早ければ今年中にも発売されるというトヨタの新型プリウスPHV(PHVはプラグイン・ハイブリッド・ビークルの略)とは、簡単にいうと"外部からも充電できるプリウス"である。プリウスはもともと電気だけでも走行可能なので、うまく充電すれば、ガソリンを1滴も消費しない(=エンジンを回さない)ままで普段づかいできる......というのが、プリウスPHVの本質的なツボだ。

 もっとも、プリウスはもともと必要な電気をエンジンで自家発電しながら走るから、わざわざ外部から電気を取り込む必要はない。でも、外部充電だけで走ることができれば、クルマからは直接CO2を出さない、あるいは外部充電したぶんCO2排出がさらに減る......というのが、PHVが"ハイブリッドの次のエコカー"と一部で定義される根拠である。

 ただ、その外部電力を発電するときには、どこかでCO2を排出している場合もあるわけで、「PHVのほうがエコ」とはいいきれない。なのに、昨今の自動車メーカーがPHVに力を入れる最大の理由は、米欧を筆頭に、世界主要国の政府がPHVを強力にプッシュしていることが大きい。

 クルマの環境問題をつかさどる役所の本音は「1日も早く、クルマをすべて純粋な電気自動車(以下EV)にしたい!」である。クルマが全部EVになれば、CO2や大気汚染問題を、少なくともクルマからは完全になくすことができるからだ。先ごろのディーゼル排ガス偽装スキャンダルや、三菱の燃費偽装問題も、EVなら起こるはずもなかった。

 しかし、ご承知のように、今のEVがすぐに世界のクルマの主力になると考えるのは非現実的。なので、「せめて少しでもEVに近いPHVを......」と、現在の北米とEUはPHV推進にカジをきった。これまでのハイブリッドやディーゼルなど、燃費がいいだけ(!?)のエコカーは、今までのように優遇されなくなりつつある。

 プリウスPHVは今回で2代目だが、先代が実質的に「充電できる"だけ"のプリウス」だったのに対して、新型は充電できる"うえ"に「ちょっといいプリウス」になった。これなら、普通のプリウスより高くなってしまう価格も、まあ納得できないこともない。

 新型プリウスPHVは満充電EV走行距離が60km/h以上(先代はJC08モードで26.4km)になったことで、「日本の普通の自家用車ユーザーなら、日常的にほとんどガソリンがいらないかも!?」と素直に思えるレベルになった。しかも、普通のプリウスは2基のモーターを走行専用と発電専用で使い分けているが、PHVではEV走行で2基とも動力に使うことで、純粋なEVとしてもけっこう速いクルマになった。体感的にはあの日産リーフと同じくらい......ということは完全にEVとしても不足ない性能となった(走行距離は短いけど)。

 さらに、プリウスPHVは専用の大型バッテリーを後席背後(普通のプリウスのそれは後席下)に積むために、普通のプリウスより明らかに重い。もっというと、とくにお尻が重い。よって、全体に走りが重ったるいのは事実なのだが、足まわりを巧妙に調律して、その重さをギリギリいい意味で"重厚で高級"と思えるくらいにはしてある。

 内外装のデザインがより立派になっているのも、心理的にPHVを"普通のプリウスより高級"と思わせる効果があるし、そのPHV専用デザインも、斬新な2コブ形状のリアウインドウ(空気抵抗に効く)を採用したりしてインパクト大。しかも、そのデザインが良くも悪くも「普通のプリウスより一般ウケしそう」と思えてしまうのは、トヨタは「今後はPHVこそ本命!」と考えているんでは......とかんぐらせてくれるところもツボである。

 新型プリウスPHVにはもうひとつ、量産車世界初の画期的な技術がついた。それは、ルーフ上の太陽光発電で、わずかながらも走るようになったこと。先代プリウスにも太陽光発電のオプションがあったが、それは駐車時の換気専用......とギミック感が強かった。

 以前、某バラエティ番組で『ソーラーカーで日本一周』みたいな企画があったと記憶しているが、ハッキリいうと、あれは完全なフィクションだ。今の技術では残念ながら、太陽光発電だけで人間が乗った自動車を縦横無尽に走らせることは不可能である。

 今回のプリウスPHVも、1年間屋外駐車したとしても、合計発電量は走行距離にして1000km強くらいだとか(日本の平年の晴天率の場合)。太陽光発電ルーフはオプションになるそうだが、予測されるオプション価格を考えると、モトを取るのは不可能っぽい。

 それでも、わずかな距離だろうが「太陽光でクルマが走る!」を実現したことは快挙。それにシツコイようだが、PHVなので自宅だろうが会社だろうが、そこいらのEV対応駐車場など、日本中の津々浦々で充電可能(100V、200V、急速充電と国内すべての電源に対応)だし、もちろんガソリンを入れれば普通のプリウスなみの超低燃費車である。

 PHVが最終的に究極のエコカーかどうかは分からない。でも「どんなところからもエネルギーをもらうぜ!」という雑食の生命力が強そうなところは、今までにないツボだ。

【スペック】
トヨタ・プリウスPHV(プロトタイプ)
全長×全幅×全高:4645×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1510kg
エンジン:直列4気筒DOHC(1797cc)+モーター
最高出力:98ps/5200rpm
最大トルク:142Nm/3600rpm
変速機:無段階動力分割装置
JC08モード燃費:37.0km/L以上(目標値)
乗車定員:4名
車両本体価格:未定

佐野弘宗●文 text by Sano Hiromune