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幹線道路や線路の近隣の住人は住み始めた当初、その騒音にさぞかし驚いたのではないだろうか。住み続けていると、意外と気にならなくなる人もいるかもしれないが、その騒音が肥満や脳卒中につながりかねないとしたらどうだろうか。

海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「騒音が心身に与える悪影響と対処法」に関する研究を紹介するコラムが掲載された。騒音は単に腹立たしいだけではなく、実際に健康を害するものだ。世界保健機構(WHO)によると、騒音は公衆衛生喫緊の問題でストレスや睡眠障害、心臓疾患、脳卒中、肥満などの原因になる。

近年は「静寂」の重要性が認識されるようになり、「サイレント・デート」「サイレント・ディナー」「サイレント・ブック・クラブ」などが人気上昇中。家電用品も静かなものがよく売れているとのこと。言い換えれば、それだけ日常が喧騒に満ちていることを意味するわけだが、騒音下にさらされる状況が続くと、健康に弊害をもたらすストレスホルモンの「コルチゾール」を私たちは生成するようになる。そしてコルチゾールの生成レベルが高くなれば、過敏性腸疾患や睡眠障害、頭痛、不妊症、高血圧を引き起こすこともある。

30年以上にわたり、騒音の健康への影響を調べてきたイギリスの著名な騒音専門家・Stephen Stansfeld氏は、「長期的に騒音にさらされている場合、血圧が上昇します。高血圧は心臓病や脳卒中の大きな危険因子です」と警鐘を鳴らす。

空港や大通りの近くに住んでいる人は、脳卒中や心臓疾患に罹患(りかん)して早死にする傾向があることをデータも示唆している。20年以上のリサーチの結果、騒音が10デジベル増えるごとにこれらの疾病リスクが7〜17%高まることが判明。WHOも、55デシベルを超える騒音に長期間さらされると高血圧と心臓発作を誘発すると警告している。人の会話や、中程度の交通量がある場所の騒音が55〜60デシベルと言われているので、その程度の騒音でもリスクが高まることを意味している。

その他にも、騒音がもたらすデメリットは多々ある。会話程度の騒音がある事務所ですら、女性は静かな場所にいるときよりもストレスホルモンであるアドレナリンが多く生成される。さらにひどくなると、やる気をなくしやすくなるという。

飛行場の近隣など、騒音がひどい環境下で育った子どもは、そうでない子どもと比べて読解力や言語能力、記憶力が有意に劣るなどとする研究も20以上ある。体内でコルチゾールが大量に生成されて前頭前野の機能がマヒし、物事を考えたり情報を記憶したりすることが難しくなるためと考えられている。

また、騒音は肥満をもたらすこともわかっている。あるスウェーデンの研究によると、45デシベルを超えると5デシベル大きくなるごとにウエストが2mmずつ増え、飛行経路の下に住んでいると、肥満になるリスクが2倍になるという。

このような騒音に対抗するためには、静養や外出がよい。例えば、「毎朝起床後に30分間は沈黙した状態でいること」は理想的な対処法と考えられている。時間がなければ、10分間やるだけでも違うとのこと。

また、自然がある場所への外出はストレスホルモンを減らし、血圧を下げるといった効果があることが研究で証明されている。職場でおしゃべりな人たちに囲まれて働いている人は、緑のある場所でランチをするなどの工夫をしてみてはいかがだろうか。

※写真と本文は関係ありません

○記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。

(杉田米行)