元日テレ・敏腕プロデューサーが明かす「3年連続視聴率3冠の秘密」(1)「笑点」が苦戦するのは年に18回の理由

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 午前6時〜正午の「全日」、午後7〜10時の「ゴールデン」、午後7〜11時の「プライム」の時間帯で平均視聴率トップを達成。日テレが3年連続でこの「3冠」を獲得することが確定的だ。巨人戦をも排除する絶対王者の強さの秘密を、元日テレの敏腕プロデューサーが解き明かした!

 日本テレビはなぜ強いのか?──今年も視聴率で他局を圧倒、2014年度、15年度に続いて3年連続での世帯視聴率3冠王を確実にしている日テレ。その強さの秘密はどこにあるのか。人気番組を題材にひもといていきたい。

 テレビ関係者が日テレの強さを語る時に必ず話題となるのが、「日曜夜の強さ」である。特に夕方から22時までは他局を寄せつけない最強のラインナップであり、この時間帯を見ることが日テレの強さを理解する近道だろう。

 ということで、初回は日曜日の番組について見ていきたいと思う。まずは日曜夕方の長寿番組「笑点」である。

 開始から約半世紀、まだ「お茶の間」という言葉が普通に存在していた頃から「笑点」は続いている。10月16日のOA(オンエア)で、実に2534回。昭和の頃は「笑点」と「サザエさん」を観てから、NHK大河というのがお茶の間の流れであった。

 ご存じのように「笑点」は、前半の演芸コーナーと、後半の大喜利という構成になっている。

 後半の大喜利が看板であることは言うまでもないが、これを喜んで観ている視聴者の多くは高齢者であることは特筆すべきことであろう。子供も見ていないわけではないが、20〜30代の若者はそれほど観ていないのだ。

「笑点」の視聴率は、高齢者のライフスタイルに関係している。外出したり、日がな一日家で過ごしたあとの日曜の夕暮れに、ごく自然にテレビをつけるのが、その世代の特色である。若い年代は帰宅したらまずはスマホやネット。だが、高齢者はテレビが大好きなのだ。

 そして、高齢者がテレビに求めるのは「安心」である。よく知らないギャアギャアとうるさい若手芸人や、どこの国の出身か、男か女かわからないようなタレントは苦手なのだ。今や多くの番組が「騒々しい」時代、高齢者にとって大喜利でメンバー同士「いつもどおりのやり取り」をしてくれる「笑点」は、実に優しい番組なのである。

 前半の演芸部分もベテラン中心で、若手が出演する際も、騒がしくない芸人とだいたい相場は決まっているのだ。

 大喜利にしても、冷静に観てみると実際はさほどおもしろいことをやっているわけではない。三遊亭円楽(66)の腹黒ネタや、三遊亭好楽(70)の下ネタなどの定番ネタなど、お互いの出演者いじりは「不変」である。そしてこの「変わらない点」こそが、「笑点」の強みなのである。

 ところが「世帯別視聴率」という面だけで見れば、超優等生の「笑点」は1年に18回だけ少々苦戦するのだ。

 それは裏で「大相撲」(NHK)が放映される時間帯である。高齢者は相撲も大好きなので、年に6場所、初日・中日・千秋楽と重なる18回のOAに関してはしかたがない結果になる。

村上和彦:(株)プラチナクリエイツ代表。65年生まれ、神奈川県小田原市出身。元日本テレビ放送網制作局専門部長兼演出家・テレビプロデューサー。「ヒルナンデス!」を立ち上げ、「『笑っていいとも!』を終了させた男」として知られる。「スッキリ!!」の視聴率アップや、「24時間テレビ」ほかを総合演出。14年に日本テレビを退職し、フリーランスに転向。現在もテレビ東京「モーニングチャージ」監修ほか番組制作を行っている。