本体から独り歩きするスタンド達


スタンド、それは生命エネルギーが作り出すパワーある像。そばに立つというところから、その像を名付けて「幽波紋」(スタンド)! そんなジョセフの定義からはみ出してるのが、今回のスーパーフライを初めとする「独り歩きするスタンド」達だ。


スタンド使いの意思に関係なく動き、ときに本体を害することもある。極端なものは本体の死後も勝手に動き、あるいは他の人間に取り憑く。なんだか悪霊みたいだが、生霊と残留思念の違いかもしれない。

第三部で承太郎の母・ホリィさんを苦しめたのも、広い意味での「独り歩き」タイプだった。ジョナサンの身体を乗っ取ったDIOの影響により、そのひ孫であるホリィさんにもスタンドが発現。しかし本体の精神力が弱く、制御できずに暴走したら茨のスタンドが身体を蝕んだのだ。

その次が、エジプトで襲いかかてきたアヌビス神。本体は500年前の刀鍛冶の男で、スタンドのみが刀身に宿った「妖刀」だ。はじめ牛飼いの青年・チャカに抜刀させ、チャカが倒されると床屋の主人を操り、ポルナレフを圧倒するもスタープラチナの真剣白刃取りに敗れた。が、折れた刀身がポルナレフの身体を乗っ取る恐るべきしつこさ。一度戦った相手の動きを完璧に覚えてパワーアップし、承太郎をギリギリまで追い詰めたスタンドだ。

今回のスーパーフライも「絶対に負けない」という意味での無敵さはピカイチ。スタンドが手強ければ本体をぶん殴ればいい……という定石が通用しないから厄介だ。ただ、「本体の意思で操れない」ためゲームに出しにくく(アヌビス神を除く)そちら方面では不遇ではある。

3つの話が同時進行する面白さ


「7月15日(木)その一」。原作にはないサブタイトルで、日付も明記されたことはない(はず)。あえて特定の日にちを出した理由は「1日に起こる3つのエピソードを同時進行、ないし切れ目なく繋げること」だろう。

スピード感を加速する一方で、残り8話を切った中で「尺を詰めていく」ことも兼ねてるはず。面白い構成だが、文章でまとめるレビュアー泣かせではある。いや、どんどん泣かせてください!

7月12日(月)17時05分

「そうだ。洗い出すのはここ最近の行方不明者だ。家出も含めてな」

吉良吉影の探索につき、承太郎とスピードワゴン財団とのやり取りはアニメオリジナル。原作では「財団は何をやってんの」だったが、縁の下の力持ちにスポットが当たるうれしさだ。

「吉良は隠れておるんじゃろ?そんな状態でまた殺人をすると思うか?」
「ああいった連続殺人をする人間の衝動は簡単に抑えられるものじゃない。必ずまたやる」

ジョセフのもっともな推理と、生物学者らしい反論をする承太郎の洞察力。徐々にジョセフがボケから回復している過程も、アニメ版の見どころだ。

その頃、仗助や康一くん、億泰達は「何かわかったら動いてもらうから、それまでは学生は学生の生活してろってさ」と承太郎の指示に従ってコンビニ前で駄弁り。「俺は勉強より吉良探しやりてぇけどな」という億泰、ブレないな!

その頃「火事の修繕をするついでにリフォームもしたいんだ」と電話する露伴先生。その手元には、杜王町駅前で撮った大量のサラリーマン(被疑者)写真。よく見ると、吉良の元同僚が混じってるのが芸コマだ。

「おのれ〜写真を撮ってまで探してやがる」

写真を覗き込む写真のオヤジというシュールさ。息子を守りたい父親が街を飛び回ると、見覚えのある「指の爪」に再会する。原作にはなかった、吉良とオヤジの合流シーンだ! 二人を引き合わせたのは親子の絆か、「スタンド使いは引かれ合う」法則なのか。吉良をカメラで盗撮している川尻早人も含めて、ラストステージの役者は出そろった。

「鉄塔に住む男」の罠にかかった仗助


7月15日(木)07時50分

「遅れそう!日直当番なのに!」

爽やかな朝(空は黄色いが)、康一くんが急いで走り出す。「あの事件」が「あの時間」に起こるためには、スタート地点はここでなくっちゃいけない。原作を読んでない人はよく分からないはずだが、後から録画などで振り返ってもらいたい。

街外れに咲く一面のひまわり畑。承太郎が第一話でタクシーの中から眺めていた風景だ。そこに落ちていた双眼鏡を拾おうとした億泰だったが、仗助はバッチいから拾うな!と止める。すると、バッチくなんかありません!と変身を解いて、双眼鏡から人間へと戻る宇宙人ことミキタカ。原作では「久しぶり」だったが、ペースの早いアニメ版は「また会ったな」だ。

双眼鏡に化けていたのは、目の前の送電の鉄塔を二人に見てもらいたかったから。杜王町が宅地開発されたときにケーブルが地下に埋められたため、いらなくなった鉄塔だ。この話、実はレッド・ホット・チリ・ペッパー戦で鍵となった「地下ケーブル」と繋がっていたりする。

鉄塔の真ん中あたり、地上20mに出ている煙の正体はヤカン。ちょっと上には男が一人いて、生活している!  川魚を釣り上げてフライパンに直接キャッチ、洗いもせずにキュウリと一緒に料理していて、衛生的なサプライズ(心配)もあり。

真下には魚の釣れる川、鉄骨には茄子やキュウリなど野菜も成り、鉄塔は自給自足できる場所だった。「世の中ずいぶん変わったことやる人いますねーっ」というミキタカ、双眼鏡に変身してた君が言うなよ!

