主演の永瀬正敏(上)と
ヒロイン役の水崎綾女 (C)「光」製作委員会

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 俳優・永瀬正敏と河瀬直美監督が「あん」(2015)に続き、日仏合作「光」でタッグを組むことが分かった。弱視のカメラマンと、視覚障害者向けのバリアフリー映画の音声ガイドを製作するヒロイン(水崎綾女)の交流を通じ、人間にとっての光は何かを問いかける。

 河瀬作品の集大成になりそうだ。2015年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品に選ばれ、自身最高の興収5億円以上を稼いだ「あん」から約1年半。新作の舞台に選んだのは、「朱花(はねづ)の月」(11)以来となる地元、奈良。主人公は弱視が進行しているカメラマン、中森雅哉。バリアフリー映画のモニター会で音声ガイドを作成する美佐子と出会い、音声ガイドの製作過程で衝突しながらも少しずつ理解し合っていくというストーリー。映画というモチーフを中心に据え、人々の希望とは何か、映画の光が人にもたらすものは何かを追求する。

 着想のきっかけは「あん」で初めて音声ガイドを作ったことだった。「ガイドの原稿をもらった時、監督以上に映画のことを考えてくださっている人がいるのだと知り、同志を得たような思いがしました」と河瀬監督。半年間の構想の末、カメラマンという主人公が浮かび、永瀬を想定してオリジナル脚本を執筆した。「永瀬さんは『あん』の世界に魂を置いてきてくれた。そういう役者はいない」と絶大な信頼を寄せている。

 永瀬にとっても、特別な役だ。祖父(故人)は宮崎・都城で写真店を営む写真師、自身も写真家として、国内外で数多くの個展を開催している。「写真に関するエピソードが似ている部分があって、じいちゃんのことを背負ってやれるなと思いました」と永瀬。写真家としてのキャリアは随所に活かされている。主人公のアパートに飾った写真は全て、永瀬が撮影したもの。物語のキーとなる写真集は、未発表のものから自ら選び、装丁まで関わった。

 永瀬は10月16日のクランクインに先立ち、1日に奈良入り。主人公が暮らすアパートで生活を始めた。弱視の人の生活ぶりを見せてもらい、弱視を体感できる特殊な眼鏡を装着して過ごした。「ある方のお部屋では、全ての時計が止まっていた。目が見えなくなるということはこういうことなんだと衝撃を受け、劇中にも取り入れさせていただきました」と話す。

 映画は来年5月、70回の節目を迎えるカンヌ国際映画祭コンペティション部門への出品を目指す。河瀬監督は1997年、「萌の朱雀」でカメラ・ドール(新人監督賞)、07年、「殯(もがり)の森」でグランプリと10年毎に受賞。周囲からは「次は最高賞のパルム・ドール受賞」との期待が大きいが、河瀬監督は「祈っといてください」と笑っていた。

 11月中旬、クランクアップ予定。2017年公開。キノシタ・マネージメントと仏コム・デ・シネマの製作で、キノフィルムズが配給する。