「コック警部の晩餐会」ちゃんとグルメミステリーになってきた、今夜かつおぶし回で勝負だ

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1話はミステリー風コントだった


“本格グルメミステリー”を謳っている「コック警部の晩餐会」はドラマの第1話は、どう見てもそのコピーとはほど遠い内容だった。

シリアスな殺害回想シーンで、キーワードのチャンポンを使った奇怪なセリフ回し。そのセリフとのギャップを狙った過剰な演技。さらには不必要に重厚なBGMをわざと重ねるなど、本格ミステリーというよりは、クスっと笑えるミステリー風コントに仕上げられていた。本格ミステリーを作るつもりが失敗し、コントになってしまっていたわけではない。これは確実に狙ってやっていたものだった。

密室トリックやアリバイ工作も一切なく、肝心の犯人特定も“被害者の女はチャンポンのために長崎の食材を集めており、同じ調味料を使っているマンションの上の階に住む長崎出身の男が犯人”であった。簡単すぎないか。

それではチャンポンではなく他の物でも代用が利く。例えば“被害者の女が死ぬ直前に観ていたDVDが超B級でなかなか手に入るものではなく、上の階に住む男がその映画の監督だから犯人”でも成り立ってしまう。グルメミステリーを謳うのならその料理じゃないと成立しない感が欲しい。

しかし、先週放送の第2話は違った。30分という限られた時間の中、かなり本格グルメミステリーに近づいたと言える。コメディ要素もあるドラマなので笑い所はしっかり用意されているが、肝心の謎解きや殺害回想シーンでは、コントチックな演出は見られなかった。


犯人特定の鍵は茶巾寿司(ネタバレ)


海洋女子大学キャンパスで、女子学生の刺殺体が発見。被害者が食べていた茶巾寿司には、新見教授(手塚とおる)の指紋が付いていた。しかし、決定的な証拠は無く逮捕には至らない。そんな中、誤認逮捕などが相次ぎ、この事件がワイドショーで取り上げられてしまう。コメンテーターである新見の妻リカ(東ちづる)は警察を大批判していた。

被害者と新見教授は不倫関係にあり、その証拠はスケジュール帳に張ってあった“サバ、マグロ、タイ”のシール。これは鮮度が落ちる早さを示しており、新見教授と会える時間が短い日はサバ、中くらいの日はマグロ、そして一晩会える日はタイ、というものだった。「そんなシール貼るか?」という疑問の声が聞こえてきそうだが、海洋大学の学生なのでありえなくは無いだろう。

今回の犯人特定の鍵は茶巾寿司。報道でも警察発表でも、被害者が亡くなる直前に食べていたのは茶巾寿司と報じられていたのに、新見教授の妻リカだけが、これを唯一“ちらし寿司”と呼んでいた。被害者の食べかけの茶巾寿司を、ちらし寿司と勘違いしてしまっていたのだ。もちろん、この勘違いが出来るのは犯人だけ。不倫の恨みを晴らす為の犯行だった。

コピー通りの内容になってきた


“同じ調味料を使っているから犯人”と、“茶巾寿司をちらし寿司と見間違えるのは犯人だけ”1話と比べてどうだろう? かなり本格グルメミステリーっぽくなってきたのではないだろうか?少なくとも、この茶巾寿司の犯人特定は、他のものにはなかなか置き換えられないように思える。サバ、タイ、マグロのシールもグルメミステリーらしくて良い。

タイで思い出したが、グルメミステリーと言うと「古畑任三郎」の鈴木保奈美の回が好きだ。

アメリカ在住ののり子(鈴木保奈美)がアメリカ人夫を毒殺した話だ。毒が盛られていたのは、大判焼き。死体解剖の結果でもそう出ている。被害者が死ぬ直前、一つの大判焼きを二人で分けて食べた。しかし、それにも関わらず、毒を口にしたのは被害者だけ。のり子は容疑者になるが、被害者にだけ毒を盛るのは不可能ということで、事件は自殺として扱われた。

この事件のトリックは、実は大判焼きではなくタイ焼きだったというもの。レディファーストのアメリカ人男性にタイ焼きを渡せば、自らあんこの少ない尻尾側を選ぶという事を狙った犯行だった。しかも古畑は、この事件を深夜の高速バスで隣り合わせたのり子から話を聞くだけで解いてしまう。犯人も捕まらない異色の構成だ。この回は古畑任三郎ファンの中でも名作と言われている。

「コック警部の晩餐会」は始まったばかり。1話は1話で面白かったが、2話でやっと本格グルメミステリーとしてのスタートを切ったように思える。今夜放送の第3話予告では「凶器はかつおぶし」「証拠隠滅でまるごと食っちまった」と、興味深いアオリが。これは期待してしまう。
(沢野奈津夫)