米大統領選、投票日は1週間後に迫ったが・・・

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日米で、株価が急落している。

2016年11月1日の米ニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は4日続落して、前日比105ドル32セント安の1万8037ドル10セントで取引を終えた。この流れを受けてはじまった2日の東京株式市場では日経平均株価が大幅反落。下げ幅は一時、前日比で360円を超え、1万7100円を割り込んだ。

「英国のEU離脱のようなこともありえる」

株式市場を混乱させているのは、1週間後の2016年11月8日に迫った米大統領選の投票日だ。民主党候補のヒラリー・クリントン氏(69)、共和党候補のドナルド・トランプ氏(70)の支持率が拮抗しており、予断を許さない状況が続いている。

大勢に大きな影響があるとされた3回のテレビ討論会では、クリントン氏とトランプ氏の中傷合戦で終始したことで両氏とも評判を下げたものの、クリントン氏優位の状況は変わらなかったとみられていた。

ところが、ワシントン・ポスト紙とABCテレビが実施した世論調査(10月27〜30日)で、トランプ氏(支持率46%)がクリントン氏(45%)を1ポイント上回ったと、11月1日に発表した。

10月下旬にはクリントン氏が、一時12ポイントリードしていたが、米連邦捜査局(FBI)によるクリントン氏の私用メール問題をめぐる再捜査が支持率に響いているとされる。第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、藤代宏一氏が「英国のEU離脱のようなこともありますからね。米大統領選も最後までわかりません」というように、共和党の「トランプ大統領」が実現する可能性もゼロではないのかもしれない。

そうした米政局への不透明感から、日米の株式市場は不安定さを増している。米ニューヨーク株式市場は11月1日、ダウ工業株30種平均が4日続落。前日比105ドル32セント安の1万8037ドル10セントで終えた。9月14日以来、約1か月半ぶりの安値水準だが、一時は下げ幅が200ドルを超える場面もあった。

一方、ハイテク株の割合が高いナスダック総合株価指数は6日続落。前日比35.558ポイント下落の5153.577と、9月9日以来の安値となった。

トランプ氏の支持率が上昇していることに投資家らが反応したとみられ、幅広い銘柄が売られた。

東京株式市場も、日経平均株価は大幅反落。ほぼ全面安の展開で、11月2日の終値は前日比307円72銭安の1万7134円68銭。一時、361円81銭安の1万7080円59銭まで急落した。

東証株価指数(TOPIX)も24.75ポイント下落の1368.44と、4営業日ぶりに反落した。

一転して強まった「ドル売り、円買い」

このところ、ドル円相場は2016年12月にも実施すると予測されている米国の利上げ期待を背景に、投資家が「ドル買い」を強めていた。東京株式市場が急落を招いたのは、その動きが反転したためだ。

米大統領選で、クリントン氏とトランプ氏の支持率が拮抗。先行き不透明感から投資家のリスク回避姿勢が強まり、「ドル売り、円買い」の動きが強まった。2016年11月2日の東京外国為替市場で、円相場は一時1ドル103円60銭台まで上昇して、10月21日以来の高値を付けた。それに伴い、企業の業績悪化への懸念が再燃したことがある。

民主党のクリントン氏は、オバマ大統領の政策を原則として引き継ぐとみられている。「富裕層や大企業への増税」を掲げ、また金融分野の規制強化を主張しているため、株式市場にとってはポジティブとはいえないが、「現状から急変するということはないでしょう」と、前出の第一生命経済研究所の藤代宏一氏はいう。

その半面、トランプ氏が「逆転」で大統領に当選した場合、ドル円相場は円高に動くとの見方が少なくない。トランプ氏は、これまで米国の国益を前面に押し出してきた。そのことから「ドル安政策をとる」とされるが、そもそも政策への不透明感が高いため、為替市場ではリスク回避の円買いが増えるとの予測が広がっている。

そうなると、円高がデメリットになりやすい輸送用機器や電気機器、機械などの輸出関連銘柄には逆風になる。

為替市場の影響で、たしかに株価は軟調だが、藤代氏は「米国の株価が最高値を付けていた8月には、クリントン氏とトランプ氏の支持率はもっと拮抗していましたよ。そうしてみると、トランプ氏のリスクは世間がいうほど必ずしも大きくないと思います。共和党の資本主義寄りの政策が米経済の追い風になる可能性は高いですし、支持する人も少なくありません。トランプ氏だからダメというわけではないのではないでしょうか」と話す。

2016年11月2日の東京株式市場の日経平均株価も1万7100円台をキープしており、「堅調」と判断している。