PK戦で5人目のキッカーとなった小川。落ち着いてゴールに沈め、日本に初優勝をもたらした。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 緊迫したPK戦。内山篤監督は最後の締めをエースに託した。
 
 U-19アジア選手権決勝・サウジアラビア戦。延長戦を戦い抜いたFW小川航基に対し、PK戦の5人目のキッカーを命じた。そして、サウジアラビアがひとり外し、日本が全員成功で迎え、自らがラストキッカーとなるべく、ペナルティスポットに歩いて行った。ゆっくりとボールを抱え、丁寧にボールをセットすると、大きく息を吐いて助走体勢に入った。

【写真】日本 0(5PK3)0 サウジアラビア|決勝
 
「監督もみんなも最後に僕に任せてくれた。すごく嬉しいことだし、決めて優勝を喜びたいと思った」
 
 緊張の瞬間だったが、彼の中には自分に託してくれた指揮官と周りへの感謝と、素直な喜びしかなかった。そこにはPKを成功するイメージしかなく、「周りは『外すんじゃないか』と思っていたかもしれませんが、すごく落ち着いて蹴ることが出来た」と語ったように、思い切って放ったキックは、確実にゴールネットに突き刺さり、歓喜の瞬間を迎えた。
 
 U-19日本代表の絶対的エースとして、チーム立ち上げの時から内山監督をはじめ、周りから大きな期待を集め続けて来た。そして、その座は今大会でも不動であった。
 
「必ず結果が出せると思っていたし、自分はエース。この座は誰にも渡さないし、その分、プレーで貫禄を見せないといけないと思っています」
 
 このチームのエースは絶対に自分である。どんなことがあっても、それを譲るようなことがあってはならない。
 
 この彼のメンタリティが、どんなプレッシャーをもはね除け、今大会でも抜群の存在感を放ってきた。しかしながら、6試合を通じて3得点、決勝の120分間でノーゴールは、もちろん満足の行く結果ではない。だが、今大会は彼のゴールで始まり、彼のPKで終わった。U-20ワールドカップ出場を決めた決勝点も背番号9によってもたらされた。大会を通じて肝となるシーンを持って行くところは、やはりエースだ。
 
 かくしてU-20ワールドカップという「本物の世界」をターゲットにした、このチームの活動は来年の5月まで継続されることとなった。小川にとって、この内山ジャパンの存在は自身の成長と切っても切れない重要なものだけに、出場権獲得に彼は素直に喜びを見せる。
 
「僕にとってこの代表はものすごく重要で、ものすごく大事なもの。僕はほぼ1年間、磐田で試合に出ていなかったのに、こっちで活動をさせてもらったからこそ、コンディションを落とすことはなかったですし、本当に感謝してもしきれないくらい呼んでもらっていたので、恩を返したかった。もちろんこの先もU-20ワールドカップなど、ずっとずっとエースで、中心の選手でいられるようにやりたいと思う。だからこそ、これからも結果を出し続けないといけない」
 
 小川航基は『内山ジャパン限定のエース』では終わらない。これから先U-20ワールドカップ、ジュビロ磐田、そして東京五輪、さらにA代表のエースの座に移行して行く自分を思い描いて――。
 
 バーレーンの地で手に入れた歓喜は、彼にとって新たなる挑戦の号砲でもある。その号砲と共にスタートを切った小川は、『エースの矜持』を原動力に、まっすぐに前を見つめて走り続ける。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)