スーパーのレジに設置された、支付宝支払い専用のレーン

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「東京1日目。両替したばかりの1万円札を握りしめ、空港から憧れの有名ラーメン店へ駆け込んだ私。そこでは自動販売機で食券を買う必要があったが、1万円札が使えない。(中略)店員に助けを求めると、店の奥で頑丈そうな金庫を開けて両替をしてくれたが、これが果たして世界一の技術先進国なのか? 泉州市(福建省の三級都市)でも、もっとスムースだ」

 これは、中国の旅行情報サイトの掲示板に残された、先月日本を初めて訪れた女性による書き込みである。

 彼女が日本の現金主義に対して漏らしたこの率直な感想は、恐らく日本を訪れる多くの中国人が感じるものであろう。

 中国ではすでに、日本とは比べ物にならないほど、キャッシュレス化が進んでいるからだ。

 中国の昨年の電子マネーの取引額は、日本円で約150兆円に達した。一方、日本では5兆円程度とされているので、その規模は約30倍である。

 シェアを見ると、取引額の約7割をアリババグループの支付宝(Alipay)が占め、スマホチャットアプリの付加機能である微信支付(WeChat Payment)が約2割となっている。両サービスともQRコード決済を採用しており、特別な機器が必要ないことから爆発的に加盟店が増えた。

 中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏も、電子マネーの浸透ぶりについてこう話す。

「中国の小規模商店の中には、支付宝か微信支付のみ支払いが可能で、現金は使えないという店が増えている。飲食店では、電子マネーは人件費削減になるほか、現金の管理コストや防犯上のリスク軽減にもつながる。食堂の出前や屋台などでも使われていて、露天の果物屋でりんご1個買うのに『QRコードでピッ』というのも、当たり前の光景となりつつある」

 日本に上陸したばかりのApple Payも、中国市場では今年2月に、すでにサービスを開始している。中国人の財布ともいわれ、日本でも彼らの爆買い現場ではおなじみとなっている「銀聯」と提携し、鳴り物入りのスタートだった。

 しかし、支付宝と微信支付の二大巨頭に切り込むことはできず、残された1割ほどのシェアを雑多なサービスが奪い合う「その他」の中から抜け出せていない。それよりも、支付宝や微信支付が中国から飛び出し、世界の電子マネー市場をのみ込む日のほうが近いのかもしれない。