HoloLensで戦車内から周囲を見渡せる360度ARシステム、ウクライナ軍が開発。自動標的補足機能やナイトビューなども搭載

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戦車は内部の乗員を保護するために厚い装甲に覆われており、それが逆に乗員の視界を奪うというジレンマを抱えています。そのため、第二次世界大戦以前の戦車は戦車長がハッチから身を乗り出して乗員に指示を出したり、潜望鏡式の小窓から外を確認しつつ走行、戦闘していました。

現代の戦車は外部にカメラを装着し、その映像を見ながら操縦できるようになっているものもあります。ただやはりカメラの視界は狭く、充分に周囲を見渡せるわけではないようです。

ウクライナ軍は戦車の視界をまるで外にいるのと同じように確認可能とするために、マイクロソフトのARゴーグルHoloLensを使い、車内で戦車長が頭を動かすだけで周囲を確認できるシステムを開発、10月11〜14日にキエフで開催した「Arms and Security 2016」で公開しました。現代の戦車はデジタル化も進んでおり、車内から外部を確認するためのカメラ/モニターシステムを搭載しているものもあります。自衛隊の10式特車においても、操縦士はモニター映像を見ながら走行することが可能であり、射手にはハイビジョン対応の照準モニターが搭載された車体も存在するとされます。

ウクライナLimpid Armorは、カメラ/モニター方式をさらに現代流にアレンジし、遅延なしで周囲を360度見渡せるシステムを開発しました。乗員はマイクロソフトのHoloLensとヘルメットを組み合わせたCircular Review System (CRS)を装着し、まるで車外にいるかのように周囲状況を目視確認できるとのこと。

 

 

CRSでは、HoloLensの半透明ゴーグルによって車内の状況と外部の状況を同時に確認するMixed Realityを乗員に提供します。さらにゴーグルには赤外線による360度映像も表示可能で、月明かりすらない夜間の使用にも威力を発揮します。また、AR映像には敵または味方を自動的にハイライトして見分ける機能や、自動標的トラッキング機能なども備えています。

一時期は情報化を進めある程度の火力と機動力を兼ね備えた装甲車が戦車の地位を脅かしたこともあったものの、最近の主力戦車では情報化と機動力をバランス良く備えており、さらに車輌間通信の向上によって複数の敵の位置を瞬時に共有、センサーで補足した標的から照準を外さずに高速移動するといったことも可能となっています。

こうしたネットワーク化された戦車隊の戦車長が360度のAR視界を手に入れれば、いまよりも素早い索敵、状況判断と攻撃精度の向上といった効果が見込めそうです。

Limpid Armorは、Arms and Security 2016でCRSのデモを披露してはいたものの、実際の演習などではまだこれをテストできていません。ただ、ロシアによる強硬なクリミア半島の併合を境に緊張が高まっている情勢もあり、ウクライナ軍は早期にCRSの実地テストを進めたいものと考えられます。