映画『溺れるナイフ』:小松菜奈×菅田将暉、過酷な現場で殴り合った青春の17日間

写真拡大

ジョージ朝倉の青春コミックの映画化『溺れるナイフ』で主演を務める小松菜奈と菅田将暉が、身を削る思いで役に挑んだ過酷な撮影の日々に迫る。

ナイフのように研ぎ澄まされた若者たちの機微を描き、幅広い世代に支持されるジョージ朝倉の青春コミック『溺れるナイフ』が、小松菜奈と菅田将暉の共演で実写映画化された。原作のイメージに限りなく近いタ瀬ャスティングイ箸慮討喟爾盥發、さらに映画界が注目する新鋭・山戸結希が監督を務めるということで、各所から大きな注目を集めている。

田舎に越してきたティーンモデルの夏芽(小松)、気まぐれで傍若無人なコウ(菅田)。傷つけ合いながらも強烈に惹かれ合う二人。2016年も公開待機作が目白押しで、自身も青春真っ只中の小松と菅田が、濃いひと夏の青春を捧げた『溺れるナイフ』を語る。

-真利子哲也監督作『ディストラクション・ベイビーズ』に続く共演ですね。

菅田:『ディストラクション・ベイビーズ』で一度殴り合っているから、今回は殴りやすかったし、殴られ慣れてもいました(笑)。今回の『溺れるナイフ』は、タ瓦撚イ蟾腓イ澆燭い粉兇検『ディストラクション〜』の方が、楽な関係性だったんです。

小松:『ディストラクション・ベイビーズ』が先で、順番的によかったと思います。『ディストラクション〜』の時は現場でほとんど話さなかったんですけど、今回の『溺れるナイフ』では菅田さんに頼らせてもらった部分がすごく大きくて。今回の現場は、スタッフさんや共演者の方々に支えてもらわないと生きていけない状態でした。撮影時19歳だったのですが、そのタイミングでこの映画が撮れてよかったと本当に思います。


(C) ジョージ朝倉/講談社 (C) 2016「溺れるナイフ」製作委員会

-菅田さんはどんな風に支えてくれたんですか?

小松:見た目から目線まで、漫画から出てくるコウちゃんそのままだったので。

菅田:僕、あんなんか!?(笑)

小松:追いかけたくなる雰囲気というか(笑)。主役でもそれ以外の役でも、映画でもテレビでも目を引く存在で、いろいろな役を見たくなるような人。現場でもコウちゃんとしてそこに存在してくれて、コウちゃんとして助けてくれたし、私はそんなコウちゃんを必死に追いかける日々だった。追いついたり、離れたり、振り回されたり、ケンカしたり。言葉にできないくらい大変な現場だったので、日に日に顔が死んでいきましたけど(笑)。

菅田:その顔を見た時に予感しましたね。それほどまでに身を削る現場なんだなって(笑)。

-山戸結希監督といえば、『あの娘が海辺で踊ってる』『おとぎ話みたい』などの話題作に富み、インディーズ映画界では知らない人はいないほど旬な監督ですよね。山戸監督との仕事はどんなものでしたか?

菅田:とても良い経験だったと思います。僕は、自分が19歳の時に『共喰い』って映画に出演したので、その時の自分と小松さんが重なって見えました。あの時の僕なんて、あんなもんじゃなかった・・・。監督に毎日怒られて、ワケもわからず生きてたんです。俳優部という仕事がどういう仕事なのか、まさに身をもって体感していた時でした。だから小松さんを支えようというよりは、フラついた時に頼られる存在でいられたらなと思っていました。

小松:乙女の部分はもちろんあるんですけど、男性にも負けない精神で、「絶対に私はこれを撮りたい!」という意思を曲げない監督です。だから、パンフレットとかの写真の山戸監督のおだやかな表情は、現場で会った時の感じと全然違います(笑)。

菅田:でも、それって夏芽っぽいよね。

小松: 確かに。監督が夏芽という感じで、現場でもコウちゃんを見ていた。だから、コウちゃんのシーンは特にすごく燃えてるんですよ(笑)。

菅田:どっちが夏芽かわからなかったもん(笑)。現場に「夏芽がふたりいる!」みたいな感じでした。


(C) ジョージ朝倉/講談社 (C) 2016「溺れるナイフ」製作委員会

小松:監督を見て「夏芽ってこんな感じなのかな?」って掴めた部分もありました。監督がイい滯セ廚辰燭海箸鮓従譴派集修靴討いので、前の日に覚えたセリフも朝行ったら変わっていたり、ロケ場所も突然変わったりして大変なことも多かったけれど、そのイ笋辰討澆覆い箸錣らないじゃん精神イ六笋盒Υ兇任ました。私はすぐにセリフを覚えられるタイプじゃないので、現場でテンパることもあったけれど、そんなときに菅田さんが「セリフ一緒にやろうか?」と言ってくれても、負けず嫌いなので「大丈夫です!」と言ってました(笑)。

