トヨタやNTTと協業、圧倒的な人工知能技術で「グーグルの先」へ

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「人類が抱える未解決問題に挑み、米グーグルの先を目指す」人工知能技術のプリファード・ネットワークスが描く未来は壮大だ。抜きん出た技術力と大企業との連携で、新しい価値を生み出していく。

「我々の根底には、多様性を重んじる文化があります。自動車、ロボット、バイオなどの広範な事業領域を手がけていく中、技術的・文化的な多様性をぶつけ合うことでイノベーションに近づけると考えています」

西川徹の思想は、そのままプリファード・ネットワークス(PFN)の企業戦略に反映されている。トヨタ自動車、ファナック、NTT、米シスコシステムズ、パナソニック、DeNAなど、PFNの提携先はとにかく幅広い。ビジネスシナジーのある事業者からの出資を受けながら、共同研究開発・事業展開を加速させていくー、これが西川の企業戦略だ。

大企業とのパートナー関係を生かし、ディープラーニングや高度な機械学習などの最先端人工知能技術を広範囲に応用していくことで、複数の産業に世界的変革を起こそうとしている。

「”まだ誰にも解けていない問題”を解決するためには、お互いの能力をフルに掛け合わせることが必要です。対等なパートナー関係にこだわりますし、そこには一切の妥協を許しません」

トヨタとは2014年10月、自動運転におけるディープラーニング活用のための共同研究開発を開始、翌年には同社から10億円の出資を受けた。16年1月の米CESでは、ぶつからないことを分散協調的に機械学習していく”ロボットカーのデモ”を共同で実施している。

ファナックとは、機械学習で賢くなった”ロボット同士の協調”に向けた協業を行っている。1台のロボットが故障してもほかのロボットが協調することで、作業現場のトラブルを自動的にカバーしていく体制を見据えている。

「今後、機械学習技術が活用されていく領域は、ウェブ上やゲームのデータだけでなく、実世界で動いているデバイスが含まれてきます。ただ、この領域はまだ各社スタートを切ったばかりです。トヨタやファナックの持つ強力なハードウェア技術と、我々の機械学習技術を結び付けていくことで、非常にユニークな成果を出せると思っています」
 
さらに、NTTや米シスコシステムズとは「賢くなった機械をどう賢くつなげていくか」という次世代ネットワーク領域で、パナソニックとは「テレビの高解像度技術を自動車向けセンサーに生かしていく」という自動運転分野で、DeNAとは「コンシューマー目線の大規模データの価値を最大化する」ための企業向けソリューションで、それぞれ協業を推し進めている。

PFNは14年3月、分散機械学習技術のビジネス活用を目的に、自然言語処理技術・機械学習技術分野を手がけるプリファード・インフラストラクチャー(PFI)からスピンオフする形で設立された。PFIでは外部からの資本参加を受けない考えだったが、事業領域を絞り分社化したPFNでは方針を転換、同年10月にはNTTから2億円の出資を受けた。

06年のPFI創業期から一貫して意識したのは、”お互いの専門性を補完し合う”という姿勢だ。実際、東京大学で並列コンピュータを研究していた西川はハードウェア寄り、小学校高学年で圧縮データ技術の研究論文を読んでいた岡野原大輔(共同創業者)はソフトウェア寄りのアプローチを重ねてきた。

「我々は深層学習フレームワーク『Chainer』を提供するなど、機械学習を実現するためのコア技術を自分たちでつくってきました。単に機械学習を使うだけでなく、手法それ自体をゼロからつくれることが、我々の強みといえます」

その姿勢は社員約50人になった現在も変わらない。だからこそ、多様性を重視する同社には、機械学習からロボット工学まで、各専門分野に精通したさまざまな人材が集まっている。今年6月にドイツで開催されたロボット選手権「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」では、初出場ながらもピック・タスク部門で準優勝。まさに新星の如く、各国の技術者から注目を集めた。世界でのプレゼンスをさらに高めるため、西川自身、海外の技術カンファレンスで話す機会を意識的に増やしたという。