北朝鮮当局は、今年8月末の台風10号(ライオンロック)で甚大な被害を被った咸鏡北道(ハムギョンブクト)の被災地で、住民登録の大々的な調査に乗り出した。

中朝国境では、水害によって多くの国境警備設備が破壊され、そのすきを突いて大勢の脱北者が発生しているという情報に基づき調査に乗り出したようだ。

多数の死者、行方不明者が発生

現地のデイリーNK内部情報筋によると、被災地の一つ、延社(ヨンサ)郡では、保安署(警察署)が先月29日から被災地での調査を始めた。

村を流れる川の上流にある貯水池が、増水により耐えきれなくなったため、事前通告なしで放流を行なった。そのため、川沿いの家や畑が流され、大勢の死者、行方不明者が発生している。

行方不明者の中には、水害ですべてを失い、他地域に住む親戚の家に避難している人もいるが、当局は所在の把握ができていない。

当局は現地での調査を行うと同時に、被災地外でも被災者の有無の調査を行っている。人民班(町内会)の班長が一軒一軒訪ねて、住民の数を確認するというものだ。

水害被害者について北朝鮮メディアは6万8000人としているが、韓国の世宗研究所の推測では最高で30万人に達すると見られている。一軒一軒訪ね歩くという悠長なことをしていては、いつまで経っても結果は出ないだろう。

大量の死者、行方不明者、国境警備設備の破壊、のらりくらりとした調査。情報筋は、これらの状況が脱北のチャンスを生み出しているとして、次のように語った。

「死者、行方不明者があまりにも多い上に、間違いも多く、完璧な調査は無理だろう。また、損傷が激しく身元の確認ができない遺体も多いので、死んだことにしてもらえれば、脱北しても追手は来ない」

死者になりすますというミステリー小説のようなことが行われているようだが、詳しい手法について情報筋は言及していない。続報が待たれる。