できる上司はなぜ「脱線」するのか?

写真拡大

外資系企業からやってきたコンサルタント系上司や合併先の上司、政府の「女性の活躍推進策」で下駄を履かされた女性上司……。もう何がきても怖くない、部下の心得と対策を伝授しよう。

会社が吸収合併されて、突然、かつてのライバル企業にいた、全く異なるカルチャーを持つ上司がやってきたり、社長が外資系企業出身のプロ経営者に代わり、一緒に連れてきたMBA取得の理論派が上司としてやってくる。はては、アベノミクスの「2020年までに女性管理職を30%に」との数値目標を受け実力不足に見える女性上司がやってきたり――。

従来の上司像とは異なる、「新型」と呼びたくなるような上司の出現は、職場の雰囲気を不穏なものにもしかねない。ただし、だからといって戦々恐々としているだけでは、状況は悪くなる一方。自分の身を守るためにも、何らかの手を打っておきたいところだ。

一般に部下と上司の不仲は、上司に責任がある場合が多い。しかし、こと新型上司との関係においては、部下が最初から拒絶反応を示してしまうために、関係が悪化するケースが少なくない。

距離を置いて、あたかも宇宙人や珍しい動物を見るような目で相手をちらちら見ているようでは、上司も構えてしまい、はなからボタンの掛け違いが生じる。3日もあれば犬猿の仲になるのは目に見えていること。ただ、逆も真なり。つまり部下の対応次第で、問題が解決することもあるはずだ。

新型上司に部下がどのように仕えていくかというフォロワーシップのポイントは3つ。こちらから積極的に上司に対し「理解」しようと努め、「補佐」し、最終的にはこちらがやりやすいように上司を「動かす」ことである。

結局のところ、上司と反目し合っても、なにもいいことは起こらない。だったら、良好なコミュニケーションを築いて、こちらにとってもやりやすい環境をつくっていったほうが賢明だろう。

上司を理解するうえで、覚えておきたいことが一つある。それは、“できる上司”として抜擢された人ほど、転落しやすいということだ。アメリカでは、この転落に陥る現象を“ディレールメント=脱線”といい、脱線した人は「ディレーラー」と呼ばれる。

かつて私の同僚にもなかなかの切れ者がいた。しかし、仕事はずっと順風満帆できたのに、責任と権限とが与えられると急に周囲との折り合いが悪くなり、衝突を繰り返すようになった。傍若無人な振る舞いも多くなり、そのうち職場は険悪な雰囲気に。本人は自分の思うようにならない状態に業を煮やし、やがて大きな問題を発生させ、自ら職場を去った。

こうした脱線する人のチェック項目を別表にまとめたので参考にしてほしい。自分の上司が全15項目のうち5つ以上あてはまるなら黄色信号が点灯する。

▼「ディレーラー=脱線する人」危険度チェックリスト

□自分とは異なる意見を人から言われるとすぐに腹が立つ。

□自分の間違いを指摘されても認める気にはならない。

□何か問題が起こると自分以外の人間に原因を求める。

□正しい解答が出せるのは自分以外にいないと思っている。

□いつも自分の思うとおりのやり方を部下に強制している。

□部下の言い分を聞く前に自分の意見を押しつけがちだ。

□任せた仕事を任せきれず部下に干渉することがよくある。

□ときにはその仕事を部下から奪い自分でやってしまう。

□約束を破っても自分は多忙なのだから仕方がないと思う。

□自分の仕事の大変さを周囲の者たちはもっと評価すべきだ。

□少しくらい職務規定にふれても自分は許されてよいと思う。

□小さなことに癇癪を起こし人を怒鳴りつけることが多い。

□日によって気分の浮き沈みが大きくなったという自覚がある。

□以前に比べ睡眠時間や食事など生活のサイクルが乱れてきた。

□部下が起こした失敗を思い出してイライラすることがある。

●該当するものが5つ以上あると黄色信号が点灯!
●半数以上該当すれば立派なディレーラー予備軍!

※本田有明著『上司になってはいけない人たち』をもとに編集部作成。

ただし、逆の見方をすれば、“できる上司”と言われている人の多くが、リストに挙げられている項目のいくつかにはあてはまるはず。つまり、どんな上司でも、その程度の難点は持っていて当然と心得たほうがいい。部下の目から見て「困った人だな」と思うような部分があるのは、あなたの上司だけではないのだ。それを心得ておけば、いざ上司が脱線現象を起こしても慌てることもない。

いずれにせよ、新型上司がやってくるということは、流れが変わったということ。ヘーゲルが「存在するものは合理的であり、合理的なものは存在する」と言っているように、変わった流れにこそ合理的な理由がある、それが物事の摂理なのだと、自分に言い聞かせることも、前向きに仕事に取り組んでいくうえでは必要だ。それでは、新型上司のタイプ別に、その対策法を見ていこう。

----------

本田有明
本田コンサルタント事務所代表。日本能率協会を経て人事教育コンサルタントとして独立。経営教育、能力開発の分野でコンサルティング、講演、執筆活動に従事。著書に『上司になってはいけない人たち』(PHP研究所)など。
 

----------

(小澤啓司=構成 永井浩=撮影)