<富士フイルム シニア チャンピオンシップ 最終日◇5日◇ザ・カントリークラブ・ジャパン(7,022ヤード・パー72)>
 この展開を誰が予想できただろうか。先々週に肋軟骨を骨折し、コルセットを巻きながらプレーをしていることを初日に告白した田村尚之。この日は首位と6打差の7位タイからスタートした。
優勝カップを掲げ、笑顔をみせる田村
 「優勝はまったく意識していなかった」。首位のプラヤド・マークセン(タイ)とは差がついており、今季のマークセンの強さを考えれば落としてくるとも思えなかった。優勝のことは頭になく、妻も「昨日の夕方に連絡がきて“明日はいかないね”と」家族も応援に来なかった。ところが、だ。マークセンがパッティングが不振で失速したことに加え、サンデーバックナインで自身のプレーがぴったり噛み合い4バーディを奪取。マークセンに1打差をつけホールアウトした。
 待っている間も緊張はしなかった。「最後は獲ってくると思ってた。おそらくプレーオフかなと」と予想していたが、マークセンが18番パー5で2オンに成功するもまさかの3パットでパー。悲願の初優勝が転がり込んできた。
 大きな勝因は“無欲”だったこと。ケガもあり、開幕前の10日間は練習せず安静にしてきた。首位と差もある。しかも、相手はマークセンだ。「これまでは欲をかいて失敗してきた」、その欲が今回はプレーを邪魔することはなかった。昨年は2位が3回、今年は前半戦からパッティングの調子が思わしくなく、「今年は何もなく終るのかなあと思っていた。けど、まさかここで勝てるとは」。秋の大一番で勝ち、賞金ランクも4位に浮上した。
 94年に日本オープンで倉本昌弘らと回り、「いくら頑張ってもこの人には勝てない」とプロの凄さを痛感。しかし、その後倉本から「プロでもやれるんじゃないか」と後押しを受け49歳でプロテストを受験し、50歳からシニアツアーに。長年サラリーマンとして勤め上げ、現在も勤務先の鉄鋼商社に籍は残っているという異色のプロゴルファー。この勝利は「いいきっかけになると思う。次もいいことがあるかもしれない」と白い歯を見せた。
 「本当にプロになってよかった」。50歳で飛び込んだプロゴルフの世界で輝きを放つ“サラリーマンプロ”。努力を続ければいつか花開く時がくる。遅咲きの田村の勝利に勇気付けられる人は決して少なくないはずだ。
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