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バラエティ型ニュースが「編成」を潰すとき

【PJ 2005年06月20日】− あいも変わらず、二子山親方の家庭内醜聞にマスメディアの時間がいまだに割かれている。はっきり言って、もう国民は辟易している。次から次と大人らしくない兄弟ゲンカの「火に油を注ぐ報道」がなされている。これはもう「報道」価値の低下といっても、いいだろう。

 ボクはこの手のニュースを「バラエティ型ニュース」と位置づけてみた。「バラエティ型ニュース」は、日本のメディアには必要なニュースのひとつだ。なぜならば、次の大ニュースが登場するまで、しつこく取材しておけば、いくらでも話題を広げられるので、制作しやすいニュースなのだ。

 ニュース番組には、毎日違ったことを報道することが求められる。決められた時間を新しいニュースで埋めることが求められる。もちろん制作側は、大事件がない場合を想定して、特集などを組む。オンエアーで、「本日は重大なニュースはありませんでした。よかったですね」とは絶対に言えないからだ。

 「バラエティ型ニュース」の蔓延は日本が平和な証拠のひとつでもある。また、このニュースのおかげで大事なニュースが見えなくなってしまっている弊害が実はある。大型「バラエティ型ニュース」が起きている時ほど、法案などが勝手に通ってしまうのは、このせいだと思う。
 
バラエティ型ニュースの要素
 バラエティ型ニュースの要素として、いくつかあげられる条件がある。

<自分との相似性>
 二子山親方が、亡くなってからの花田家の騒動は、どこの家にも転がっている話題だ。しかも、表ざたにしたくない話題だ。この「自分にも思い当たる点」は重要だ。自分よりもさらに、窮地に立っている人を見れば見るほど、自分が救われる気になるという要素だ。

<いじめる対象の存在>
 今回は、仲が良かった兄弟が、互いに憎みあっている様子がさらにヒートアップしているように感じられる。メディアが誰かをいじめている構図は、バラエティ型ニュースとしては必須である。その言動がすべてバラエティ報道である。「ホリエモン」VS「フジテレビ」にもこの構造はあてはまる。「遺族&メディア」VS「JR西日本」もこの要素だ。

<真相や登場人物が多彩>
 新たな人物が登場することによって展開が変わるドラマ性や新たな真実が発覚していく過程も常に求められている。

<コミュニケーションツールかどうか>
 誰もが知っているニュースだから、「差分」となる新トピックは、人に伝達することによって、話題になる。しかし、花田勝vs貴乃花の「差分」ニュースはそれほど楽しいものではなくなっている。バラエティ型ニュースは、人々のコミュニケーションツールとなっている。

<他に大ニュースがないこと>
 「たまちゃん」や、「レッサーパンダ」などの癒し系ニュースと同様で、他に大ニュースがないことが絶対的な要素である。よって、二子山親方死後のお家騒動は、次のバラエティ型ニュース登場までの、ニュース報道側の時間稼ぎなのである。

 また、バラエティ型ニュースが蔓延する一番大きな理由は、各放送局にボクたちが「編成」を委ねているからである。未来のテレビには、「チャンネル」ではなく「ブックマーク」が必要なのだ。

編成権は視聴者にゆだねられる時代に 
 各放送局に「編成」があるから、ボクたちは朝・晩・深夜とTPOにあわせた番組をスケジュールどおりに見てきたのだが、もうそこには価値を見いだせなくなってきている。

 日本では、ネット広告費が1814億円(前年度比5割増)と急増し、ラジオの広告費1795億円を抜いた(2004年度電通発表)。テレビの広告費2兆436億円と比較すると、まだ10分の一にも満たない状態ではあるが、2009年には雑誌広告費(3970億円)をネットが抜くと予想され、ネットの広告価値が確実に増加している。

 ネットの場合は、純粋な「広告」という側面だけではなく、クリックするだけで、直接購入にまで結びつけることができる「EC的側面」、アクセス数や来訪者経路分析などが実数で量れる「効果的側面」、来訪者に自社サイトを巡回させる「滞留型側面」などは、今後も価値が認められる部分であろう。指標としての視聴率ではなく、購入比率にまで落としこめる「TV通販番組」的な効果を持っていることは、ネット広告の強みでもある。

 日経新聞によると、米国の地上波テレビの視聴率合計は、1970年代は、ほぼ100%を占めていたが、CATV(ケーブルテレビ)や衛星放送の普及で90年代には70%台に低下し、現在は60%といわれる。

 さらに衝撃的なのは、3大ネット局といわれるABC(ウォルト・ディズニー)、NBC(GE)、CBS(現:バイアコム:バイアコムはCBS分離を2005年6月発表)のプライムタイム(午後7時から午後11時の時間帯)の広告収入が、今年、米Google社や米Yahoo社両社合計の広告収入に並ばれるという予測だ(英エコノミスト誌)。これはすでにメディアの媒体的価値の変化を予感させてくれる。

 「プライムタイム」の番組は、すでにハードディスクレコーダーなどにより、視聴者自らの「編成」が自由に進んでいる。見たくない番組はスキップされ、生放送が気に入らなければ、代替メディアがひしめきあっている状態だ。ネットと融合したハードディスクレコーダーは近い将来、RSSやネットからのダウンロード番組まで収録してくれることだろう。視聴者は人気や評価の高かった今週の番組を自由に「編成」して見る時代が必ずやってくる。

 もはや、カウチポテト族ですら、「人気番組順」や「友達のおすすめ順」、「評論家のTVブックマーク」などを選ぶだけで、「編成」を選べる時代となる。視聴者はボーっとTVを眺めるのにも、より自分にフィットした「編成」を求めるのではないかと考えられる。

 そうなると、必要なのは、自分の「好き」「嫌い」のメタなタグ情報である。ネットとTV番組表が連動していれば、TV番組に「好き嫌い」が紐づけされると、自分の番組表から不必要な番組を「消去」することさえできるようになる。

 そうなると、つまらない「報道」を繰り返すTV局はもっと、愛される番組をめざすだろうし、どの局も同じ状況ということからは確実に脱却できることだろう。いや、そうでなければ、TVの未来はありえない。視聴率という指標で番組を制作している時代ではない。視聴者が何をもとめ、「報道」は何を伝えるべきなのかをもっともっと検討すべきだろう。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 神田敏晶【 東京都 】
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