Doctors Me(ドクターズミー)- 臍帯血を保存したい!気になる費用と方法は!?

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最近CMなどで耳にすることもある臍帯血(さいたいけつ)。でもピンとこないという方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、臍帯血とその保存方法について医師に解説していただきました。

臍帯血って何?どうやって採取するの?

臍帯とは、分かりやすくいうとへその緒のことです。臍帯は、胎児がお母さんの子宮にいる時、赤ちゃんの血液を集めて赤ちゃんの臍から出て、子宮の壁にある胎盤まで運び、胎盤でお母さんの血液から酸素や栄養を受け取って、また赤ちゃんまで運ぶ役割をしています。
つまり臍帯を流れている血液は赤ちゃんのものです。赤ちゃんが生まれたあと、赤ちゃんは呼吸をし、母乳やミルクを飲むことで自分で酸素や栄養を手に入れますので、臍帯は不要になります。
そのため、生まれた直後に臍帯は数センチ残して切断され、不要となった臍帯と胎盤は通常は廃棄されます。この臍帯と胎盤の中には少量の赤ちゃんの血液が残されており、これが臍帯血と呼ばれるものです。
臍帯血は、赤ちゃんから切り離された臍帯に針を刺せば簡単に採取できます。赤ちゃんやお母さんが針を刺された痛みを感じることはありません。

臍帯血の中にある幹細胞はさまざまな細胞に増殖できる

臍帯血には、赤ちゃんの細胞が含まれており、その中には幹細胞(かんさいぼう)と呼ばれる未熟な細胞が、大人の血液よりも高率に含まれています。
幹細胞とは、様々な種類の細胞に増殖する能力を持つ細胞です。あらゆる細胞に分裂・増殖する能力を持つ万能細胞の代表が受精卵です。

あらゆる細胞とまではいかなくても、皮膚には皮膚の様々な細胞に分裂できるような皮膚幹細胞がありますし、腸の中には、腸で働く様々な細胞に分裂できる腸幹細胞があります。ただ、皮膚幹細胞は腸の細胞にはなれません。皮膚にも腸にもなれるけど、血液にはなれない、というような幹細胞もあり、これは多能性幹細胞と呼ばれます。

臍帯血の中にある幹細胞は、神経や血液、筋肉など多くの種類の細胞に分裂できるとされており、しかも未熟なため、他人に移植した場合にも拒絶反応が起きにくいとされています。

臍帯血は血液疾患の役にたつ?

この性質を利用して、臍帯血を善意で公的バンク無償提供して頂き、それを白血病などの血液疾患の治療に利用するということが、現在広く行われており、皇室の秋篠宮紀子様も、第三子出産時に臍帯血を提供されていますが、以下の点に注意が必要です。

1.誰に使われるかは指定できない
これは善意の行いであり、提供した臍帯血が誰の治療に使われるかは指定できません。

2.自分の子どものために置いておくことはできない
「生まれた赤ちゃんがもし白血病になった時に使いたいので、ほかの人には使わないで保存してほしい」というようなことはできません。

3.専門の病院でなければ採取できない
また、臍帯血採取のために必要な技術・設備を備えた病院で出産した場合しか臍帯血を提供できません。

4.状態によっては利用されないこともある
提供しても、赤ちゃんやお母さんの状態、臍帯血の採取・保存状態によっては、患者さんに届けられないこともあります。詳しくは臍帯血バンクのサイトをご覧ください。

民間バンクに保存するにはいくらかかる?

臍帯血に含まれる幹細胞は、血液疾患以外にも、様々な疾患の治療に有効ではないかといわれており、世界的に見ると、脳性麻痺への実験的使用が行われています。
このことから、「臍帯血を、赤ちゃん本人、もしくはきょうだいなどの肉親に使用するために保存したい」という考えが生まれてきます。このような希望に応えるのが、民間の・私的な臍帯血バンクです。
日本にも海外にも多くの民間バンクがあり、お金を払うことで、臍帯血を保存してくれます。産院と相談し、採取に協力してくれるということであれば、バンク会社から産院に採取キットが送られるという仕組みになっていることが多いようです。
集められた細胞は、バンク会社が保有する倉庫で保存されます。保管費用は10年間で20〜30万円程度のようです。

民間バンクのデメリットは?

2016年の現時点で以下のようなデメリットがあげられます。

・臍帯血の採取技術や私的バンクでの保存・管理状態について保証が出来かねる
・私的バンクで保存された臍帯血を使用した治療の例が少なく、治療効果が不明である
・研究は進んでいるとはいえ、血液疾患以外の病気では、幹細胞をどのように加工すれば治療できるのか、方法が確立されていない。海外でも実験段階の治療である
・血液疾患においても、他人からもらった幹細胞での治療で期待できる効果(GVL効果)が、自分自身の臍帯血を使用した治療では得られないと思われる

以上のことから、もしお子さんが白血病になったとして、「この子の臍帯血が私的バンクに保存してあるので、それを加工して治療してください」と病院でお願いしても、それを叶えられるとは考えにくい状況です。
ただ、兄弟姉妹間で、血液疾患に対して臍帯血を使用した治療が行われた例はある程度蓄積されており、日本でも例があるようです。
また、これと似た例に、乳歯や親不知の根本に含まれる幹細胞を保存するバンクがあります。

民間バンクには賛否両論がある理由は?

日本造血細胞移植学会は、「民間・私的バンクを利用するより、公的バンクを発展させていくべきだ」という声明を出しています。http://www.jshct.com/seimai.html 
また日本産婦人科医会も、民間・私的バンクに反対する声明を出しています。 http://www.jaog.or.jp/sep2012/News/11May2005.htm

臍帯血細胞の保存期間は、一般的に10年といわれています。凍結していますので、10年を超えても使用できる可能性はゼロではないですが、長期保存した場合のリスクと、「私的バンクで保存した幹細胞を利用しない他の治療法」を上回る効果が、10年以上保存した細胞で得られるか、ということを考えると、実際には10年以内に使用しなければならないということになります。

赤ちゃんやそのきょうだいが10歳になるまでに、臍帯血を使用したいような状況が発生しなければ無駄になる私的バンクを利用するよりも、公的バンクが充実し利用しやすくなって、「必要なときに、いつでも誰でも公的バンクを利用して治療できる」ようになったほうが、結局は社会全体としてはよいのではないでしょうか。

医師からのアドバイス

臍帯血は、赤ちゃんを出産するときにしか発生しない、貴重なものです。破棄するか、公的バンクに提供するか、私的バンクを利用するか?どう扱うのがよいのか、正解のない問いですが、ご自身の納得のいく利用法を考えてみてください。

(監修:Doctors Me 医師)