北朝鮮から中国に逃げ出した脱北女性が、人身売買の犠牲となりセックスワークを強いられる事例は今までも多数報告されているが、ネット上で性的なポーズを見せるなどの行為を行う「アダルトビデオチャット」にも従事している。

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米紙ワシントン・ポスト東京支局のアンナ・フィフィールド記者は、チャットセックスをやっていた「スー」という脱北女性とのインタビューを、ラオスの首都ビエンチャンで行なった。

現在30歳のスーは、絶望的な貧困を逃れて、人間らしい暮らしを営むため、2008年に脱北した。その後、人身売買組織の手で、中国東北地方の農村に住む中国人男性の元に売られ、結婚させられた。

夫はとても優しく、手荒にされることはほとんどなかったという。

夫婦の間には2人の娘が生まれたが、夫の稼ぎが少なく、生きていくためには、アダルトビデオチャットをするしかなかった。客とアプリでやり取りしつつ、要求に応じてカメラの前で性的な動きを見せるというものだ。客の多くは韓国人だが、米国やアフリカの客もいた。

彼女は、友人に頼んでアダルトビデオチャットの状況を動画に収めている。おそらく後に必要になると考えたのだろう。

その動画には、派手な色の下着を身に付けた状態で、あるいは裸で、紫色のハローキティのカバーが掛けられたベッドに座り、目の前にある2台のパソコンと向き合っている彼女の姿が写っている。

「誰かと実際にセックスをするわけではないので、問題ないと思っていた」(スー)

初日には3ドル(約310円)、多いときには1週間で120ドル(約1万2300円、800元)の収入になったという。この地域の最低賃金が月に1200元(約1万8300円)程度であることを考えると、かなりの収入だ。しかし、後悔の念が募った。

「あんなことになるなんて、思いもしなかった。中には話をしたいだけという客もいたが、ほとんどが性的欲望を持っていた。吐き気がした。」
「同じ人間なのに、どうして私はこんなことをしなければならないのか。娘のためにいい母親、強い母親になりたかっただけなのに」(スー)

耐えきれなくなった彼女は逃げ出すことを決意した。

彼女は1歳半の娘を背負い、同じ村でアダルトビデオチャットの仕事をしていた2人の脱北女性と共に逃げ出した。ブローカーと教会関係者の手助けで、バスと車を乗り継ぎ、闇夜に国境を越え命からがらラオスにたどり着いた。

一緒に逃げた友人は韓国行きを目指しているが、スーは「世界最強の国だから」と考え、米国大使館に亡命申請をしている。審査に約4ヶ月かかるとのことだ。金正恩政権になってから、米国が受け入れた脱北者の数は204人にのぼる。

スーは「下の娘は非常に幸運だ」と語っている。その一方で、村に置いて出ざるを得なかった5歳の娘のことを気にかけている。

夫の戸籍に入っているため、置いて出ても当分の社会生活に問題なく、2人をつれての逃亡生活は無理だと考えたからだ。

一方、下の娘は法的に存在しない「黒孩子」だ。かつては脱北者の子どもでも村の役人にワイロを掴ませれば、裏の出生届を出すことができたが、今ではできなくなった。戸籍がなければ福祉も教育も受けられない。

「上の娘は、私に捨てられたと思うだろう」スーは涙を浮かべながら娘を取り戻したいと語った。

彼女らの脱北を手伝ったブローカーのパク氏は、中国で身を潜めている脱北女性の5人に1人はこのようなアダルトビデオチャットに関わっていると証言する。

「食堂や外で働いていると、警察に尋問されるリスクがある。だからこういう仕事は安全で、稼ぎもいい。彼女のいた村に住んでいる脱北女性はみんなアダルトビデオチャットをやっている。とても普通のことだ。」(パク氏)