人間ドックで命にかかわる病気が見つかることも(shutterstock.com)

写真拡大

 毎回、自称「健康芸能人」が人間ドックを受診し、その結果を発表する番組『主治医が見つかる診療所 人間ドックSP』(テレビ東京系)――。

 10月17日の放送では、人気お笑いコンビ「NON STYLE」の井上裕介に「アルコール性肝炎」と心臓大動脈の異常「大動脈二尖弁」が見つかり、番組史上最悪の<深刻度1位>となった。

 さらに、糖質制限とトレーニングによる減量を自慢していた「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔も、「高尿酸血症」に加えて「脳血管年齢70代」で脳梗塞の危険もあるという診断。自己流のダイエットも一因と指摘され、ショックを受ける場面もあった。

 テレビ番組とはいえ、出演者に深刻な健康問題が見つかると、視聴者も他人事では流せない。明日は我が身なのだ。

受診者316万人の9割が<引っかかる>

 日本人間ドック学会の2015年「人間ドックの現況」(公式サイトに公開)によると、昨年に人間ドックを受診した人の総数は、「2日ドック」と「1日ドック」を合わせて316万2817人。一昨年に比べると約3万人増加した。

 そのうち身体計測や血圧、血液検査などの「基本検査」全項目で、「異常なし」(軽度異常を含む・判定A+B)と判定されたのは17万5675人(男性4.7%、女性6.8%)。一昨年に比べると1.0ポイント低下して、全体の5.6%となり<過去最低を更新>したという。

 逆に言えば、受診者の94.4%が「生活を改善し、経過観察を要す」(判定C)、「医療を要す」(判定D1)、「二次検査を要す」(判定D2)のいずれかに判定されたことになる。

 どのような異常が多かったのかを見ると、高コレステロール(33.4%)、肝機能異常(33.2%)、肥満(30.4%)が上位だった。

 「異常なし」の人の割合は、全国集計が開始された1984年の29.8%から24.2ポイントも減少。特に高中性脂肪以外の5項目(肥満、耐糖能異常、高血圧、高コレステロール、肝機能異常)の異常頻度は、それぞれ2〜3倍に増加した。

受診者の増加を超えるペースで<がんの発見数>が増加

 人間ドックでは、がんの発見率も年々上がっている。

 1985年は全受診者のうち569人に「がん」が見つかった。受診者数が約7倍に増えた2015年は、約12倍の6694人。受診者の増加を超えるペースで<がんの発見数>が増えている。

 臓器別に見ると、男性は「胃がん」が最も多く、次いで「大腸がん」「前立腺がん」「肺がん」「食道がん」の順。胃がんと大腸がんでは、60歳以上の人が、それぞれ68.7%と53.6%と多数を占めた。

 一方、女性では「乳がん」が最も多く、次いで「大腸がん」「胃がん」「子宮がん」「肺がん」だ。乳がんと子宮がんは、50歳未満が、それぞれ39.2%と59.3%を占めていて、他のがんと比べ若年層に多い。
高齢化やがん検査機器の普及も一因?

 人間ドックで「異常なし」と判定される人の割合が毎年減っている原因には、偏った食生活や運動不足など不健康な生活習慣の広がりとともに、景気の低迷、経済環境の悪化などによる<ストレスの増加>などが指摘されている。

 ところが「受診者数の増加」と「高齢化」も大きな要因だ。

 人間ドック受診者が増加したのは、2008年からメタボリックシンドロームの考え方に着目した特定健診・特定保健指導が全国で開始されたことが背景にあるのではないかとされる。

 さらに近年は、何度も受診する人の割合が70〜80%を占め、その結果、受診者の平均年齢が40代から50代へと移行。60歳以上の受診者も年々増加している。それに対して40歳未満は2007年前後を境に減少傾向にあるという。

 がんの発見が増えてきた理由としては、男性についてはPSA(前立腺特異抗原)検査が1995年に導入されたこと、女性については乳房のエコー検査やマンモグラフィーといった画像検査が普及してきたことが挙げられる。

「死亡が多いがん」の早期発見には一定の効果

 一方で、ポジティブな面もある。

 2015年は6つの生活習慣病関連項目のうち、「高コレステロール」「高中性脂肪」「肝機能異常」の3項目で「異常」と判定される人の割合が2014年よりも下がったのだ。高コレステロールは50歳未満で、高中性脂肪と肝機能異常は全年齢層で改善していた。

 専門家は「健康意識の高まりに伴う生活習慣の改善が、今回のデータに表れたのではないか」と分析する。

 また、日本人の死亡数で上位を占める胃がんの8割、大腸がんの7割以上は、早期の段階で見つかっており、9割以上が手術を行っている。

 さらに大腸がん手術のほとんどは開腹をせず、内視鏡で病巣を切り取る手術で済んでいることなどから、早期発見・早期治療という2次予防に人間ドックのシステムが有効であることを示している。

 住民を対象とした「対策型がん検診」は特定臓器に限定しているのに対し、人間ドックは「個別型がん検診」で、オプション検査を含めて全臓器を対象とした「総合型検診」であるという特徴がある。

 そうしたことから、家族にがん患者がいるなどがんのリスクが高い人の健康チェックは、多少の自己負担をしてでも人間ドックを選択したほうがよいと言えるかもしれない。

 「自分は若いからまだ必要ない」と考えるなかれ! 40歳未満受診者で集計しても「異常なし」と判定された人の割合は13.5%に過ぎない。そのことを踏まえて、定期的なチェックと生活習慣の見直しを心がけたい。
(文=編集部)