「Thinkstock」より

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 今回は、睡眠時無呼吸症候群のお話です。

 睡眠時無呼吸症候群のキーワードは、いびきと肥満です。太っている人が夜中にいびきをかいている状況では、呼吸が止まっているケースがあります。中枢性の睡眠時無呼吸症候群で、脳の呼吸を司るシグナルが不調になっています。しかし、これは希で、多くは閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。

 閉塞とは「詰まる」という意味で、息が通る道、気道が狭くなります。のど、はな、口、気管などです。肥満で気道が閉塞することが多く、昼間はなんとか息をしていますが、眠ってしまうと、気道を維持する筋肉が弛緩するので閉塞してしまうのです。そこで息ができなくなります。それでは苦しいので、呼吸停止の後に一気に息を吸い込みます。それがいびきとなって現れるのです。10秒以上の呼吸停止が1時間に5回で睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

 つまり約10分間に1回息が止まって、その後いびきが続くと睡眠時無呼吸症候群です。重症例では1時間に30回以上の呼吸停止があります。 そして慢性的な寝不足となり、昼間でも集中力が低下し、そしてちょっとの時間でも居眠りをするようになります。赤信号で車が停止中に寝てしまうとか、重要な会議の合間に寝てしまうとかです。命を預かる仕事では特に要注意な病気です。

●精密検査の重要性

 非常識君がこう発言します。

「肥満者が睡眠時無呼吸になるのだから、基本的に肥満者は命を預かるような仕事に従事させないことが大切だ。肥満は痩せることができるのだから、大切な仕事に従事したいのなら、痩せてから就業すればいい」

 すると極論君が反論します。

「肥満者でも睡眠時無呼吸症候群ではない人がいるのだから、肥満者という括りでまとめて『命を預かる仕事は不可』とするのは、フェアではない」

 そして極論君が追加します。

「肥満者以外でも、現代人に多い特にあごが小さい人は、気道閉塞になりやすく、睡眠時無呼吸症候群を患うことがある」

 非常識君は、「外見だけでは睡眠時無呼吸症候群かを正しくチェックすることはできないので、人の命を預かる仕事の人には、全員に睡眠時無呼吸症候群の検査を義務づけるべきだ」という意見です。

 簡単な検査は自宅で行えるもので、いびきの頻度を記録し、体の酸素濃度を皮膚から測定する機械(経皮酸素分圧測定装置)などを用いて、酸素の取り込み不足があるかをスクリーニングします。そして睡眠時無呼吸症候群が疑われるときには、一泊の入院をして、睡眠のステージや呼吸パターン、そして経皮酸素分圧などを調べます。確かに非常識君が言うように、命を預かる仕事の人全員に簡易検査を行い、そして異常を疑われる人には精密検査を科すことは理にかなっています。

●専門医の受診

 常識君が質問します。

「自動車の運転も、同乗者を含めて、歩行者などの命を預かっています。そうすると、自動車免許の取得時・更新時にも睡眠時無呼吸症候群の検査が必要になります。それではあまりに、範囲が広すぎないでしょうか」

 非常識君が少々トーンを下げて追加発言です。

「では相当な肥満の方、仕事中によく居眠りをする人、夜中にいびきを頻回にかく人などに、簡易検査を義務づければいいですね」

 確かにそうですね。すると常識君がコメントします。

「睡眠時無呼吸症候群は、200万人の患者がいるともいわれています。そして多くの人は気がついていません。一緒に寝ている人が、なんとなく変だと気がついていることはあります。そしてこの病気では、常時酸素が欠乏している状態なのです。つまり、泳ぎが上手でない人が、必至に溺れそうになりながら、息継ぎをして、沈まないようにがんばっている感じです。ですからいろいろな病気の頻度を増加させます。高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病になりやすくなります。

 また肥満が原因のひとつですが、睡眠時無呼吸症候群では太りやすくなります。がんの発生頻度も数倍になるという報告もあります。そして治療は、肥満者ではまず痩せることです。アルコールでいびきが増える人は、まずアルコールを控えることです。そして軽症ではマウスピースを作成すると息がしやすくなることがあります。酸素を十分に行き渡らせるという目的での究極的な治療方法はCPAP(持続的陽圧呼吸療法)というもので、睡眠時にはマスクを常時装着して、そして機械で空気を肺に強制的に送り込みます。こんな面倒なことをしても、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの場合は、快適な睡眠が十分に取れたと実感するのです」

 周囲に睡眠時無呼吸症候群と思えるような人がいれば、ぜひ専門医の受診を勧めましょう。本人はあまり病識がないことが多いのです。
(文=新見正則/医学博士、医師)