「Thinkstock」より

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 9月15日、米アマゾンはテキサス州に巨大な風力発電所を稼働させると発表した。テキサス州西部に、直径がボーイング747旅客機の翼の2倍もある風力タービンを100台以上設置し、1年間に100万メガワット時の電力を発電するという。これは実に米国の約9万世帯の電力をまかなえる量である。

 アマゾンによれば、2016年末までに同社インフラの40%が再生可能エネルギーで稼働する見通しだという。全世界の同社インフラを100%再生可能エネルギーで稼働させることを目標に掲げる。

 また、米アップルも9月19日、事業の電力の100%を再生可能エネルギーでまかなうことを目指す「RE100」に参加したことを発表した。アップルはさらに、同社の製造パートナーや主要取引先(8カ国14社)からも、再生可能エネルギー活用するとの意思表明があったことを明らかにした。18年末までに、100%再生可能エネルギーで事業をまかなうことをめざす。

 米フェイスブックも今年、アイルランドに風力発電を活用した最新のデータセンターを建設する。今後、米国やスウェーデンに3カ所のデータセンターを設けると発表しているが、これらの施設でも、風力、水力発電などの再生可能なエネルギーを活用するという。フェイスブックは、18年末までに同社の世界インフラの50%をクリーンな再生可能エネルギーで占めることを目標にしている。

 このようなグローバル企業の動きの背景には何があるのだろうか。

 自然資源防衛協議会によると、IT企業によるデータセンターの電力消費量がもっとも高い伸びを示しているという。その合計は20年には年間1400億キロワット時になり、発電所50カ所の発電量に相当すると予想される。

 07年時点で、全世界のデータセンターで消費する電力は、日本の国内電力消費量に次ぐ量に達し、ドイツやイギリスの国全体の電力消費量を超えていたのだ。

 グローバルIT企業にとっては、電力の確保は死活問題である。さらに、温室効果ガス削減への国際的な関心の高まりに応じるため、再生可能エネルギーへのシフトが起きているのだ。

●普及が加速する再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーへの関心の高まりは、IT企業だけのトレンドではない。

 米元副大統領のアル・ゴア氏が、今年2月のプレゼンイベント「TED」で発表した内容によると、10年以降、旧来の化石エネルギーより再生可能エネルギーへの投資が多くなっているという。15年のアメリカにおけるエネルギー投資は、実に4分の3が再生可能エネルギーとなり、太陽光発電と風力発電がメインとなったそうだ。

 ゴア氏は、06年公開の映画『不都合な真実』(UIP)で、二酸化炭素(CO2)などの温暖化物質によって地球温暖化が急速に進むことを警告し、その後に続くCO2削減の国際的な流れをつくったが、同氏が主張する内容には科学的根拠がないなどの批判もあり、現在でも賛否両論に分かれる。

 しかし、TEDで同氏が発表したことは、今世界で起きている再生可能エネルギーのリアルな現状だった。

 ゴア氏によれば、2000年時点の予想では10年までに風力発電が年間30ギガワット(GW)になると予測していたが、実際にはその14.5倍に達しているという。太陽光発電に関しては、02年時点では、10年になると年1GWの増加ペースになると予想したが、実際は今年その68倍になるという。

 再生可能エネルギーの普及は、あらゆる専門家の予想をはるかに上回る規模で進行しており、さらに加速的に普及が進むだろうとゴア氏は予測する。同氏はこれを携帯電話にたとえて説明する。
 
「1980年にコンサルティング会社が、2000年に携帯電話が何台売れるかを調査した。綿密な分析によって出した答えは90万台だった。実際はどうだっただろうか。確かに90万台売れた。しかもたった3日で。結局、予測の120倍も売れた。今では世界人口より多い携帯電話が普及している」(ゴア氏)

「携帯電話が普及した理由のひとつが、送電インフラが整っていなかった発展途上国での普及だった。この携帯電話と同じ現象が、電力の世界でも起こっている。送電網が普及していないバングラデシュでは、電気が通っていない家が多数あるにもかかわらず、今なんと1分間に2機のペースで自宅用の太陽光発電が普及している。発展途上国では、再生可能エネルギーが爆発的に普及する可能性がある」(同)

