『THE ALCHEMIST』パウロ・コエーリョ著/講談社英語文庫 本体価格780円+税

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本屋の棚に並んでいる英語のテキストはどれも無味乾燥でつまらない……。そんな不満を持っている人におすすめなのが、自分が好きな小説やマンガの英語版。それなら面白くて勉強が一気にはかどるだろう。

■斜め読みでもOKリズミカルに

「ワクワクしながら本を読んでいるうちに、英語がマスターできた」――。そんな勉強法があるのなら、試してみたいと誰もが思うはず。ましてやその“本”が自分の大好きな「小説」や「マンガ」であれば、がぜん興味が湧いてはこないだろうか。

まず、好きな小説で英語を学んだのが、研修講師の鈴木マグラクレン美保さんで、愛読書は世界的なベストセラー、『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著)だった。

「『All things are one(すべてのものは一つ)』など、人生に対する哲学的な表現がたくさん出てきます。そんな自分が感動するフレーズに出合ったら、それを紙に書いて、壁に貼っていました。自分が好きな言葉なので、覚えも早くなります」

実は、鈴木さんはオーストラリアでのワーキングホリデーの経験があったものの、思ったほど英語が上達しなかった。帰国後に受けたTOEICのスコアは745点で、海外赴任者向けの研修の仕事に就いてから、英語の勉強と真剣に向き合うようになったという。

「そうしたなか、以前に翻訳版を読んで感動した『アルケミスト』を思い出して、英語版を購入しました。平易で読みやすい単語や熟語が多いことが、この小説の特徴です。また、同じ表現が繰り返し出てきて、自然と頭に入ってきます。あるページには『as if〜(まるで〜のように)』が3カ所、『know how to〜(〜するにはどうすればいいのか知っている)』が2カ所も出てきて、すぐに重要な表現なのだと理解できます」

鈴木さんの場合、知らない単語が出てきても、その都度辞書で調べることはしない。日本語の小説を読むときも、辞書など引かず、それこそ“斜め読み”でも大意は掴める。楽しくリズミカルにが、鈴木さん流勉強法のポイントの一つなのだ。

視覚から情報が入ったほうが覚えやすいという人もいれば、聴覚のほうが記憶に残って情景が浮かびやすい人もいる。もしも後者なら、オーディオブックの併読ならぬ“併聴”もおすすめと鈴木さんはいう。

「その際に大切なのは、シャドーイングをすることです。これをやると英語特有の口の筋肉も鍛えられます。また、SNSで同好の士を探し、共通する愛読書の内容について英語を使って盛り上がれば、アウトプットのトレーニングにもなります」

そうしていくことで鈴木さんのTOEICのスコアは、なんと925点に伸びたそうだ。

■全127話読めば単語は12万語以上

「英語に対するコンプレックスを克服しようと、大手の生保勤務時代にありとあらゆることに挑戦し、挫折を繰り返してきました」と、苦い経験を語るのは評論家の中村一也さんだ。しかし、いまでは中村さんは、『僕が無料の英語マンガで楽にTOEIC900点を取って、映画の英語を字幕なしでリスニングできるワケ』の著者でもある。

「2年前の27歳のとき、30万円を払って英会話学校の門を叩きました。初回にネーティブの講師と会話をして自分のレベルを試されるのですが、まったく話せずじまい。それがトラウマとなって、その後は一度も通うことなく、お金をドブに捨ててしまいました」

映画のDVDも試した。英語の字幕を付けずにリスニングをしたが、聞き取れないのか、知らない単語なのかさえわからない。そこで字幕付きでも挑戦したものの、効果音だけで会話がないシーンも多く、勉強としては効率的ではなかった。

次に、シャーロック・ホームズをはじめとする推理小説を原書で読んでみた。しかし、出てくる語彙が難しい。読むのに時間がかかり、内容の核心部分に到達できず、途中で放り出してしまう。それならば語彙力を付けようと、単語帳とにらめっこしたが、苦痛で仕方がなかった。

そして、そんな試行錯誤を1年間繰り返した末に出合ったのが、タブレットを使って無料で閲覧できるマンガアプリにあった、累計1000万部の大ヒットマンガ『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰作)の英語版だった。

「もともと日本人向けに書かれたマンガなので、物語の背景を理解しやすく、スムーズに感情移入できます。しかも内容が感動的で濃いため、読んでいくうちにストーリーにのめり込み始めます。ふと我に返ると、英語でエンターテインメントを楽しむ自分がいました」

いまでも中村さんは、ガンにかかった母親が子どもに「お母さんね……」「もうすぐ死ぬの……」「約束して……」「強く生きて」という第76・77話のクライマックスのシーンになると、電車のなかで人目もはばからずに泣いてしまうそうだ。

 

そうやって英語版『ブラックジャックによろしく』の全127話を読破して中村さんが気付いたのが、そこにある英単語の多さだった。

「1ページ当たり平均して50語の英単語が飛び交い、1話が平均20ページとして、1話で1000語の英単語に触れられます。しかも、全127話を読破すれば、12万7000語にもなり、ちょっとした英語の小説を凌駕してしまいます」

さらに、マンガによる理解の手助けもあって、1分当たり約100語のペースで読み進められるのもありがたい。10分で20ページある1話を読み切れる。これが小説になると、そうはいかない。1ページ当たりの英単語の数は約500で、同じペースで読むと、進むのはたったの2ページ。結果、話が中途半端に終わって、次第に読む気が失せていく。

「英語の勉強は継続が大切です。マンガには1話ごとに起承転結があって、読者を飽きさせることがありません。また、次回につなげる工夫もあって、長続きしやすいんです」

中村さんの場合、わからない単語があると、ネット検索で語源まで調べた。たとえば「Centipede」の語源は「cent(百)」と「pede(足)」で、意味は「ムカデ」だ。こうすると語彙力が飛躍的にアップするそうだ。

また、同時並行で『CNNリスニング・ライブラリー 世界のトップ経営者に聞く!』を何度も聞き、ネーティブの発音の仕方を独自に研究した。「機能語よりも内容語にアクセントを置くルールなどを身につけられました」と中村さんは言う。

結局、マンガの読破を始めてからなんと半年で、中村さんもTOEIC900点台をマークした。

(吉田明乎=文)