「マイコプラズマ肺炎」は別名「オリンピック病」とも(shutterstock.com)

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 「マイコプラズマ肺炎」が大流行の兆しだ。国立感染症研究所の調査報告によれば、10月3〜9日の1週間における症例の報告数は、過去10年で最も多かった2011〜2012年の、同週の報告数を上回っている。

 通常4年に一度、オリンピックの年に流行の周期が訪れるので、別名「オリンピック病」とも呼ばれている。リオデジャネイロ・オリンピックのあった今年は、日本だけでなく世界的に患者数が増加しているようだ。

 マイコプラズマ肺炎の原因は、「マイコプラズマ」という病原性の微生物だ。感染後は主に気管粘膜で増殖し、乾いた咳が出てくるのが特徴である。悪化すると、気管支炎や肺炎を引き起こす。

 ところが、初期は発熱や体のだるさ、頭痛などが先に現れるので、風邪との見分けがつきにくい。やがて咳が出てきてなかなか治まらないので、「では検査をしてみよう」となることが多い。

 ある程度進行していれば、肺のレントゲン撮影ですぐに異常の確認が可能だ。しかし、患者数が増えている今シーズンは、口を開けて綿棒でのどをこすり、その体液(咽頭ぬぐい液)を調べる簡易な方法で早期発見・早期治療をめざす方針が主流になりそうだ。保険適用なので検査費用が安いのも助かる。


 咳がぐずついて、完治までに1カ月近くかかるものの、マイコプラズマ肺炎は重症になることの少ない<マイルドな肺炎>だ。抗菌剤が効き出せば、症状の軽減も早い。

 感染力もそれほど強くない。保菌者の咳やくしゃみで「飛沫感染」するか、接触で「接触感染」するが、インフルエンザのように強力な「空気感染」の心配はほとんどない。

 それなのに大流行する年があるのは、マイコプラズマ肺炎に特有のちょっとした落とし穴のせいだ。
「歩く肺炎」ゆえに身近な人を感染

 マイコプラズマ肺炎は、英語で「walking pneumonia(ウォーキング・ニューモニア=歩く肺炎)」と呼ばれる。これは、症状が進んでも「歩き回れる」ことを意味する。つまり、症状がマイルドであるがゆえに、通常の肺炎とは違って、体のダメージが少ないのだ。

 「咳が止まらないな」「なんだかだるいな」と感じつつ、なんとなく通常の生活が送れる。学校にも会社にも通えるため、身近な人にうつしてしまうのだ。そうして、感染がさらに広がる。マイコプラズマ肺炎の恐さは、自覚症状がないまま周囲に感染を広げやすいことだ。

 今シーズンは、風邪の初期症状や咳っぽさを感じたら、すぐに病院で検査を受けるようにするのが、世のため人のためになりそうだ。

人間だけではない!愛犬にも感染の心配が!?

 また、感染するのは私たちだけではない。犬の風邪といわれる「ケンネルコフ」の原因にもなりうる。「コフ」とは「咳」という意味。

 愛犬とは濃厚に「接触」するし、咳やくしゃみなど「飛沫」が飛ぶほど近い距離で過ごす仲だ。飼い主から愛犬へ、あるいは愛犬から飼い主へ、伝染しないか心配なところだろう。

 だが、その点は心配には及ばない。実は、人には人の、犬には犬の、特有のマイコプラズマが存在する。そのため人と犬では、感染するマイコプラズマが同じではないので、人畜共通感染症には指定されていない。

 もしも愛犬が咳を伴って調子悪そうにしていたら、ぐったりしたり食欲不振になるなど重症化する前に、感染を心配せず、しっかり介抱してあげよう。乾いた咳をする、吐きたそうなのに吐けないような仕草を見せる、苦しそうな呼吸をする、といった症状が見られたら、感染の疑いがある。

 「愛犬が風邪?」と思ったら、ひとまずよく観察しよう。そして早めに症状の特徴をつかんで、動物病院で適切な早期治療を受けることだ。
(文=編集部)