻して、それぞれの参戦理由、最後はこのひと。
後藤又兵衛(哀川翔)は「死に場所探し」。
「俺たちは日の本中を敵に回してる」(から負けるに決まってる)と言う又兵衛。

この台詞があることで、豊臣の置かれた立場がよくわかる。

だが、ここで幸村の力の見せ所。

「皆 それぞれ 望みをもっている。
生きる望みを。
だからこそ我らは強い。
私は本当に負ける気がしないのです。
我らはけっして死なない。
ここに死に場所はない。
死にたいなら徳川につくべきだ」

とブチ上げる。
これこそ真田得意技のはったりであろう。
事前に、又兵衛はひとの言うことを聞きたくない性分だと聞いていたゆえの。見事に作戦は成功、又兵衛も
討って出る案に賛成した。

こうして曲者5人がひとつになって・・・とわくわく「真田丸」になるかと思いきや、そう簡単にはいかない。
豊臣家のいろんな思惑が渦巻いて、
完全に牢人たちを下に見ている織田有楽斎(井上順)、なんだかこわい大蔵卿局(峯村リエ)、事前に根回ししていた大野修理(今井朋彦)、ただただまっすぐな秀頼(中川大志)、秀頼を守ることで頭がいっぱいの茶々(竹内結子)の意見で、何度も意見がひっくり返り続け、結局は茶々が籠城に戻してしまう。



状況が何度も何度もひっくり返ることを「真田丸」は初期の頃からずっと描いてきた。まさに「はったりは真田の家風でござる」と同じく、「ひっくり返しは『真田丸』の得意技でござる」だ。
茶々が籠城にこだわる理由も、家臣の「裏切り」が恐れてのこと。
「その者が裏切らぬといえますか。
信じられるのは真田だけ。
(ほかの者たちのことは)城に留め目を光らせておく」という茶々。
かつて信長が明智光秀の裏切りに合って死んだことがいまだにトラウマなのかもしれない。

それにしても「私の愛した人たち」の中に秀吉(小日向文世)が入ってないのがなんとも言えない。戦乱のなかで、好きでもない男にベタベタされることにずっと耐えていたんだなあ。どす黒いものがどんどん溜まっていくよなあ・・・。

裏切りと言えば、片桐且元(小林隆)が家康についてしまった。歴史に詳しい人にとってはあらかじめわかっていたことではあろうが、演じる小林隆が実直そのものであったため意外性は抜群だった。


俳優によってあらかじめわかっている展開をギリギリわからなくさせるという点では、大野修理の今井朋彦も一役買っている。印象よくない大野修理だが、この回では、ただのいやなやつではなく、秀頼を大事にすることだけを優先して生きているのだという事情を感じさせた。

小林隆、今井朋彦、阿南健治、堺雅人は、三谷幸喜が書き下ろしたシアタークリエのこけら落とし公演「恐れを知らぬ川上音二郎一座」(07年・明治時代、外国に乗り込んで芝居をうった劇団の物語)に出演していた。死んじゃった秀次役の新納慎也も。当時は、堺、今井、小林・・・「新撰組!」のメンバーが出ていると言われていて、長らくおなじみの顔ぶれが適材適所でしっかりいい芝居をし続ける姿を観ることができるのは幸せだ。

「戦というものは 時の勢いを味方につけた方が勝ち」(織田有楽斎)

NHKの公式ですら今年の大坂方は勝つ気満々と語り、「真田丸」ファンとしても、この戦い、負けないんじゃないでしょうか・・・と祈るような気持ちになっている。これだけ想像をひっくり返してきたドラマだから、スペシャルな仕掛けがあってほしい。その気持を煽るように、誰一人、最後の最後まで、その心情がわからない。
幸村はこの戦いに参加した理由をこう言う。
「実は・・・。わたしにもよくわからないのです(ペコリ)」。
茶々に逆あすなろ抱きされてもそれ以上には進展させない幸村。

昌幸が35話で「そんなことまで書物に書かれてはもう誰も背水の陣なんてできんわ」と言っていた。肝心のところはボカしていくこと。物語も登場人物の心情も謎を残しておくことが大事。
碁石使って頭の整理している「IQ246」の沙羅駆も謎多き人物だ。

いよいよ戦いがはじまる!


(木俣冬)