菅田:「手伝おうか?」って言うと、「いい!」って言うんだよね(笑)。

小松:何が起きるかわからない現場の化学反応も『溺れるナイフ』ならではだと思って。セリフを事前に合わせると、面白さがなくなる気もしてたんです。順撮り(シーン順に撮影すること)じゃなかったので夏芽の感情の整理は大変だったけど、自分で決めていくものじゃなくて現場で起こるもの、そこで感じるものを大切に演じていました。

-濃厚な夏だったんですね(笑)。

小松:濃厚過ぎました(笑)。

菅田:今日はしゃべるね! 普段はこんなにしゃべる子じゃないんですよ(笑)。

-本作を通じてお互いの印象は変わりましたか?

菅田:『ディストラクション・ベイビーズ』の時はわからなかったけど、現場にはそのシーンの撮り方を決めるゥ疋薀ァ蔽兵茲蝓砲箸いΔ里まずあって、その後テスト、本番という流れがあるんですが、ドライの工程からあんなに泣いている人は初めて見ましたね。小学一年生から大学受験を始めるみたいな感じ(笑)。そんな女優はいないですね。確かに少女の衝動、その時に起こるよくわからない出来事を描いているから、「用意スタート!」では撮れないんですよね。

-それを受けて、菅田さん自身も目覚めるところがありました?

菅田:もちろんありました。その方がスタッフさんたちも画が見えやすいし。でも、本番ではまた違ったりするから、狙いなのか、抑えられない何かなのか・・・。

小松:どうしていいのかわからなかったんです。不器用なので、本番で急に感情を出せないんです。それで本番で涙が出なくなっちゃった時があって、「なんでドライで出来て本番でできないの? 意味ないじゃん」って(笑)。

菅田:どっちにしても面白い現象でした。そんな小松さんの姿はタフだし、かっこよかったです。スタッフさんたちもどんなにつらくても、小松さんが先陣を切って滝に打たれようとしているから、みんな付いて行こうと思えたんです。


(C) ジョージ朝倉/講談社 (C) 2016「溺れるナイフ」製作委員会

-菅田さんとのお芝居は?

小松:菅田さんは、クールに黙々とやるタイプです。髪型や洋服はもちろん、演じるキャラクターへのこだわりもすごいし、現場での佇まい、スタッフさんへの気づかい、全てにおいて柔軟性がある役者さん。『ディストラクション・ベイビーズ』の時は、持ってきたギターを休憩中に弾いていたりして、自由な人だなって思った。私にはないものをたくさん持っていて尊敬できる存在です。

殴られるシーンって、実際に当ててもらわないと感情的に芝居が難しいんです。だから私は、共演する方に「当ててください」とお願いするんですけど、「女優さんだからできない」とか、「わかった」と言っても本番でやってくいただけないことが多い。今回、菅田さんに「当ててほしい」と言ったら、菅田さんは「もちろんその気でいたよ」って。お互いが遠慮せずにやれる関係。この人だったら、何をやっても大丈夫だなって思えました。

菅田:全部、自分の自己満足ですよ。自分がいかに気持ちよく、楽しくカメラの前に立てるかっていうことです。役作りで痩せることも、自分が不安だからやるだけのことで、現場で安心するためなんです。

-夏芽がコウに惹かれる気持ちはわかりましたか? 恋愛するにはしんどい相手ですよね(笑)。

菅田:絶対しんどいでしょ! 大友(重岡大毅)といた方が幸せだよね(笑)

小松:大友には大友の良さがあって、一緒にいたら楽しいし、笑顔になれて、安定がある。でも若い時って不安定を求めるというか、ミステリアスな人に惹かれるのはすごくわかるんです。夏芽はコウに出会うまで押し込まれた環境の中で生きていたので、コウという自由な人間との出会いは衝撃だったと思う。何にも縛られず好きに生きているコウが魅力的で、生きる道をやっと見つけた感じなんだと思います。でも、大人になると結婚とか安定を求めていくんですよね。大友は一途だろうし(笑)。

菅田:婚活セミナーみたいになってるよ(笑)。


(C) ジョージ朝倉/講談社 (C) 2016「溺れるナイフ」製作委員会

-菅田さんは、コウという役をどんな風に捉えていたんですか?

