<石油依存経済からの脱却を主導する若きプリンス・ムハンマド副皇太子が、1000億ドル規模の投資ファンドで変革を仕掛ける>(写真:潤沢過ぎるオイルマネーが、サウジの社会変革の妨げにもなってきた)

 サウジアラビアで最近、際立って存在感を増しているムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(31)。欧米ではMBSのイニシャルで知られる彼は、サウジ経済の原油依存度を減らして産業の多角化を図る改革の陣頭指揮を執っている。

 ムハンマドは先月半ば、孫正義社長率いるソフトバンクグループとの提携を発表した。先端技術への投資を主眼とする、1000億ドル規模のファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を創設する計画だ。

 ソフトバンクは今後5年間で少なくとも250億ドルを出資。サウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)も5年間に最大450億ドルを拠出する可能性がある。どちらにとっても、前例のない規模のファンドとなる。

 この投資ファンドが資金の5分の1を毎年投資に回すだけでも、テクノロジー業界には大きなインパクトとなるだろう。最近は目ぼしい投資話が浮かんでこないだけに、世界中の起業家やスタートアップ企業から歓喜の声が上がりそうだ。

 サウジアラビアは先日、国際市場で初の国債発行を行い、主にアジアの投資家から175億ドルを調達。新興国による国債発行では、過去最大を記録した。

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 オイルマネーで潤う産油国がなぜそんなに資金を必要としているのか? それはテクノロジー業界への投資に動いたのと同じ理由、つまり石油だ。

 石油は恵みであると同時に重荷でもある。オイルマネーは、貧国だったサウジアラビアをG20入りさせるまで成長させた。一方で過度の石油依存は経済活動をゆがめ、腐敗を誘発し、為政者たちが国の構造改革を先送りすることを許してきた。

 もちろん、原油価格が常に市場動向に左右されることも問題だ。14年夏に1バレル=110ドルを突破したかと思えば、16年には1バレル=27ドル台まで下落した。急激な価格変動によって、サウジアラビアの財政赤字は1000億ドル近くにまで膨らんだ。GDPの約15%に相当する額だ。

年長の皇太子を出し抜く?

 原油市場の激動は、ムハンマドがサウジ経済の再建を託された時期と重なった。ムハンマドは今年4月、経済改革計画「ビジョン2030」を打ち出した。

 その柱の1つが、国営石油会社サウジ・アラムコの株式を国内外で上場し、そこで得た資金を投資に回す計画だ。18年に上場予定で、同社は株式の5%を公開するだけでも1000億ドルを調達できると予想される。サウジアラビアは世界最大規模の投資余力を持つ国として躍り出るだろう。

[2016.11. 8号掲載]

アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)