タカス / PIXTA(ピクスタ)

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「上司が自分の意見を取り入れてくれない」、「他の部との交渉がまとまらない」、「お客さまに拒絶されてセールストークが続かない」……マネジメントスキルやビジネススキルをその場で向上させる、分解スキル・反復演習型能力開発プログラムを実施していると、必ずといっていいほど相談を受ける内容だ。

 誰しも、相手の反論を収束して、自分の意見に誘導できたらと思うものだろう。そこで、「はい(同意)、おっしゃるとおり○○ですね。しかし(逆説)、□□なのです」という、同意してから反論する同意―逆説方式の応酬話法を学んだり、試したりしたことがある人も多いに違いない。

◆「応酬話法」は紛糾を収束しない

 しかし、試したことがある方は、実感していると思うが、この応酬話法、なかなか成功しない。結局、反対意見を突き合わせているので、応酬が応酬を生み、紛糾して投げ出したり、あきらめの境地に言ったりするケースがほとんどだ。

 もちろん、応酬話法自体も進化して、「同意―逆説方式ではなく、同意―同意―逆説方式で、前段の同意部分を十二分に行い、誘導しやすくする」、「逆説の部分を質問にして、同意―質問で柔らかに誘導する」などの方法も編み出されているが、限界がある。

 年間1,500名が参加する分解スキル・反復演習を繰り返し実施する中で、相手の反論を収束して、自分の意見に誘導する話法をさまざま試してきた。そして、最も効果の高いと参加者が実感する方法が浮き彫りになってきた。それが、結語転換である。

 結語転換とは、文字通り、結語を入れ替える話法だ。例えば、「その商品の質が高いのはわかるが、価格が高い」という反論を受けたとしよう。その反論に対して、前段と後段を入れ替えて、「価格が高いとお感じとはいえ、商品の質の高さに着目いただいているのですね」とリアクションする方法だ。日本語は、結論が文末に配置されるケースが多い。文末にきたフレーズは、次の話につなげやすい。この点に着目して、文末に、自分が誘導したいフレーズがくるように、言い変えるのだ。

 応酬が収束しないのは、相手が反論した領域で争うからだ。この例では、価格が高いか低いかを、いくら論争しても、相手が高いと思っていることを、低いと思うように、相手の考えを変えさえることは難しい。相手が応酬をやめたとしても、それは相手が考えを変えたからではなくて、応酬自体をする気持ちがないだけだというケースが実に多い。

◆結語転換で、賛同を得た領域をまな板にあげる

 見解の相違がある領域で言い合いをするよりも、部分的にでも、不十分でも、推測でも、賛同を得ているだろう領域でやりとりをした方が、はるかに容易だ。この例では、相手は「商品の質が高いのはわかるが」と言っているので、商品の質の高さに話を移行していけばよい。見解が一致している領域を、やりとりの土俵に上げて、賛同のレベルを確認していくのだ。

「価格が高いとお感じとはいえ、商品の質の高さに着目いただいているのですね」という結語転換を繰り出せば、まず、反対する相手はいない。商品の質が高いと言っているのは、相手の人自身であるからだ。少なくとも、そこで、「いやいや、とにかく価格が高いということが問題なのだ!」と切り返してくるなどの、明確な反論が返ってこない限り、その後、商品の質の高さでやりとりすることができる。そして、価格が高くても質が高いもの買いたいという気持ちに誘導していけばよい。

 ここまで紹介すると、必ずといっていいほど挙がってくる意見が、「結語転換は効果があるかもしれないが、相手の反論が、『○○は賛成だが、□□は反対だ』といいう『賛成―反対』文脈で語られる場合だけですよね」というものだ。