ピコ太郎「PPAP」と、世界的ヒット曲に共通点。ただの色モノじゃない

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 10月29日付のビルボードチャート77位にランクインしたピコ太郎の「PPAP」。さすがにロングヒットとはいかず翌週11月5日付のチャートからは姿を消しましたが、それでも快挙だったと言えるでしょう。

 ただ「何が面白いのか分からない」との声も根強く、作詞家の及川眠子氏は自身のTwitterで、「イミフだからこそ子供の心に刺さる。芸人の一発芸と同じ。うん理解できる、なんていうオッサンの方が胡散臭いよ(笑)」と、辛口のコメントを寄せていました。

 このように日本では“良い曲”というとAメロ、Bメロ、サビがあって、歌詞には起承転結があるものと思われがちです。でも、海外のヒットチャートを振り返ると、“ピコ太郎的”な一発芸は、そんなに珍しくないのですね。

◆メロディなし歌詞の意味なしで、大ヒット

 というわけでまず思い出すのが、男女混成のヒップホップグループ・Black Eyed Peasが2009年にリリースした「Boom Boom Pow」。グループの中心人物、ウィル・アイ・アムによれば、この曲のメロディには「1音(筆者註・ラの音)しか使っていない」というのです。

 にもかかわらず、「Boom Boom Pow」は2009年を代表する大ヒットとなりました。大切なことはビートのパターンであり、歌詞が何を言っているかではなく、バラエティ豊かな音の響きが楽曲を組み立てていく構造にあるのですね。

 それを分かりやすく見せるための「Boom Boom Pow」という無意味な擬音なのであって、その点が「PPAP」と共通しているのだと思います。

 そしてウィル・アイ・アムは、こうも語っています。

「そのうちヴァース・コーラス形式なんてものもなくなり、全体をコーラスとして扱う曲が主流になるだろう。それもせいぜい1分ほどの長さで、男女問わずキーの高低も関係なく歌える曲が売れるようになる」(「Rolling Stone」Web版、2010.4.29、筆者訳)。

 これって、まさにピコ太郎のことではないでしょうか?

◆言葉の意味よりリズムを優先する

「Boom Boom Pow」からさかのぼっても、同じようなヒット曲はあるのです。たとえば97年の大ヒット曲「MMM Bop」はまだメロディが主ですが、言葉遊びの楽しさがなければあそこまで売れなかったでしょう。

 93年のヒット曲「Whoomp!(There It Is)」は、一説には仲間内で流行っていた言い回しを曲にしただけなのだそう。でも23年経ったいまも新鮮に響きます。

 もっと最近で言えば、テイラー・スウィフトの「Shake It Off」だってひとつひとつのフレーズは驚くほど短いのです。それも全ては言葉を響かせるリズムパターンを優先しているためで、現代のポップスとは良かれ悪しかれそういうものなのです。

 というわけで、ロングバージョンなどと欲を出さず、ピコ太郎は1分のポップソングで燃焼しきってほしいと思います。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>