 国際エネルギー機関(IEA)も、太陽光発電のコスト低下によって、今世紀半ばまでに太陽光が世界中の電力の4分の1をまかなう最大の電力源になり得ると予測している。

●日本国内では倒産企業続出

 再生可能エネルギーは抗しがたいほどの世界的な大トレンドとなっているが、日本国内ではどうだろうか。

 12年7月に始まった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)によって、再生可能エネルギーへの民間投資が活発化した。国が電力の買取価格を20年保証するという同制度によって、新規参入する企業は事業リスクを減らすことができた。いわば、日本における「再生可能エネルギー元年」といってもいいだろう。

 特に太陽光発電に特化した事業者が急速に増え、まさに太陽光バブルの様相を呈していた。発電量も14年まで順調に伸びていったが、その後失速していく。その原因も、またFIT制度だった。

 12年度は企業向け太陽光発電(メガソーラー)は1kW時当たり40円と、高く買取価格が設定されていた。しかし、16年度には24円となり40%も減らされた。これが太陽光事業の企業に大きなダメージを与えることになる。

 帝国データバンクが公表した太陽光関連企業の倒産によると、14年は21件、15年は36件と増加し、16年は40件になる可能性があり過去最高を更新しそうだ。今年4月には、自治体の太陽光発電を多く調達していた日本ロジテック協同組合が負債総額162億8244万円で倒産している。

●再生可能エネルギー事業で成長している企業

 再生可能エネルギーへのシフトが加速する世界とは裏腹に、日本では国の制度変更によってブレーキがかかりつつある。しかしそのなかでも、着実に再生可能エネルギー事業を伸ばしている企業がある。今回、そのひとつであるアースコムを取材した。

 アースコムは5800件以上の販売実績があり、売上33億円超、前年比332%、4期連続増収増益と堅調である。産業用太陽光発電の会社としては全国トップレベルで、本社がある埼玉県に所在する企業の中で売上高は第2位という会社だ。

 今回、筆者はアースコムが企画した「オーナー会」を取材した。オーナー会は、アースコムから太陽光発電所を購入した顧客(オーナー)が集まるイベントだ。東京の皇居近くにある日比谷公園の中央に位置する老舗レストラン「日比谷松本楼」を貸し切り、全国から40名を超えるオーナーが集まっていた。

 アースコムの丸林信宏社長によれば、このような「オーナー会」を行える太陽光事業者はほとんどないという。

「日本における太陽光事業の業界はまだ未成熟で、儲かるからとこの業界に参入する業者も多く、売りっぱなしでフォローもメンテナンスもしない会社が多くあります。なかには詐欺のような手法でお客様からお金だけを騙し取り、発電所をつくってもいない悪質な業者も存在します。

 私は以前からこの状況を大変憂いていました。このままでは日本から再生エネルギーの火が消えてしまうと思い、売るだけでなく業界最高レベルのメンテナンスとフォロー体制を作り、さらにオーナー様との信頼関係の構築に力を入れてきました。そのひとつの結果が『オーナー会』なのです」(丸林氏)

 オーナー会では、アースコムの新しい試みとしての「風力発電事業」の発表や、世界の再生エネルギーの現状報告などが行われた。参加したオーナーは皆真剣にアースコムの発表に注目していた。オーナーのひとり、合同会社SUN代表社員の鈴木良勝氏はこう語る。

「日本でも自然エネルギーの普及が進むことを期待しています。私は事業として太陽光の投資をしていますが、未来の日本のエネルギーの変革のお役に立てると思って取り組んでいます。私たちのような人が増えることが日本の未来を育てることになると思います」

 丸林氏は今後についてこう語った。

「弊社は単なる太陽光事業者ということでなく、日本の再生可能エネルギーを牽引していく覚悟で仕事にのぞんでいます。ビジネスとして成り立たなければ、どんなに良いものでも普及しません。そのためにも、再生可能エネルギーの普及にともに歩んでいくオーナー様との信頼関係をこれからも強くし、堅実に歩んでいきます」(丸林氏)

 世界的な再生可能エネルギーのトレンドと日本における現状にはギャップがある。大企業が再生可能エネルギーによって事業電力を100%まかなう方向に向かっているアメリカと比較しても、日本は大きく立ち後れていると言わざるを得ない。そのような日本の状況であっても再生可能エネルギーを草の根で支える事業者が多く存在する。

 多くの原発の稼働が止まっている日本において、現在、化石燃料を燃やして発電する火力発電がエネルギーの主力となっている。99%輸入に頼らざるを得ない化石燃料に依存した現状では、安全保障上でも問題があることは以前から指摘されてきたことだ。

 再生可能エネルギーに対する国の政策強化は急務である。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー)