野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

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前回までの4回で調達購買改革を巡る誤解について考えてきました。

具体的にはこの5つの誤解です。
1.「集中購買」=「サプライヤ集約」=「コスト削減」の誤解
2.「サプライヤ評価」=「サプライヤマネジメント」の誤解
3.「複数社発注」=「リスクマネジメント」の誤解
4.「部品集約」=「コスト削減」の誤解
5.「競争化」=「コスト削減」の誤解

「集中購買」「サプライヤ集約」「サプライヤ評価」「複数社発注」「競争化」これらの改革のキーワードは多くの企業でスローガン的に取上げられてきました。改革の初期においてはこれはとても重要なことです。何故ならシンプルでわかりやすいキーワードは改革を進めていく上で推進力になったから。
一方で今回の誤解シリーズで述べてきたことは、これらの活動はあくまでも手段だったりツールであり、目的ではないこと、また定義が曖昧で各人の捉え方が全く違ったりすること、それから必ずしも全ての品目で両辺のイコールの公式が直結しないこと、を述べてきました。

今回の誤解シリーズを通じて私が言いたかったことはこのようなキーワード型改革は既に時代遅れであるということなのです。

日本企業の調達購買改革は多くの企業で90年代後半くらいから取組みが始まりました。
ぞれは属人的業務との戦いです。企業全体の調達力を強化するために、プロセスの標準化を行い、人材の育成を行い、インフラの整備を行い、カテゴリー戦略を立て、ユーザーマネジメントを行い、サプライヤマネジメントを行ってサプライヤとの関係性を見直してきました。キーワード型改革は推進力が求められますので、今までの初期的な改革段階においては、このような進め方は効果的であり多くの日本企業がキーワード型改革を推進してきたのです。

例えば「集中購買」ですが、当初は同じものを違うサプライヤから異なる価格で買っている状況でしたから、それを集めて同じサプライヤから買うようにすれば、(そりゃあ)安くなるわけです。でもこういう活動はやればやるほどネタが枯渇してきます。
そうすると集中購買しても「サプライヤの原価低減にもつながらず、それほど大きな効果にもつながらない」状況に陥ります。また品目毎の状況によってもコスト削減効果がでる品目とでない品目があるでしょう。コスト削減効果がでなくなると改革自体の有効性を疑い始めます。結果的に(効果がでないなら)集中購買はしなくてもいいのでは、みたいな話になってくるのです。

私はやはり集中購買、集中契約は進めるべきと考えます。集中購買はコスト削減効果だけを求めるものではないからです。例えばスキルの育成や集中化、それから社内統制面や業務コストの最適化、支出最適化の状態を保っておくには集中購買が望ましいから。そういう意味ではコスト削減効果が薄れてきたから集中購買やめましょうというのは乱暴な議論です。

いずれにしてもここに上げたようなキーワード型改革は既に限界にきています。これは今日現在は調達購買改革の初期段階ではなく、次の改革に向けての発展段階になってきているということでしょう。キーワード型改革はシンプルでわかりやすい。しかし、「競争化」=「コスト削減」の誤解でも取り上げましたが、「競争できないものを無理やり競争させてしまう」ようなリスクも内在しています。また繰り返しになりますが、キーワードの定義が曖昧でそれが誤解やミスコミュニケーションにつながるリスクもあります。また目的・ゴールと手段やツールを取り違えてしまうリスクも少なくありません。シンプルで推進力につながりやすいが、このようなリスクが内在することは理解しておく必要があります。

それでは今後はどのような改革が必要なのでしょうか。
ポイントは「層別化」と「考えられる組織」です。

これまでの誤解シリーズでも述べてきましたが、品目や品目群の市場構造や環境は重要であり、全ての品目を同じでように捉えるのではなく、層別化して捉え、どのように重点をおき効果的な改革をするか、という重点志向が求められます。

戦略的重要性とスイッチングコストの2軸で考えてみましょう。マトリクスを考えた場合戦略的な重要性が高くスイッチングコストが高い領域、これは例えばマイコンなどが当てはまります。こういう領域は複数社発注でリスクマネジメントしたい領域ですが、新しいサプライヤで全く同じものを作らせるには開発費用などの投資負担が大きくコスト的にあいません。このような品目群に対してどのような手法をとれば良いでしょうか。「競争化」?こういう品目は競争できないものを競争させてしまいトータルコストがかかりすぎてしまった、なんていうことにつながります。基本的な手法は関係性
強化、囲い込み戦略でしょう。リスクマネジメント手法としてはマルチファブ化や在庫を持つという手法が向いています。
戦略的な重要性が高いがスイッチングコストがあまり高くない領域は、例えば汎用半導体などがあてはまりますが、この領域は複数社発注でリスクマネジメントと同時に競わせていく領域です。
戦略的な重要性が低いがスイッチングコストが高い領域は、カスタマイズ品で例えば樹脂成形品やプレス板金などが代表的な品目として上げられるでしょう。この領域は例えば通常サプライヤが分散しているケースが多いのでサプライヤを集約することで設備稼働率を向上させコスト削減につなげやすい領域になるでしょう。気を付けなければならないのはサプライヤのスイッチングコストが高いため、集約を行うのは新規案件からとなります。
最後はスイッチングコストが低く尚且つ戦略的な重要性が低い領域です。ここは品目としては梱包材やケーブルなどが上げられますが、競争化が当てはまりやすく競争の結果サプライヤが集約されている、という領域です。

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このように品目毎に何をやらなければならないか、また重点をどこに置くべきなのかは品目によって異なります。これはサプライヤも同様です。同じ品目群のサプライヤであってもどういう関係性をつくっていくかは、サプライヤ毎に異なるからです。

層別化して重点志向することにはエンパワーメントが必要です。意思決定するのは調達購買担当者だからです。キーワード型改革ではこのような考え方や課題はありませんでした。キーワード型改革から脱却すると意思決定の方向も場面場面で異なります。権限移譲をおこない、状況に応じて「考えられる組織」づくりが必要です。

そのためにはスキルの向上もジョブローテーションもやらなければなりません。担当者がカテゴリ毎の改革を自ら考え進めていく必要がでてきます。状況に応じて(これが難しい)考えられる担当者が必要であり、それを支える組織や仕組みが必要です。

調達購買改革はこういう時代になっちゃったいました。要するにステージがあがったのです。ステージが上がったからそのステージにあった改革を進めなければなりません。新ステージの調達購買改革は、より一層カテゴリマネジメントとユーザーマネジメント、サプライヤマネジメントを同期させていかなければならないのです。

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