今回代表に招集された井手口陽介【写真:Getty Images】

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”似た様な選手”に異論をとなえたハリルホジッチ

 今月11日の親善試合・オマーン戦と15日のアジア最終予選・サウジアラビア戦に向けてメンバーを発表した日本代表。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は4-2-3-1のボランチを本職とする選手を4名招集。柏木陽介と大島僚太が外れ、井手口陽介が選出された。このメンバー選考からハリルホジッチ監督が求めるボランチ像が浮かび上がってくる。(取材・文:河治良幸)

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 今月11日の親善試合・オマーン戦と15日のアジア最終予選・サウジアラビア戦に向け、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は25人の選手を招集した。そのうち4-2-3-1のボランチを本職とする選手は4人。

 長谷部誠(フランクフルト)と、山口蛍(セレッソ大阪)、永木亮太(鹿島アントラーズ)は前回と同様だが、柏木陽介(浦和レッズ)と大島僚太(川崎フロンターレ)が外れ、井手口陽介(ガンバ大阪)が加わった。

 そのボランチについて取材陣から「ゲームメーカーを呼ばないで、永木、山口、井手口と似た様な選手を3人も呼んだ理由を教えてほしい」という質問が出た。記者のイメージしていたゲームメーカーとは柏木や大島、少し振り返れば柴崎岳の様な選手だろう。確かに大きな意味で、そうした分類に入る選手がこれまで少なくとも1人は入っていた。

 その意味では質問そのものに不自然さは無いが、ハリルホジッチ監督は“似た様な選手”というところに異論をとなえる形で回答した。中盤にオフェンシブとディフェンスがあることを前置きした上で「永木は長谷部と同じく試合をコントロールするイメージだ。そして井手口と山口というタイプがいて、少しオフェンシブに働きかけることができる」とハリルホジッチは語る。

「井手口の最近の試合を観たと思うが、1点素晴らしいゴールを決めた。(前日の川崎フロンターレ戦で)GKの弾いたボールに対して、16メートルの中に走り込んで決めた。これはかなり良いことだと思う。永木や長谷部と補足関係にある選手を見つけなければならない。山口がイラク戦でゴールを決めた。彼は前に行くことができるクオリティを持った選手で、点を取ることもできる」

バランスワークか積極的な攻撃参加か

 つまり今回のボランチでもバランスワークに優れる長谷部と永木、攻撃面で前に出ていくことができる山口と井手口という分け方になり、指揮官の言葉通りならば2つのポジションは基本的に長谷部か永木、山口か井手口という構成になる。基準がゲームメーカーかどうかではなく、バランスワークか積極的に前に出て行くタイプかで、その意味では長谷部と山口はもちろん、永木と井手口も別のタイプということになるのだ。

 攻撃的MFの1人として呼んだ小林祐希も「少し低い位置でプレーしている」と指揮官が認識する通り、ヘーレンフェーンでボランチのポジションをこなしており、課題としてあげられていた運動量や規律に向上が見られる。

 状況に応じて、このポジションで起用するプランもあるのかもしれないが、ボランチの選手に共通して求められるのは中盤でボールを奪える能力。そこからバランスを取るのか、前にボールを運んだりゴール前に飛び出したりするのかの違いはあるが、この最終予選を戦う中でそうした方針がより高まっているのは確かだ。

 ゲームメークを強みにするだけではハリルJでは居場所が無いと言えるかもしれない。とはいえゲームメーカーだから除外されるという意味ではない。ただトータルの基準として、まず求められるスタンダードに中盤でボールを奪う能力があり、さらにバランスワークと縦の攻撃力という部分で補足関係が成り立つ。

 それらにゲームメークが得意であればプラス要素になりうるが、長短のパスを散らしながらボール保持率を高める選手は求められていない。

ハリルホジッチがボランチに求めるスタンダード

 ボールを奪い、攻撃を縦にスピードアップさせる流れを効率的にできる選手が基準であり、そこに攻撃面の特徴が加味されて組み合わせが決まるということだ。本質的にゲームメーカーであっても、指揮官の要求するスタンダードをまずクリアできなければメンバーに残っていけない。

 そして攻撃もベースは縦のスピードアップだ。もちろん何でもかんでも縦に攻めるということではなく、縦志向の攻撃という意味だ。そのコンセプトを外すことなく、時にタメや揺さぶりを入れていくなら許容範囲だろう。しかし、ベースではないのだ。

 これまでの構成では“デュエル”を発揮してのボール奪取や攻撃における縦のスピードアップなど、ボランチで優先的に求められるスタンダードの部分に国際基準で課題がある。バランスワーカーの長谷部や永木との補足関係を引き上げる意味でも、今回は井手口にチャンスが与えられるということではないか。それはアジア最終予選を戦いぬくことはもちろん、世界を見据えたビジョンである様にも思われる。

 オマーン戦は高い位置で試合を進める時間が長くなるだろうし、サウジアラビア戦でも主導権としては日本が握るかもしれない。高い位置から攻撃を仕掛けるシチュエーションは多くなるが、ボールをワイドにつなぐところは基本的に吉田麻也らバックラインが担うことになるだろう。

資質を評価されている井手口

 柏木の相手ディフェンスの裏に正確なボールを入れるセンスや正確なサイドチェンジは日本に攻撃の幅をもたらしてくれるし、大島のスルーパスやタイミングの良いミドルシュートは確実に武器になるものだ。

 もちろん状況によってビルドアップから変化を加えることが有効にもなるわけで、それらの能力を備えることが邪魔になることはない。ただし、その前に要求されるスタンダードを満たし、その上に得意なプレーを効果的に加えられる選手でなければ代表に残っていけない。

 大島は左ふくらはぎの負傷でこの2試合を欠場しており、柏木もここ最近のコンディションが評価に影響している部分もあるかもしれないが、最終予選を戦う上で攻守に課題があることは確かだ。

 井手口についてハリルホジッチ監督は「前に行くことができるクオリティを持った選手で、点を取ることもできる。井手口は毎試合どんどん伸びている。ボールを奪ってからつなぐパスも、背後へのパスも良い」と評価しており、20歳という若さから将来性も見込んでいることを明らかにしている。もちろん今回の選考をもってボランチの序列が決まったわけではないし、井手口も現時点で資質を評価されているにすぎない。

 ただ、今回は親善試合のオマーン戦があり、そこで規定通りなら先発と途中で最大17人の選手をテストすることができる。そこからコンディションの良い状態でホームのサウジアラビア戦に臨めるという最終予選の中では理想的なスケジュールであり、井手口にとっても、他のポジションのフレッシュな選手にとってもチャンスであることは間違いない。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