北朝鮮において、困窮の果てに売春に走る女性が少なくないことは、同国の人権問題に関わる様々な報告でも明らかになっている。

北朝鮮での売春は1990年代中盤の食糧難の時代から急速に拡散した。生活苦に苦しんでいた30、40代の女性が売春に走りだし、食糧難がおさまった2000年代以降は日常化してしまった。

性暴行や強制堕胎も

北朝鮮で「売春」は違法だ。売春が蔓延するや北朝鮮は2004年刑法改正を通し「女性強姦罪、未成年女性と性交した罪、職務上服従関係にある女性に強圧的に性関係を要求した罪」などに対し、労働鍛錬刑などの処罰を強化した。

しかし売春は摘発されても処罰されない場合が多い。取締りを行う保安員(警察官)らが賄賂を受け取り黙認するためである。摘発に先立ち、捜査情報を売春組織に事前に知らせ、取締りを避けるように手回しする場合もある。

もちろん、女性たちとて喜んで従事しているわけではない。自分の仕事が周囲に知られるのを避けるため、地元を離れ、ほかの地方を転々としながら売春を行う女性も多いと聞く。

ところが、貧困から逃れるため、せっかく北朝鮮から脱出した女性たちの多くが、中国においてオンライン上の性風俗業に吸収されているという。米紙ワシントン・ポストが現地のブローカーの話として報じたところでは、「中国で身を潜めている脱北女性の5人に1人がオンライン上の性風俗業に関わっている」という。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

脱北女性たちがそのような仕事に吸収されてしまうのは、中国当局に捕まることを恐れているからだ。食堂などで働いていれば、当局から尋問を受けるリスクが高くならざるを得ない。

中国当局に捕まれば、北朝鮮に送還され、国外逃亡者専用の拘禁施設で拷問などの虐待を受ける。とりわけ、性暴行や強制堕胎など、女性虐待が日常化している実態は、元収容者や関係者の告発により明らかになっている。

中国当局は間接的にとは言え、北朝鮮における人権侵害を助長しているわけだ。

国連ではいま、北朝鮮の人権侵害の責任を追及し、人権状況の改善を求める決議案が討議されている。抜本的な改善のためには金正恩体制の変更が必要だろうが、仮にそれが可能だとしても膨大な時間がかかる。

しかし、中国当局に態度を改めさせることは、それよりもいくらかは容易だろう。北朝鮮の人々が今を生き抜くことができるように、「逃げ場」を確保しておくことも重要だと筆者は考える。