相手の本音は、別れ際の微表情に表れる!?

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 終電間際の駅の改札口で、上司と部下らしき女性が帰りの挨拶を交わしています。上司も部下の女性も、ほろ酔い気分、上機嫌でニコニコしています。

部下:今日はごちそうさまでした。凄く楽しい会でした。これからもどうぞよろしくお願い致します。
上司:ああ、○○君も頑張ってくれ!
部下:はい、それでは失礼します。

 と部下の女性が上司を背にして振り返り、自分の進むべき方向へ歩みを進め始めようとしました。

 私の視点は、そのときの部下の表情にふと向かいました。そして部下の表情に上司と部下の人間関係の縮図を感じとったのです。なぜでしょうか?

「楽しかった」デート、「部下と打ち解けられた」飲み会、「成功しそうな」契約……お互いに交わされる言葉や表情、醸し出される場の空気感から、人間関係の明るい未来を想像した経験が誰にもあると思います。

 ついさっきまで、あんなに「微笑んで」談笑していたのに…別れ話を切り出される。この前は、あれほどまでに「腹を割って」話が出来ていたと思っていたのに……部下が陰で悪口を言っていた。

 先日は、「凄く良い取引になります!」という契約話だったのに……契約は破たん。

 これほどショックなことはありません。期待値が大きいほど、人間関係が上手く行っていると思っていればいるほど、それが逆転したときのショックは大きいものです。

◆別れ際の表情が物語る人間関係の未来

 一度でもこのような経験をしてしまうと、目の前の人を信用することが怖くなってしまう方もいるかも知れません。ニコニコしているけど、ホントはどう思っているの?という疑問につきると思います。相手の本音を察する方法は様々ありますが、別れ際の余韻からお互いの人間関係の未来を垣間見ることが出来ます。

 別れ際の余韻とは何か?

 表情の余韻、感情の余韻と形容してもよいかも知れません。「バイバイ。」「失礼します。」「引き続きどうぞよろしくお願いします!」と言って別れるとき、振り返る直前の相手の表情、可能ならば振り返った後の相手の表情をなんとか観てみて下さい。

 その表情が笑顔なら、両者の人間関係は明るいと言えるでしょう。しかし、真顔や軽蔑・嫌悪・怒りの微表情ならば、両者の人間関係には陰りが生じている可能性が高いと言えます。

 別れ際、先ほどまでの楽しい思い出が心を満たし、お互いニコニコしています。もしそれが自然な笑顔、心から生じている幸福な想いの表れならば、お別れを言って振り返ろうとしても、振り返っても、その想い、笑顔は残ります。

 自然な笑顔が顔から消えるプロセスというのは、ゆっくり、なのです。しかし、作られた笑顔や無理やり作った笑顔は、突然、顔から消えるのです。一度生じた感情は、身体全体に波及します。そしてその感情が表情に表れたり、ボディーランゲージに表れたり、声や言葉に表れたりします。身体全体が今・ここの感情を味わうのです。感情を味わい尽くした身体は、ゆっくりと平静な状態に戻っていきます。

 このようなプロセスを経るため、突然、笑顔が消えたり、さっきの「笑顔」が違う表情に突然、置き換えられたりした場合、さっきの「笑顔」は、作られた、その場の状況のために繕わられた笑顔と言えるのです。

◆冒頭の上司と部下の関係は?

 それでは、冒頭に挙げた部下らしき女性の表情はどうだったかと言うと……

 上司を背にしたときも、笑顔のままでした。部下の女性は、上司を背に歩き始めます。表情には笑顔の余韻が残っています。

上司:あ!○○君!これ忘れ物〜
部下:(笑顔の余韻を残した表情で上司の方を振り返り)あ〜ありがとうございます!完全に忘れていました〜(またまたニコニコ)

 なんと素敵なチームなのでしょう。

<文・清水建二/写真/ぱくたそ>
1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。