ポール・チャップマンMoneytree社長

写真拡大

■国内2600社以上の口座情報を取得

フィンテック産業として多くのベンチャー企業が誕生しているが、そのなかでマネーツリー(東京都渋谷区、代表取締役・ポール・チャップマン氏)は「データアグリゲーション」技術を軸に、存在感を示している。

データアグリゲーションとは、レポートや分析のため、多種多様なソースからデータを収集し、そのすべてを共通のデータリポジトリにまとめること。フィンテックでは、複数の銀行や証券会社などの口座に対して、IDやパスワードをあらかじめ登録し、一度の認証で残高や振り込み履歴などの情報を一括して参照できるサービスのことだ。

マネーツリーの法人向け主要製品である「MT LINK」は2015年から提供。すでに弥生、TKCなどの大手会計会社、メガバンクではみずほ銀行など計15社と連携している。直近(2016年10月4日)ではセールスフォース・ドットコムの富裕層向けの資産運用アドバイスサービスである「Financial Services Cloud」と連携。「MT LINK」は国内約2600社以上の金融機関口座(個人、法人)、クレジットカード、電子マネー、ポイントカードのデータを1本のAPIにまとめ、既存のシステムとシームレスに接続している。対応は3大メガバンクのほか、84の地方銀行、125の全国信用金庫。

また、IBMのPaaS(ネットを介してアプリケーションが動作するプラットフォームを提供するサービス)である「Bluemix」に初の公式ファイナンスAPIとして連携している。地方銀行を中心にさまざまなフィンテック・サービスの登場が期待されているが、「MT LINK」はそのコア技術となる。

■モバイルファーストで実現した個人向け財務管理

マネーツリーの創業は2012年。オーストラリア生まれのポール・チャップマン氏ほか3人が日本で起業。企業基盤を築いたのは2013年に提供開始した個人向けサービスの「Moneytree」。「家計簿より楽チンMoneytree一生通帳」のキャッチフレーズで知られるPFM(個人向け財務管理)サービスだ。

銀行口座、クレジットカード、電子マネー、マイル、ポイント、証券を登録するだけで、残高、銀行明細などが自動的に更新され、わざわざATMに行かずに確認できるうえ、AI(人工知能)が自動判断で項目に分けるので、収支の状況を使う人なりに活用できる。経費精算は移動中の電車のなかでスマホを使って簡単にできるという。2600以上の金融機関、カード、ポイントなどに対応している。

また、「Moneytree」は操作性やデザインが評価され、AppleのApp Storeで2013年、2014年の2年連続、Best Appに選定されている。

チャップマン代表は創業の動機について、こう述べる。

「利用者が銀行の取引データを見たいと思っても、日本では3カ月前までしか利用明細を入手できかなかった。データアグリゲーションは日本でもかつて既存の大手ITベンダーが手掛けていたが、サービスを停止したものもたくさんある。理由は銀行のためにシステムを作っていたためで、利用者のために作ったものではなかった。このため、大きなサーバーを立て、ランニングコストも億単位の投資が必要だった。我々は消費者目線にたってスマホで、つまり“モバイルファースト”でこれを実現した。フィンテックは、今後、データアグリゲーションで収集したデータをどのように活用して新しいサービスにつなげていくかが、ますます重要になる」

(経済ジャーナリスト 丸山隆平=文)