よろめいて鉄塔から落ちかけた謎の男。そのとき、足の下から飛び出したボルトに乗って飛んだ!  杜王町では変わった行いをすると「新手のスタンド使い」扱いされ、すぐ主人公が動き出すので話が早い。

「この私に興味を持ったかな?おいでよ。久しぶりに他人とお話しできる」

仗助達の敵となる謎の男だが、この言葉は涙を誘う。鉄塔に引きこもり、ずっとお話できなかったぼっちスタンド使い……。

7月15日08時05分。

「な……何か用ですか?」

家を出てから15分後、康一くんに話しかける褐色の肌の少年。ああ、二回まばたきしてしまった康一くん……。この時点ではネタバレできないのが辛い。

7月15日 08時11分

「そこで止まれ!お前らこの鉄塔にそれ以上近づくなよ!」

トイレに腰かけて、じょうすけ達に後ろに下がれと注意する謎の男。上から下にモノが落ちる万有引力の法則、こりゃもしかして……。

「だから言ったじゃあないか。フンニョーがぶっかかるよ」

トイレは水洗式で、地面に生えてる野草に肥料をやるためにわざと撒かれていた。ツユクサ、ヤマウドにオランダガラシ。それを食べにやってくる野うさぎも捕まえられて一石二鳥のエコ生活、ちょっと憧れる。

鉄塔は、男が電力会社から10万円を払って買った「家」だった。自給自足だから会社勤めをしなくてもいいし、鉄塔を移動するだけで運動不足にはならない。雨水を蓄えた水道管もあり、お湯や電気はソーラーシステムで賄う。空中には野菜畑もあり、雨や寒い日は防風防水シートもあり。一応リビングルームもあるが、ネット環境がなさそうなので筆者には無理です(感想)。

謎の男は鉄塔に住んで3年、地面に降りてないだけなら一ヶ月という。写真のオヤジが暗躍を始めた時期と計算が合わない気もするが、もっと昔に出会っていたのかも。

「お…おい仗助。杜王町にこんなアホがいるとは気づかなかったな。こいつただの変人野郎だよ。敵じゃあねぇよ」

億泰にアホと言われたくない!  ミキタカの「変わった人」といい、今回はブーメラン発言がやたらと多い。

7月15日(木) 10時15分

半焼した家のリフォーム見積もりを電話してから3日後、写真の中で柱の陰に隠れてビデオを撮影している少年に気づいた露伴先生。

「川尻早人か……こいつ何か気になるな」最重要の手がかりに気づいた露伴先生、「君のようなカンのいいマンガ家は嫌いだよ」と言われそうな有能さ。そのために、インターホンの向こうに来てはならない人物が……。

7月15日(木)07時33分

時間が巻き戻った? 時系列順ではなく、かなり入り組んだ再構成がされていて驚きだ。なにげに朝帰りしている仗助の母、東方朋子。声が豊口めぐみさんから伊藤静さんに交代してるのは、豊口さんが産休のため。

冷蔵庫に残されていた、かじりかけの鎌倉カスター(鎌倉みやげの定番)。行儀の悪い仗助の仕業かと思ったら、静まり返った家の中に誰かの気配が……。ここまで気を持たせて、次の場面に移るのがホラーっぽい。

7月15日(木)08時14分

鉄塔の男のポケットから、わざとらしく落ちる何か。「もう帰ってくれないか? 拾ってくれなくていいよ。後で私が拾うから……」という写真からは、吉良の幽霊オヤジが顔を出していた!

まんまと鉄塔の中に入ってしまった仗助に「人は入れというと用心して入らない!入るなと言うとムキになって入ってくる!」と勝ち誇る鉄塔の男=鋼田一豊広。いやアンタの前フリよりも、写真のオヤジの引きが強いよね。

理由はどうあれ、鉄塔の中に誘い込まれた仗助。急いで出ようとすると、外に出た身体の一部が鋼に覆われて、鉄塔に取り込まれかけてしまう。ひとり入ると次の誰かが入ってくるまでは外には出さない、それが鋼田一豊広のスタンド、スーパーフライ!

エネルギー保存の法則、恐るべし!


