安倍晋三政権が最優先課題の1つに位置付ける「未来投資」の存在感に、陰りが出つつある。政府内では年末に向けたロシアへの経済協力に主眼が移りつつあり、優先順位が下がっているとの声が関係者から漏れる。

 安倍政権は発足以来、政策を矢継ぎ早に打ち出すスピード感が市場の好感を呼んできたが、看板の掛け替えに終わるケースが多発するようなら、市場評価にも影響が出かねない。

開催されない2回目の会合

 政府は今年6月にまとめた成長戦略で、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など第4次産業革命を推進する官民会議を設立することを決めた。

 ところが、会議に招く有識者の選定過程で「候補者の多くが既存の会議と重複した」(政府関係者)ことから、産業競争力会議を廃止する一方で「未来投資会議」を新たに設置。閣議決定した官民会議は、設立が見送られた経緯がある。

 未来投資会議は9月12日の初会合以降、開催されていない。個別分野を集中的に審議する下部会合は断続的に行われているが、第4次産業革命を正面から取り上げる議論は乏しい。

 未来投資が盛り上がりを欠く背景には、ロシア支援の存在感の高まりがある。政府は北方領土問題と並行して、対ロシア経済協力の具体策策定に注力している。

 2016年度第3次補正予算の編成や衆院解散とも絡む可能性があり、政府・与党関係者からの注目度は高い。

 一方で、自動車メーカーやIT企業は、第4次産業革命を見据えた研究開発投資をすでに始めている。この分野で具体的な対応を検討するには、相応の専門性と高い技術的知識が求められるが、ともに政府サイドよりは各企業の知見が勝り、政府から企業に具体的な追加対応を求めるには、様々な障害があるようだ。