米ハーバード大学は10月24日、3Dプリンタを使って心臓の生体組織を基盤上に再現する「チップ上の心臓(heart-on-a-chip)」を世界で初めて製作したと発表した。米NEWSWEEKなどが報じている。

「マイクロ生理学システム」という研究分野

 学術誌「ネイチャー」のオンライン版に掲載された論文の題は、「複数素材の3次元プリンティングを介する、計器を備えた心臓のマイクロ生理学デバイス」。論文の説明によると、生物医学研究が長年にわたって頼ってきた動物実験と細胞培養にかわり、最近はチップ上に人間の器官の構造と機能を人工的に再現する「マイクロ生理学システム(MPS)」が有望な選択肢になっているという。

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 ただし、現在のMPSは通常、センサーが組み込まれておらず、製作には数段階のリソグラフ処理が必要になる。この製作方法には高度な機材が必要で、多大な費用と労力を要する。

ハーバード大のイノベーション

 こうした課題を解決すべく、ハーバード大の研究チームは、圧電効果、高伝導性、生体適合性を備える柔軟な素材で、6種類の機能的なインクを設計。物理的に模倣した薄い心臓組織の自己集合を誘導するマイクロアーキテクチャの内部に、柔らな「ひずみゲージ」センサーを組み込むことが可能になった。製造も、3Dプリンタを使用し、1回の連続したプロセスで完了する。

 デバイスに埋め込まれたセンサーにより、細胞培養環境の中で起きる組織収縮ストレスの電子データを、非侵襲的に読み出すことができるという。具体的には、薬品や毒物に対する心臓組織の反応を、このMPS上でシミュレートできるようになる。

研究の意義

 ハーバード大が開発した新しいデバイスは、埋め込まれたセンサーにより、従来のMPSよりも人体組織をより正確にシミュレートできる。また、製造プロセスが簡素化されたことで、「チップ上の器官」をより効率的に生産できるようになる。これらのメリットにより、新薬と先進医療の研究が加速することが期待される。

 さらに、こうした人工のデバイスが実際の研究分野で利用されるようになれば、実験動物の命をより多く救うことができるだろう。


高森郁哉