菅田:コウは、羨ましかったですね。「あの海には入っちゃダメ」っていう町の決まりを無視して、一人でその海を泳いでいる。そういう部分は人間的に魅力を感じました。僕は真逆だったんですよ。何でもバランスを取るタイプで、「今何が最善なんだろう?」って淡々と考えているような学生生活だった。だから、あの頃の自分にコウを見せたいですね。ここまで生きざまみたいなものを年下、ましてや高校生の役に感じたことはなかった。僕は二十代になって逆に不安定になったというか、感情を出せるようになってきたんです。

-夏芽とコウは張り詰めたシーンが多いですが、夏芽と大友のシーンは全体的にほのぼのとしていましたね。

菅田:完成した映画を見てビックリしたもん。楽しそうだな、僕も呼んでよって(笑)。

小松:正直、コウちゃんといる時より楽しかったです(笑)。ずっとコウちゃんの背中を追いかける日々だったから・・・。重岡さんが来ると、現場が明るくなるんですよ。本当に太陽みたいな存在で、スタッフさんも「明日シゲちゃんくるよ」って楽しみにしていました。重岡さんは海に飛び込むわけじゃないし、首を絞められるわけじゃないし(笑)、壮絶な現場を知らなかったんじゃないかな。わたしのつらい顔を見ると栄養剤をくれたりして、すごく優しかったです。

-二人とも自然体で本当に楽しそうでした。

小松:大友がセリフを噛んでしまうシーンがあるんですけど、好きな人の前で吃ったり噛んだりしてしまうのは自然なことなので、監督はそのまま使っているんです。そういうのは新しいなと思ったし、スクリーンに自然な大友が映っていて、新鮮でしたね。

-本作で、お二人は中学生・高校生役を演じていますが、十代特有の不安定さみたいなところは、どのように意識して演じられたのですか?

菅田:中学校のシーン、僕ら4人だけ浮いてますよ(笑)。でも、シゲシゲ(重岡)はうまかったよね。自然とムードメイカーになっていました。

小松:高校生はまだいけるかもしれないけど、中学生の役はこれがギリギリ・・・アウト?(笑)友達が変わったり、環境が変わったり、思春期ってどうやって自分の場所を見つけていくか必死な時期。私自身もそうでした。その若さゆえのちょっと痛い部分、若さゆえの戦いみたいなものが『溺れるナイフ』です。青春ラブストーリーだけど、私的に全然ザ札ュンイ犬磴覆ぁ幣弌法そんな言葉では言い表せないくらい、私にとっては特別な17日間で、まだ頭に焼き付いているんです。

漫画があるから、ついそこに描かれているものを想像しちゃうけど、固まったお芝居ではダメなんだなと、いろいろなものが覆されるような現場でした。十代最後にこの映画ができたことは自分の中でとても大きい。あんなに全力を尽くせる現場は、これからもずっと忘れられないと思います。


(C) ジョージ朝倉/講談社 (C) 2016「溺れるナイフ」製作委員会

『溺れるナイフ』
監督:山戸結希
出演:小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅(ジャニーズWEST)、上白石萌音、志磨遼平(ドレスコーズ)
原作:ジョージ朝倉『溺れるナイフ』(講談社「別フレKC」刊)
11月5日(土)より全国公開。
http://gaga.ne.jp/oboreruknife/


小松菜奈 NANA KOMATSU
○1996年2月16日生まれ、東京都出身。2008年よりモデルとして雑誌を中心に活動するとともに、TV、CMなど数多く出演。中島哲也監督に見出され、映画『渇き。』(14)でスクリーンデビューを飾り、日本アカデミー賞・新人俳優賞のほか、数多くの賞を受賞し注目を集める。その他代表作に『近キョリ恋愛』(14)、『バクマン。』(15)など。2016年は、『黒崎くんの言いなりになんてならない』『ディストラクション・ベイビーズ』『ヒーローマニア ‐生活‐』に出演。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が12月17日公開予定。2017年は映画『沈黙-サイレンスー』『ジョジョの奇妙な冒険』が公開待機中。

菅田将暉 MASAKI SUDA
○1993年2月21日生まれ、大阪府出身。『仮面ライダーW』(EX)でデビュー。テレビドラマ、映画と次々に出演し、主演作『共喰い』(13)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。翌年『そこのみにて光輝く』(14)では、日本映画批評家大賞助演男優賞など国内の映画賞を数々受賞。その他代表作に、『海月姫』(14)、『暗殺教室』(15)、『明烏 あけがらす』(15)など。2016年は『ピンクとグレー』『暗殺教室-卒業編-』『ディストラクション・ベイビーズ』『セトウツミ』『何者』『デスノート Light up the NEW world』など、本作を含め9本の出演映画が公開。2017年は、『キセキ-あの日のソビト-』『銀魂』『あゝ、荒野』『帝一の國』が公開待機中。