決勝のサウジアラビア戦で先発出場した市丸は75分までプレー。グループリーグ第3戦から先発の座に定着した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 市丸瑞希にとってU-19アジア選手権は浮き沈みを感じる大会となった。

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 最初は『沈み』からのスタートだった。グループリーグ初戦のイエメン戦はベンチスタートで、ボランチで途中投入されたのも年下の原輝綺だった。その原が1ゴールを挙げるなど活躍し、市丸のボランチとしての序列が下がった。それが証拠に第2戦のイラン戦でもベンチスタート。ボランチで2試合連続スタメン出場を果たした神谷優太が負傷したが、代わって入ったのは、やはり原だった。
 
 しかし、グループリーグ第3戦のカタール戦でチャンスが巡って来た。この試合、神谷は負傷離脱し、試合には出られない状況になった。さらにチームとしても、負けはもちろん、0-0の引き分けでもグループリーグ敗退が決まってしまう厳しい状況に置かれていた。絶対に得点が必要なゲームだったため、守備的な原ではなく、より攻撃的な市丸がセレクトされた。
 
 過去2戦出場機会が訪れなかったボランチは、この起用に見事に応えた。市丸が得意とする縦パスが面白いように決まり、攻撃のリズムを生み出した。3-0の快勝に貢献すると、以降はスタメンに定着。準々決勝のタジキスタン戦では、その縦パスはさらに冴え渡った。
 
 8分、中盤でボールを持って前線をルックアップすると、「ボールを相手に覗かせたら、裏が空くのが分かっていた。小川がいいタイミングで走り込んでいたのが見えた」と、ディフェンスラインの裏に走り込んだ小川の頭にドンピシャで届くロビングを送り込んだ。小川が放ったヘッドは、ゴール右ポストに当たったが、こぼれ球に再び小川が詰めてヘッドで決めた。
 
 19分には自陣でサイドからの相手のクロスをインターセプトすると、「奪ったボールをすぐに、縦に入れることは、効果的だと思っているので、常に意識をしています」と語ったように、素早いターンから、裏へ抜け出したMF三好康児の足下へ糸を引くようなロングパスを送り込んだ。彼の精度の高いパスを受けた三好の折り返しから、最後はMF堂安律が試合の流れ早々と決定付ける2点目を叩き込んだ。
 
 準決勝のベトナム戦でもFKから正確なキックでFW岸本武流のゴールの起点となるなど、サブの存在から一気に主軸に『浮上』した彼は、サウジアラビアとの決勝でも、当然のように先発に名を連ねた。
 
 しかし、そこに落とし穴が待っていた。サウジアラビアはこれまでの相手とはまったく異なった。日本に対して前線から強烈なプレスを仕掛け、ボールキープと展開力に優れたトップ下のアルナージー(6番)とボランチのアラサマリ(14番)は市丸の背後を徹底して狙って来た。
 
「カタール、タジキスタン、ベトナムは引いて来てカウンターを仕掛けてくるチームで、そういう相手にはしっかり対応出来ていたのですが、個人の能力が高いサウジアラビアはどんどん前に出て来た」と、大きく戸惑いを見せた彼は、これまでの前向きなプレーから、後ろ向きのプレーを余儀なくされ、さらに相手の個人技とスピードに手を焼き、思うようなプレーが出来なくなっていった。
 
 試合が進むに連れて、プレスバックが掛からず、セカンドボールを拾えなくなり、チームは劣勢を強いられて行く展開に。それでも中山雄太と冨安健洋のCBコンビとGK小島亨介の踏ん張りもあり、失点は許さなかったが、75分に原との交代を余儀なくされた。
 
 内山篤監督の原への指示は、「プレスバックをしっかりすること、しっかりと守備から入れ」だった。
 
「交代は悔しかった。でも試合中に改善出来なかったのは事実なので、しっかりと受け止めたい。個人で負けているところがたくさんあったので、個人でボールを奪える力をもっと身につけて行かないと、もしU-20ワールドカップに出られても厳しいと思います」
 
 市丸にとってサウジアラビア戦は、自分の課題をはっきりと突き付けられた一戦となった。
 
「ボランチがしっかりとプレスを掛けないから、ボール保持者を自由にして、相手に走られているということ。もっと自分には激しさが必要だし、自分がボールを奪って自分が起点になることは(ガンバ大阪)U-23の實好(礼忠)監督からも言われていることなので、意識しているつもりだったのですが、まだまだだということを改めて感じることが出来る大会でした」
 
 沈んで、浮いて、沈んで――。市丸瑞希にとってのU-19アジア選手権はいろんな想いが交錯する大会となった。だが、すべてに言えることは、この経験は非常にポジティブなものであるということ。ここで抱いた想い、感じたことを、今後の成長につなげるべく。世界に向けて、彼は再び浮上への第一歩を踏み出した。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)