金正恩党委員長は、水害被災地で高まる人々の不満を「贈り物」で鎮めようとしているようだ。

デイリーNK情報筋によると、台風10号(ライオンロック)による水害で甚大な被害を受けた咸鏡北道(ハムギョンブクト)において、被災者向けの復興住宅の建設が最終段階に達し、早ければ今月末から入居が始まるという。

現地では復興住宅の入居に合わせて、電話機、カラーテレビなどの家電製品がもらえるとの噂が流れている。しかし、現地の被災者は半信半疑だ。

北朝鮮当局は、国民的な祝日や災害の際に、様々な「特別配給」を行ってきた。そのため、何かが起こったら「もしかして…」という心理が働き、「何かがもらえる」という噂が流れることがしばしばある。

しかし、今回の被災者は冷めているようだ。「当局は、毛布数枚と食糧数キロだけをよこしただけなのに、大々的に宣伝しているのを見ると、本当にテレビをくれるのか疑わしい」と半信半疑だ。さらに「テレビより食べ物をくれ」との声も上がっている。

金正恩氏に対する期待の無さは、水害発生からまもなく2ヶ月経つというのに、一向に現場を訪れようとしない姿勢が原因と見られる。そこで当局は、「贈り物」で不満を解消しようと目論んでいるようだが、むしろ不満が高まる可能性が高いと情報筋は指摘する。

「いつものように、住民から『忠誠の資金』だとか言ってカネを巻き上げて、それでテレビを買おうとするんじゃないか」(情報筋)

また、復興住宅の質についても住民の間からは「たった2ヶ月で、まともな家が建てられるわけがない」「やっつけ仕事で建てた家の安全性など信じられない」などの声が上がっている。実際、家の壁からは雨漏りがして、壁紙がビショビショになっている有様だという。

昨年8月に水害で大きな被害を受けた羅先(ラソン)経済特区でも、被災者向けの住宅が手抜き工事で、そのままでは住めないような状態だった。

羅先では、被災者向けに1300棟の住宅が建設されたが、家の壁は薄い上に剥がれていて、床もデコボコでそのまま住めるような状態ではなかった。

しかし、「元帥様(金正恩氏)の温かいご配慮」で建てられた住宅を下手に修理すれば、「最高指導者に歯向かう恩知らず」として政治犯扱いされかねないため、修理しようにもできず、被災者たちは頭を抱えている。

同じ道内ということもあり、こうした状況は今年の水害の被災地にも伝わっているという。

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