ティーチインを行った(左から)ジョエル・
サラチョ、ヘイゼル・オレンシオ、
ラブ・ディアス監督

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 第29回東京国際映画祭ワールドフォーカス部門出品作「痛ましき謎への子守唄」が10月31日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、メガホンをとったラブ・ディアス監督と出演したヘイゼル・オレンシオ、ジョエル・サラチョがティーチインを行った。

 映画は、1896〜97年のフィリピン革命期を舞台に、実在の革命の英雄と国民的な文学作品の登場人物、さらには神話のなかのキャラクターの物語が入り交じって展開される。モノクロで製作され、上映時間は489分に及ぶ。第66回ベルリン国際映画祭で、映画芸術に新たな視点をもたらした作品に授与されるアルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)を受賞した。

 革命運動のリーダー、アンドレス・ボニファシオの遺体を探す妻グレゴリアの旅を主軸とし、革命家で作家のホセ・リサールの「ノリ・メ・タンヘレ」「エル・フィリブステリスモ」の主人公イサガニやシモンが登場するほか、半人半馬の「ティクバラン」のエピソードも挿入される。

 ディアス監督は、「今作は独立戦争のある一定の時期を捉えた歴史の一部と、実際にその時期に生活をしていた人を、スペクタクルではなく、ただ冷静に描こうとしたんです。当時の偉大な作家の作品のキャラクターや、神話的な部分で歴史を語って、その時代を検証するという風にとらえていただければと思います」と呼びかけた。

 製作準備に17年間を費やし、22日間で撮りきった今作に一切の妥協はない。ディアス監督は、今作の上映時間の長さや映像のスタイルが商業向きではないと自ら断言し、「だからこそ映画祭で上映させていただくことは重要で、そこで皆さんに見て頂きたいのです」と語る。「僕は妥協したくないんです。妥協したら映画が台無しになってしまう。こちらから観客に強要するのではなく、観客が受け入れてくれるまで待たなければならない」と強い意志を見せた。

 フィリピンでは公開に至ったものの、「誰も来なかったんです(笑)」と残念そうにおどけてみせ、「シリアスな題材を扱った映画は時間をかけて成長していくのだと思います。文化もそうです。映画は待てます。そのうちに皆さんに受け入れていただけると信じています」「今作は普通の商業的な映画とは違いますが、それを見に来て下さるお客さんを育てなければならないということだと思います」とほほ笑んだ。

 第29回東京国際映画祭は、11月3日まで東京・六本木ヒルズほかで開催。