「俺のスタンドって言ったけど、スーパーフライは俺の手に負えるスタンドじゃあなくってね。独り歩きしてるスタンドなんだ」

鉄塔のワイヤーを伝って外に逃げ出しながら、うそぶく鋼田一。威張って言えるこっちゃないが、同情の念も湧き上がる。弓と矢に貫かれて生死の境をさまよって、発現したスタンドに閉じ込められちゃなあ……。原作ファンの間でも「ほしくないスタンド」ナンバーワンだ。

何か私にできることはあるでしょうか?と申し出るミキタカに、「ケガするからすっこんでろ。おめーの役目はもう終わったんだ」と断る億康なりの優しさ。邪魔な鉄塔を前にした仗助と億泰、荒っぽいことは任せとけコンビのやることはただ一つ。

「おめーだってやる気だろ。こんな鉄塔が何だっつーんだよ。ブッ壊すぜ仗助!」
「ああ。ブッ壊して出りゃ問題はねぇな!」

クレイジー・ダイヤモンドとザ・ハンド、第四部ただ一回きりのダブルラッシュ! 鉄塔の柱めがけて近距離パワー型2つによる渾身の乱れ打ち。ザ・ハンドはガオンと削っとけよと思わなくもないが、後のことを考えるとやらなくて正解だったか。

鉄柱はボロボロ、あと何回か繰り返せばブチ折れる--そんな脱出プランを、3年も暮らした鋼田一が考えなかったわけがない。鉄塔はパワーを吸収して鉄塔全体に効果的に散らしていたのだ。

「そしてよく考えろよ。エネルギー保存の法則ってのがあるよな。駆け巡るパワーはどっかに逃げていかなきゃあ駄目なんだぜ」

撃てば撃ち返され、切れば切り返される。僕らの知ってるエネルギー保存の法則と違うが、スタンドのある世界のジョジョ物理学と割り切ろう。削ったら削り返される、ガオンしなくてよかったな億泰。

全ての攻撃は返されるから、どんな能力を持つ奴でも鉄塔を破壊できない。本体の鋼田一を倒しても、スーパーフライは誰かを永遠に閉じ込め続ける。どうしても仗助が出られない状況で、腹をえぐられていてヤバい億泰。また近い将来、腹をえぐられるんじゃよ。

「でもそう深刻に考えるなよ。代わりの誰かを引っ張りこめばいいんだよ。一人入れば一人出れる。誰か他人にカス掴ませて自分だけ出れば助かるじゃあないか」

ゲームのババ抜きみたいなもの、人間社会と同じだという鋼田一。確かに、代わりの誰かを引っ張り込めばいい……としゃべる、ワイヤーに化けていたミキタカ。宇宙人が役に立った!

「なんだてめぇは!なんで電線に!いつからいるんだ!なんだこの能力は!」
「よくぞ聞いてくれました。実は私宇宙人なんです」

それ、答えになってない!  しかし、ミキタカが身代わりになったおかげで仗助は脱出でき、億泰の傷も治せるのだった。

「わたし宇宙人だからババ抜きってゲーム知らないんですけど、いきなり騙して仗助さんにもう外に出れないって……まるで正月に子供騙して大人がゲームに勝つみたいじゃあないですか」

筋を通していてアツいが、どこかおかしいミキタカの正論。ババ抜きは知らないくせに、正月の風物詩を知ってる宇宙人ってキャラ設定が崩壊してませんか。

鉄塔の中に引き戻そうとするミキタカに、手のひらのデカいタコからカッターを取り出す鋼田一。ミキタカが化けたワイヤーを刃で切り裂いた……つもりが、実はただのワイヤーだった。

騙し合いはミキタカの勝ちかと思いきや、ワイヤーも「切ったら切り返される」鉄塔の一部だ。切り口の角度も計算され尽くしていて、反撃エネルギーに胸を貫かれるミキタカ!

胸から大出血するミキタカに脱出しろという仗助だったが、鋼田一は「いいや出さん!」と追い打ち。方向・角度よし!  打ち込んだボルトの反撃エネルギーが発射されて鋼田一の服を切り裂き、「何度も訓練した」傷がむき出しになる演出がカッコいい。ボルトの形になったエネルギーでミキタカを鉄塔に磔にして、ゆうゆうと脱出する鋼田一だった。

「てめぇ!外に出たってよ!逃げられると思ってんのか!地の果てまでてめぇを追ってやるからなコラァ!」

「逃げられるさ。簡単にな。おめーらは吉良吉影だってどこ行ったか見つけられねぇんじゃねぇのか?」

その言葉は事実であり、あまりに重い……。

7月15日(木)10時24分

岸辺露伴宅に知らない男が訪問。

7月15日(木)08時14分

謎の少年に出会った9分後、光一くんのカバンだけが放置される。

7月15日(木)10時38分

吉良吉影が会社で経理のお仕事。同じ時刻、息子・川尻早人は学校で授業を受ける。

時系列のもつれがカオスを深めながら、次回に続く!
(多根清史)