75分から途中出場した原はボランチで獅子奮迅の働き。相手1トップと3シャドーへの対応で抜群の守備力を示した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 緊迫した場面での投入だった。

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 0-0で迎えた70分過ぎ、ウォーミングアップをしていたボランチ原輝綺の名前が呼ばれた。「絶対に失点が許されない展開で、本当に緊張した」
 
 初のアジアチャンピオンが懸かった決勝戦という舞台。相手はサウジアラビアという今大会随一の攻撃陣を要する強敵だ。そうしたなかで劣勢を強いられた状況での投入は、誰もがこれ以上ない難しさを感じるものだろう。
 
 75分にMF市丸瑞希に代わって投入された原の任務は、サウジアラビアの3トップを軸とした強力アタッカー陣に対して、プレスバックを徹底することと、セカンドボールを拾うこと。原が投入されるまで、日本はセカンドボールで相手に優位に立たれ、これまで5試合で16得点を挙げている相手攻撃陣のスピードとパワー、そしてテクニックを有した分厚い攻撃に晒され、再三決定的なピンチを招いていた。
 
「相手が蹴って来ると分かっていたので、なるべく僕が相手FWとの距離を詰めて、そこで弾けるなら弾く。落とされて、僕が後ろ向きの状態で相手にボールを持たれることが、本当に最悪なパターンなので、最低限、自分が前向きにディフェンスを出来る位置取りは必要だと思った。拾えればいいけど、ノルマはそこでした」
 
 原は自分の役割を熟知し、「やってはいけないこと」を肝に命じていたからこそ、CBと連動しながら、得意の予測力と危機察知能力の高さを駆使し、相手のアタッカー陣への圧を強めることに成功した。
 
 この原の動きをサウジアラビアの選手たちも明らかに嫌がるようになり、79分にサウジアラビアは1トップに長身のFWアルムワラード(20番)を投入。アルクライフ(10番)、アルナージー(6番)、アブドゥルラーマン(11番)のこれまで計10ゴールを叩き出している3人をシャドーに配置し、アルムワラードをターゲットに、より前への圧力を高めて来た。
 
 この相手の変化にも、原は冷静に対応した。「20番との距離感は意識しながらプレーして、相手のシャドーに前向きに拾わせないことを考えた」と、ターゲットマンを視野に捉えつつ、状態がいい選手にボールが渡らないように頭をフル稼働させた。
 
 緊迫の状態のまま試合は延長戦に突入するが、背番号21の集中力、頭の回転は落ちない。結果、サウジアラビアにゴールを許さなかった。そして、PK戦の末に歓喜の時を迎えた。
 
 非常に濃密な45分間だった。電光掲示板の時計に目をやり、「本当に時間が経つのがめちゃくちゃ長く感じました」と振り返ったように、途中出場だったが、ここまでの緊張感を伴う難易度の高い状況は、自身にとって初めての経験だった。
 
「サウジアラビアはこれまでの相手と違って格段に強かったですし、テクニックもあった。ああいう相手にもっとしっかりと対応しないと上にはいけません。もっともっと上手くなりたい」
 
 緊迫したなかでのプレーは、彼の向上心を大きく揺さぶった。それは間違いなく、成長への起爆剤となるだろう。バーレーンの地で高3ながらプロの選手と日々を共にしながら、日の丸を背負って真剣勝負が出来たこと自体大きな財産と言えるが、その濃密な45分間はとりわけ得難い、貴重な経験となったことは間違いない。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)