「復讐は10倍返し」が信条のトランプ、落選なら米国には何が起きる?

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ヴァージン・グループ創設者のサー・リチャード・ブランソンは10月21日、自らのブログで、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプに関する次のようなエピソードを紹介した。

ブランソンは数年前、それまで面識のなかったトランプに二人だけでの昼食に招かれた。マンハッタンにあるトランプ宅を訪れると、テーブルに最初の一皿が運ばれてくるよりも前に、トランプは少し前に破綻した自身の事業と、支援を求めた5人が要請に応じようとしない話を始めた。そして、「この先一生をかけて、5人を破滅させる」と語ったという。

借金を申し込まれることはなかったが、頼まれれば「きっと6人目になっていた」とブランソンは述べている。二人の間で実際にどのようなやり取りがあったのか、知っているのは当人たちだけだが、われわれはこの話から、トランプの人柄をどう判断すればいいだろうか?

トランプを批判している著名な富豪にはブランソンの他にも、投資家のウォーレン・バフェット、マーク・キューバンなどがいる。

「ただでは済まさない」

「復讐」に関するトランプの攻撃性については、その他の人たちの話も報じられている。トランプのおいの妻、リサ・トランプはニューヨークの地元紙「デイリー・ニューズ」で、おじたち(トランプと姉・弟)がリサの夫(と家族、夫妻の息子には神経疾患がある)が加入していた健康保険を解約したことを告白。それは、トランプの父の遺言にリサの夫が異議を申し立てた一週間後のことだったという。

また、インターネットメディア「バズフィード」はトランプに関する女優サルマ・ハエックの話を伝えている。ハエックがデートの誘いを断ったところ、トランプはタブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」に、「ハエックは自分とは不釣り合いだ」という記事を書かせたという。

そして、トランプ自身の言葉にも、その性格は表れている。2011年にシドニーで行われたイベントに出席したトランプは、壇上からこう述べた。

「人には仕返しをしろ。侮辱されたら、10倍にして侮辱し返せ。本当にそうすべきだと思っている」

ハフィントン・ポストのワシントン支局長ライアン・グリムによれば、「ドナルド・トランプは長年、ビジネスに関する演説では必ず復讐について語っている」。

「復讐は」健全な思考か

傷付けられたと感じたときの反応として、「復讐」は健全なものだろうか?それは、復讐の仕方による。詩人ジョージ・ハーバートの言葉に従うのであれば、「優雅な生活こそが最高の復讐」ということになる。そして、優雅に暮らすことは、健全なことだ。

だが、復讐するために人を傷付ける方法、人をこき下ろすことは自分自身にとって健全だといえるだろうか?米コルゲート大学の故ケビン・カールスミス准教授らは、復讐に関する問題点について調査。学術誌「Journal of Personality and Social Psychology(人格・社会心理学ジャーナル)」に論文を発表している。

准教授らによると、復讐は一般的には、その人にカタルシス(精神の浄化作用)を与えると考えられている。緊張を解き、感情を解放してくれるというのだ。だが、調査によれば実際には、復讐は私たちが侮辱されたと感じたことやそうした態度を取った人について思いを巡らせるきかっけとなり、その問題により一層、取り付かれた状態にさせることが分かった。そして、その状態に陥ることによって、私たちが前に進むことは、さらに困難になる。

きっかけとなった侮辱、取るに足りないちょっとした失礼な言動が、本当のところはどの程度の出来事だったのかということさえ分からなくなってしまうほど、(復讐心は)あなたの中でどんどんと膨れ上がっていく可能性があるのだ。

研究者らはこの他、復讐を果たした後の自分の気持ちについても、正しく予測ができなくなるという点を指摘している。企てたり、計画したりしているときには、復讐を果たせば「すごくいい気分になるだろう」と考えるかもしれない。だが、実行してもその結果得られるのは、「こんなもの?」という感情かもしれない。何時間も、何日も、あるいは何か月、何年もかけて復讐を計画したのにもかかわらず──。その間、あなたは自分の人生をより良いものにするために、何かもっと有益なことをできたはずだ。

復讐はまた、あなたから周囲の全ての人、全てのものを「奪い取る」ものでもある。復讐に取りつかれていることは同時に、家族や友人、同僚たちを消耗させ、妨害し、傷付けることにもなる。復讐は、あなたをさらに傷つける可能性があることを覚えておく必要がある。

実際のところ、人を侮辱すれば相手はあなたに対する敬意をさらに失う。侮辱されたと思ったときに一番健全な対応は恐らく、映画「アナと雪の女王」の主題歌のように、「Let It Go(それでよしとする)」ことなのだろう。