「Thinkstock」より

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 地方銀行が苦しんでいる。日本銀行の金融緩和以降、金利の低下で収益の圧迫が加速、さらにマイナス金利政策の導入で苦境に追い込まれ始めた。貸し出し一本足からのビジネスモデルの転換が急務だが、そんなノウハウをもっている地銀は皆無に等しい。殿様商売とも揶揄されたビジネススタイルからの転身に喘いでいる。

●すでに3年半も続く金余り金融市場

 2013年4月の量的緩和以降、金融市場は金余りの状況で貸し出し競争が激化していたが、マイナス金利がこれに拍車をかけた。中国地方の中堅企業経営者は振り返る。

「日銀がマイナス金利を導入すると発表した翌日に、地場の金融機関から融資の相談があった。金を借りてもらえないか、と言われても、資金需要はないから当然、断った。その後も、性懲りもなくときどきくる」

 全国地方銀行協会のまとめでは、15年度は11年度に比べて貸出金利回りが1.71%から1.31%に下がり、預貸金利ざやは0.55%から0.35%に低下。マイナス金利政策が本格的に効いてくる16年度は、さらなる利ざやの縮小が確実視される。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、銀行の本業のもうけを示す業務純益が16年度は地銀で15%、大手銀行で8%の減益になると試算している。

●付加価値事業の創出が急務

 全国地方銀行協会の中西勝則会長は、「簡単ではないが、コンサルティング営業など付加価値の創出を地道にやらなくてはいけない。現時点で気づいていない金利が高い金の流れをつかむ努力も必要だ」と、収益構造の転換の必要性を説く。ただ、これを実行に移すのは言うほど簡単ではない。地銀幹部は「かつて、貸し出しが過度になり不良債権が膨らむことに金融庁が目を光らせていた苦い経験がある。リスクはとりたくない」と苦々しく語る。

 生命保険などの窓口販売の手数料収入でしのいでいたが、金融庁が顧客への手数料の非開示を問題視したことで、利幅の大きい保険商品を売るという「小手先」のしのぎも限界を迎える。金融庁は加えて、担保主義から事業性融資への転換や経営難の中小企業への成長融資を地銀に促す。

●地銀の悲哀〜リスク回避最優先の宿命

 地銀側としては、長年の不良債権問題を乗り越える際に、徹底したリスク回避を植え付けられた。ちょうど、今の課長クラスは、ひたすら耐えた世代。担保主義をやめて融資をしろ、目利きがあれば問題ないと指摘されても、そもそもそうした教育をはじめから受けていないのだ。例えば、シンジケートローンを組成しようとしても対応できる人間がいない。メガバンクに協力を頼めば顧客を奪われる可能性もあり、痛しかゆしの状況が続いている。

 こうしたなか、外資系出身者が多く、投資銀行業務が主力の東京スター銀行は、地銀向けにシンジケートローンの組成支援業務を始めると報じられた。共同組成やサポートを受ければ自行の取り分は減るが、収益が減っても頼らざるを得ない苦境が垣間見える。金融庁にいくら発破をかけられようが、銀行の経営自体、長期を見据えれば余裕があるわけでない。おのずと経営は「守り」一辺倒になる。

 影響を受けるのは、地域の中堅中小企業だ。

「金融機関の体力低下が進み、中小企業への貸し出し機能が低下していくのではないか」(関東地方の製造業社長)

 黒田日銀が金融政策の枠組み変更で短期決戦から持久戦に大きく舵を切ったなか、総裁任期の18年4月までに状況が変わる可能性は高い。耐えがたきを耐えられるか。地銀にとっては長い冬が続く。
(文=編集部)